バンダ星人の経済学

林[艦政本部開発部長]譲治

☆バンダ星人とは何者か?

 えーっ、毎度いっぱいのお運びで。
 バンダ星人とは渋滞している高速道路に巨大ロボット「クレージゴン」で現れて、自動車を拾って行くというとんでもない連中である。
 地球を侵略するわけではなく、ただ自動車を集めているのである。
 では、なぜ彼らはそんな事をするのだろうか?

☆自動車をなぜ集めるのか?

 彼らが自動車を集める一応の理由はウルトラ7の番組の中で明かされている。
 ウルトラ7こと諸星ダンは言う「彼らは自分達の星の金属を使いはたしたので、地球にやってきたのだ」と。
 なるほど一応の筋は通っている。私も幼心に、納得した記憶があります。
 しかし、ここで疑問に感じる人がいるだろう。そんなに金属が欲しければ小惑星を使えばいいだろうと。
 そうなんですよね、何も地球に来なくても小惑星を使えばすむことなんです。
 にもかかわらず、何故彼らは地球で自動車などを集めるのか。そこがこの話のポイントです。

☆バンダ星人はどうして金属を使い果たしたのか?

 それは彼らが高度な工業力を持っているためだ、では答えになりません。
 確かに高度な工業力を持っているなら惑星の地下資源を掘りつくす事はあるだろうが、使い果たすことはない。
 その惑星に存在する限り工業製品の形で金属資源は残るのである。
 惑星の地下資源を掘りつくしてもクズ鉄の回収などでなんとでもなるのである。
 従って、使い果たすと言うことは工業製品の形でも金属が存在しないと言うことである。
 そうなると考えられるのは二つ。戦争と輸出である。

☆バンダ星人の民族性

 ウルトラ7のなかで、TDFが撮影した写真を見て「これは、バンダ星人の宇宙ステーションじゃないか」と諸星隊員が驚くシーンがある。
 このウルトラ7は、けっこう色んな宇宙人の事を知っているのだが、バンダ星人のことも知っていた訳ですな。
 しかし、この後の台詞が「奴らは自分達の星の金属を使い果たしたので地球にやってきた云々」と続きます。
 けっして「地球を侵略に来たのだ」とは言わないわけです。つまり、端で見ていても「こいつら金属を使い果たすんじゃないか」と思われるような事をしていたのでしょう。
 戦争とは結びつかないが、金属の過剰消費となると彼らは自分達の星の工業製品をあちこちの惑星に売っていたことが考えられます。
 彼らバンダ星人は宇宙の商人、しかも製造業をなりわいとしているわけです。

☆バンダ星人はなぜ侵略されないか

 バンダ星人の宇宙ステーションは地球のプラスチック爆弾によって破壊されると言う脆さを見せてくれました。
 そんな脆いもので地球までやってくるという神経はなかなか理解できるものではありません。
 第一、地球に来る前に他の宇宙人にやられてしまいそうな物ではないですか。
 にもかかわらず彼らは無事に地球にやってきました。
 何故、彼らはよその宇宙人から侵略を受けないのでしょう。それは侵略したくても出来ないからです。
 このウルトラ7時代は、惑星間の緊張が非常に高まった時代です。
 なんせ無人探査機を送っただけで、侵略だ!と巨大ロボットが飛んでくるという不穏な時代でした。
 従って武力の充実に努めたのは地球だけではありません。ビラ星人やガッツ星人だって同様です。
 むしろ地球だけ守っていればいいTDFと違いビラ星人やガッツ星人のように植民地を持っている宇宙人の場合その防衛問題は深刻です。
 限られた人口で、母星はもとより植民地まで防衛せねばなりません。いきおい経済全体に占める軍事費は限界まで大きくなります。
 そうなると民生が圧迫を受けるのは洋の東西を問いません。
 そこでバンダ星人が登場します。彼らこそ軍事費の重圧に頭を悩ます列強惑星に民生品を売り歩いているのです。
 もし宇宙にバンダ星人がいなくなると、たちまちビラ星ヤガッツ星の商店街からTVやら洗面器が姿を消し、首都をデモ隊が占拠する。
 こんな事態が起きてしまうのは明らかです。
 惑星間の緊張が高まっているかぎり、誰もバンダ星人を侵略できない道理であります。

☆自動車回収の経済学

 さて、バンダ星人がなぜ金属を必要とするのか分かったところで問題はまた振出に戻る。
 どうして自動車を回収して小惑星に手を出さないのか?
ここで思い出していただきたいのはバンダ星人は数多くの惑星に工業製品を売っていたと言う事実です。
 惑星間の工業輸出で競争力を左右する最大の要因は輸送コストです。
 工業製品をきわめて安い輸送コストで輸送できるだけの技術があればこそ、彼らは宇宙でその市場占有率を維持できるわけです。
 つまりバンダ星人にとって輸送コストは無視できるほど小さな物だと言うことです。
 ところで、金属を手に入れる場合、鉱石と金属屑からではコスト的にどちらが有利であろうか。
 これは文句無く金属屑の方が有利である。必要なエネルギーやトータルコストは鉱石に比べると20%程度で済むのである。
 そうなると彼らバンダ星人が自動車を回収する理由もおのずから明らかになります。
 ようするに輸送コストが無視出来る場合、金属のコストを左右するのは精錬コストなのです。
 従ってバンダ星人にとっては自動車を回収する方が小惑星を開発するより安上がりなのです。

☆バンダ星人と汎銀河人との関連性

 さぁ、あるんですか?
 ただ、バンダ星人の商業帝国の 販売網と情報網をもってすれば航空宇宙軍に対抗し得る組織を作ることは可能であろう。
 段々と強引な展開に成っていますが、今日はおなじみバンダ星人の一席。




●甲州研究編へ戻る