これまでに報告された外惑星連合軍による人体改造は、本来人間の持ちうる倫理観を逸脱した行為といえ、まさに非難されるべき問題であると認識している。
当方においても、戦病者福祉法によって、任務上の公務災害などで損失した肉体を、公費負担で修復(治療)することはこれまでも行われている。
そういう意味では簡便な改造修復手術については、あくまで義手義足の延長上の問題であり、狭い意味では人体改造の領域には考えられず、現状では何ら問題は生じないものと考えられている。
また、それは最先端のME(メディカルエレクトロニクス)の多様により、なるべく受傷時に比べて損失がないように考慮されるべきであると考えられ、その事に因り多くの人々が再度前線へと赴くことが出来ていることも周知の事実である。
ただし、これはあくまでも受傷時前の身体状況に復帰させるためのものであって、それ以上の改造は倫理的にもなされるべきではないと考える。
それ以上とは本来人間が持つ機能以上のもの、例えば心肺機能などの強化にみられる依存環境の大幅な変更のための肉体改造や兵器の導入などである。
ただ、一部の上層部からは充分なインフォームドコンセントがなされたうえで、セラピストや機能訓練技術士官の立ち会いのもと訓練され、任務終了の後肉体を改造以前に修復するという前提であれば問題はないのではないかという議論もある。
しかし、それを本来健康な(肉体的損傷を受けていない)肉体を持つ選ばれた士官に施すことについて何も問題が生じないのか。生身の人間より強力な力を持った士官が、精神的に、あるいはイデオロギー的に軍に対して対抗するものとなったとき、それは大きな内部的な脅威となりうることも充分に考えられる。
それを防止するために脳にロボトミー的な、あるいはコントロールする機器を導入することがはたして可能なのかということも倫理的に問題もあると言わざるを得ない。
これまで一部ではすでに行われていた簡便な心肺機能の強化や尿路変更などの改造を含め、人体改造に関する倫理規定の策定について広く意見を求めたいと考える。