お手紙ありがとうございます。私もジャカルタ支部報をはじめ川崎さんの原稿は楽しく読ませていただいておりました。特に名前は知っていても具体的な構造となるとさっぱり情報がない国連機関についての川崎さんの体験(あるいは組織論)はとても勉強になります。
さて、ゾディアック級フリーゲート艦のことですが、実際(小説の世界でこの表現も変ですが)のところ川崎さんが指摘なさっているように「最初に十二隻の同型艦建造計画があってゾディアックの名前は後からつけた」が一番ありうることだと思います。私の「システム全体でゾディアック」というのはどちらかというとVLBIをもちいた遠距離レーザー砲システムの説明のための前振りに近いものでありましたから。それとあれを書いたころは艦隊旗艦についていろいろ考えていたのも影響していたでしょう。
いずれにしろゾディアックという名前からは十二隻という数字しかでてこない。シリーズが十二隻で完結してしまうのは明らかですね。ただもう一つだけ考えられるのは新機軸を打ち出した(ゾディアック級の配備で航空宇宙軍は警察力から軍事力という性格に移行していった?)フリーゲート艦ですから開発にも相当の時間や労力がかかったのであろうことは容易に推測がつきます。ですから開発過程で聞きのテストや人員の訓練のために宇宙に出ないフリーゲート艦ゾディアックというのがあったと考えることは可能かもしれません。
スペースシャトルのなかで他とまったく同じにもかかわらず滑空特性を調べるために製造され、宇宙には打上げられなかったエンタープライズってのがありますがそれと同じようなものです。
ゾディアックの予算ですが実は私は以下のように考えております。日本の海上自衛隊は船舶を購入するさいには計画を立てて発注年度には頭金だけを払い、あとは順次年賦でまかなっています。これは戦闘艦という自衛隊でもっとも高額な資材をとりあえず数多く配備するためのひとつの方法でした。ところで石油ショックの時に海自の予算もカットされましてローンの返済が滞りそうになったことがあります。この時は計画にそって建造する予定だった護衛艦と潜水艦、計三隻を護衛艦一隻に減らして帳尻を合わせたそうです。ところがおかげで海自のローン返済計画(正面装備の整備計画)は大混乱になりまして、混乱を収集するのに一〇年以上かかったそうです。つまりほんのついこないだまで海自の正面装備の調達は石油ショックの影響を引きずっていたわけです。
第一次外惑星動乱のときにみられるゾディアック級フリーゲート艦の大規模な建造もおそらくその資金調達の方法は海自と同じものではないでしょうか。航空宇宙軍が払ったのは頭金だけで外惑星動乱鎮圧後はひたすら予算をローンの返済にあてていたと思われます。
惑星開発局としても動乱後は早急に太陽系経済を立て直すために輸送船などの建造を最優先で行わねばなりませんし(文庫『星の墓標』によれは太陽系経済の宇宙船不足は深刻だったと思われます)そうなれば戦闘艦を建造する余地は無いでしょう。航空宇宙軍に新規の建造予算がないのは言うまでもありません。
エリヌス戒厳令では建造から一〇年以上も使用し続けなければならないところに第一次外惑星動乱の急激な建造計画がいかに航空宇宙軍の建造予算に深刻な影響を与えたのかを如実に示しているのではないでしょうか。
ジェミニ級はあったと思います。ただ旧式のフリーゲート艦ですからゾディアック級の『ジェミニ』が就航した段階で退役すれば問題ないと思います。日本の海軍でも『明石』とかいう船名を複数の艦艇が順次使用していることもありますから。
『こうしゅうえいせい誤』でどなたかがまとめるそうですが船の名前はどうやら
航空宇宙軍フリーゲート艦 | 星に関する名前(一部、山の名前) |
恒星間移動可能戦闘艇母艦 | 山の名前(例、アコンカグアなど) |
外惑星連合フリーゲート艦(含む仮装巡洋艦) | 化け物の名前(例、サラマンダー、ヴァシリスク、ゴジラ(ってのもあるはずだ) |
となっているようですね。
長々と書いてまいりましたが、書いたものを喜んでいただける方がいるというのはうれしいです。川崎さんも体に気をつけてジャカルタ支部報を出してください。