投射ミサイルですけど

林[艦政本部開発部長]譲治

> 英語で「ミサイル」という場合“guided missile”と、殊更に“guided”を冠します。

 イメージ的に航空宇宙軍史の機動爆雷などに近いハプーンやシーキラーなどの対艦ミサイルはANTI−SHIP MISSILEと称されておりますが。ミサイルという大きな集合の中に“guided missile”は含まれますが、ミサイル=“guided missile”は意味しないはずです。もしも“guided missile”=ミサイルであれば同じ対艦ミサイルなのにハプーンはミサイルではないが、電波誘導のシーキラーはミサイルであるということになります。
 またSAM(Surface-to−Air Missle)は初期のミサイルこそレーダー誘導でしたが、いまはスタンダードミサイルのようにセミアクティブ・レーダーホーミングになっています。“guided missile”=ミサイルならばスタンダードミサイルは目標の手前で自分のレーダーに切り替えた瞬間にミサイルではなくなることになります。SAMの技術的動向としては”打ちっ放し”に向かっていますが、そうなると艦対空ミサイルはミサイルでなくなるという矛盾が生じます。
 このような事実から“guided missile”がミサイル全般を表さないとするならば『無誘導』という表現は一切の誘導装置が無いことを意味しますから投射ミサイルが無誘導という表現は適切さを欠く結果になるでしょう。
 アメリカ政府発行の『SOVIET MILITARY POWER』およびHUGHES社、Lockheed社の
各種ミサイルカタログを調べた限りではミサイルはやはりmissileでございました。ただある航空工学の教科書に”非常に狭い意味でミサイルをguided missileと本書では記述する”とは書かれておりましたけど。

 砲戦距離12000の127pを読めば投射ミサイルの投射の意味はカタパルト発射の意味と解釈できるのではないでしょうか。よほど妙な設計のランチャーではない限り反動推進の機械を宇宙船から発射して宇宙船に横Gがかかるのはおかしな話です。また”十分な初速を与えれば惑星間のような・・・”とあるところからも投射ミサイルは初速をあらかじめ与えられていることを示唆していますから投射は本当に投射しているのでしょう。光速で直線に進むレーザー光線砲の射程が1000キロ程度の技術水準の世界で光線よりも直進性の悪い(推進剤の消費にともない重心も変わる)反動推進機械が少なく見積もっても数十万キロ離れた相手に対して無誘導で効果的働きをするとは思えません。またこの距離では相手の情報は光速の限界から秒単位で過去の物あり、秒単位に移動できる距離のことを考えれば主計に嫌みを言われるくらい高価な機械が無誘導である可能性はきわめて低いと思います。



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