(……なんだ、これは?)
先日、梅田のかっぱ横丁のなじみの店でやっていた古本のワゴンセールをのぞいた時、その古ぼけた本が、ふと目についた。
4冊ほどボロボロになったピンク色の背表紙の本がならんでいる。シリーズものらしくナンバーが打ってある。
「……ヴァレリア……P……ファ……イル。……えっ。」
背表紙の題をたどって俺は驚いた。
まさか、これがあのハッカー必読の幻の小説、『ヴァレリア・ファイル』か?
P、の文字に変だと思いつつもあわてて本をつかむ。
だか、パッとページを開いた瞬間、俺はおもわず額をおさえた。
《「だって〜、あたし、自分の記憶を取り戻したいだけなんだもん。うるる」
つぶやいたヴァレリアが唇をかんでMKをみつめた。》
……これが、あの、「ハッカーでなく発掘屋をめざすなら必ず読め」と闇で囁かれる聖書『ヴァレリア・ファイル』なのだろうか?
信じたくない、という気持ちを抑えて俺は本をひっつかみ、レジにむかった。
とりあえず、読んでみよう。頭痛には、バファリンがある。
以下が、その1〜4巻までの本の裏表紙にあった内容紹介文である。
『「ヴァレリア・P・ファイル」 1 |
ここまで読んで、君は目眩がしなかっただろうか。俺は、した。したが、読んだ。ここにでてくるMKがまさか、あの「伝説の発掘屋MK」のはずがあるだろうか、と自問自答しながら。
長く、苦しい時間だった。
もし、君が目眩を起こしてるんだったらここから先を読むのはやめた方がいい。あと、3冊も続いている。3巻なんて、こんな具合だ。
『「ヴァレリア・P・ファイル」 3 |
な? な? もう、読む気をなくすだろ?
だが、俺は最後まで読んじまったんだ。
なのに、これ、4巻で終りじゃないんだぜ! 5巻があるはずなんだけど、あの時俺が見つけたのは4巻までだったんだ。
5巻があるはずなんだ。だけど、何回古本屋に足を運んでも5巻がみつからない。
5巻……5巻……幻のようにその言葉がうかぶ。そのうち、俺は本物の『ヴ
ァレリア・ファイル』も手に入れた。噂にたがわぬ物凄い本だった。だが、Pのつく、V・Fが俺は読みたい。誰か、しってないか?『ヴァレリア・P・ファイル』の5巻を……?