SUM−PACK’90裏話

中野[陸の男:私は誰の挑戦でも受けるお肉屋だ]達郎

 人外協には「エリア88方式」なるものが存在するようだ。そして、それは今も脈々と受け継がれている。
 ことのおこりは1本の電話からだった。今年の春に某<指令部付き運転手>氏へ連絡を入れた時、<本箱>氏と<防人>氏が来るので長くは話せないから、良かったらこっちへ来て話さないかと言う。どうせ彼の家へはバイクで15分もかからないし天気も良かったので行ってしまった。それが運命の別れ道だと気がついたのは後々のことだったのだが。<指令部付き運転手>氏の家に付いたときには既に<本箱>氏が到着しており何かの話が始まっていた。自慢じゃないが、その当時の私はコンベンションのコの字も知らなかった(無論、参加などしたことも無い)ので、ほとんどチンプンカンプンだった。ただ何やら大事を始めるらしい事と、スタッフとして動ける人がほとんどいない事だけが理解出来たのでピンと来た。{ははぁ、これは私もスタッフに加わって欲しいと思っているな}と。そして何も知らなかった私はスタッフを引き受け、全くのコンベンション素人でも出来ると(当時は)思った《登録事務担当》を請け負った。
 初めのうちは楽なものだった。何しろ申込方法、受付方法、返送書類、その他必要事項等はどんどん決まっていき、私はただそれを手順通り進めていくだけでよかった。しかし正式申込が始まった頃から風向きが変わりだした。初めに設定した申込締切日には申込者どころか仮申込者ですら定員に達していなかった。私はすっかりパニックに陥り、せめて仮申込者の参加を確定しておこうと思い、様々な方法を考えた。今から思えば笑い話だが当時の私の申込に対する概念は、旅行会社のパックツアーのように早目々々に申込まねば満員になる物だと思っていたので、締切を過ぎても参加者数が少ないSUM−PACKは完璧に採算割れを起こすと信じたのだった。そのため申込締切日を過ぎても参加手続きが為されていない人達には往復はがきを用いた督促状を出し、新たに設定した第2次仮申込締切日までに応募が為された人達には(正式)申込締切日を赤で訂正した案内書を返送し、これで締切日までには申込が済むだろうとタカをくくっていた。しかし事実は大違いで、締切が過ぎても申込は為されないわ、仮申込は絶え間無く来るわで登録名簿とニラメッコしながら、各自に設定した締切日や督促状の発送日及び返送の有無、さらに参加申込書の返送と参加費の振込のどちらか、あるいは両方が済んでいるかいないか、などをチェックしながら何種類もの対応文書を作成し、個別に発送していった。そのためコンベンションとしては小規模であるはずのSUM−PACKなのに申込手続きの対応は煩雑を極めた。その間にもプログレスの編集はあるわ、その印刷や発送はあるわ[検証!陸戦隊]の督促は来るわで目が回るような忙しい日が続き、そのうち<指令部付き運転手>及び<防人>両氏の仕事が忙しくなってしまい、事実上2人だけで動かざるを得なかった時期もあった。
 しかし、その甲斐あって1ヶ月前には参加者の9割以上(確か95%以上だと思った)の人の参加を確定でき、十分採算ラインに乗った(と思われた)ので仮申込の打切を決定し旅館へ最終的な参加人数を連絡して登録事務の仕事は一応の区切りが付いた。しかしその先には最大の苦難が待っていようとは、その時には想像もつかなかったのだ……。
 8月18・19日は、知っている人も多いと思うがコミックマーケットの日でもあり、同人誌を扱う印刷屋はフル回転の日々が続いており、その1ヶ月前くらいには既に印刷の受付は終了しているのが普通だった。そのような時期に、プログレスや自己紹介ムックの印刷をしてくれる所などまず無かった。かと言って同人誌を扱わない一般の印刷屋は殆ど[お盆休み]に入ってしまっていた。<かんきち>氏のおかげで、どうにかプログレスの発行だけは目処が付いたが、肝心の自己紹介ムックを印刷してくれる所が見つからない。某<猫目>嬢のおかげで、ようやく印刷してくれる所が見つかったが、そこは当然ながら一般価格なので印刷費が16万円もかかってしまった。早く原稿を仕上げていればこんな余分な費用を使わずに済んだのにと後悔すると共に同人誌価格の安さを改めて思い知った。
しかし我々に後悔している暇などなく、余分に使う羽目になった約10万円を埋めるべく経費切り詰め作戦が開始された。
 切り詰め作戦で酒の持ち込み料をカットしたので確かに大赤字は防げた。しかし、その伝達が不充分だったため、当日[寝耳に水]であった人達も少なからずいて、一部の人達には大変不快な思いをさせてしまったようである。それを予想しなかったわけではないがまさか宿泊客数のごまかしをやるわけには行かないので、あえて強行させてもらった。
 まあ、色々とあったが、取りあえず終わってホッとしていると言うのが正直な感想だ。このレポートを書いている時点では、NTTから臨時回線の請求が来ていないので正式な報告は出来ないのだが、何とかプラスマイナス・ゼロに近付けられそうな事だけは報告をしておこう。
 最後にひとこと。
「俺は2度とエリア88には戻らんぞ〜〜〜!」




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