「こうしゅうえいせい惨」断末魔の大募集

岩瀬[従軍魔法使い]史明

 えー、締切間際の「こうしゅうえいせいさん」でございます。
 先日印刷屋に行きまして、最終締切がほぼ定まりました。この締切はホントのデッドラインですので、これを越えると(あらかじめの了解確認が無い限り)今回の発行には間に合わない、と考えてください。

 こちらで入力や縮小・貼込み等の処理が必要な原稿の締切は、
 6月16日(日)(6月大阪例会のある日)です。
 企画モノ−「シュミ特」や全員参加ネタの「甲州グッズ」も、この日が最終締切です。

 電子メールで送ることができる原稿や完成原稿は、
 6月30日が最終締切です。
 もっとも、電子メール送稿でも版下作成時間は必要ですし、全体の構成も考えなければなりませんから、できるだけ6月16日くらいまでに編集にご一報ください。
 また、完全版下(今回もB5製・等寸版下です)の場合、あらかじめ頁数・内容など連絡さえしてくだされば、もうしばらく待てます。できれば早目にだしていただければありがたいですが。

 今年の「えいせい惨」の原稿はけっこう集まりが悪いです。去年より薄くなるのは確実。下手すると「1」より薄くなるかもしれません。
 で、ぎりぎりまで投稿をお待ちしてます。
 ただ待つのも芸が無いので、ぎりぎりになってからで恐縮ですが、企画を一つ。
 航空宇宙軍史の社会・経済・歴史的背景の小特集をします。
ふるってご応募ください。
 これは「不完全読解:谷甲州」というタイトルの特集の中の小特集でして、ですからもちろん航空宇宙軍史ネタでなくても「えいせい3」は大歓迎なのですが(そもそも「なんでもアリ」ですから)、このネタ柱になる記事が既にあるので、特にプッシュしておきたいなあ、ということなのです。
 で、以下に、甲州さンの作品からひっぱりだした基礎データと考察を載せてみます。参考になればよいのですが……


 航空宇宙軍史における宇宙開発史がいったいどう設定されているか。
 それを作品からみていく際に重要なのは「バシリスク」収録の短編「星空のフロンティア」と「エリヌス−戒厳令−」のまとまった記述でしょう。
 前者はどちらかというと外宇宙探査に比重がおかれているため、ここでは後者の第3章(文庫ではP33〜47、ノヴェルズ版ではP32〜45だがこの章には改稿が若干ある)を主なテキストとしてみます。手元にお持ちの方は参照して下さい。

☆概観

 まず人口分布についてみますと、21世紀終わりごろの地球外人口は1億強。内9割強は地球−月系に住む。木星軌道内までなら99パ−セント、土星軌道内ならほぼ百パ−セント。つまり非地球−月圏人口は一千万人内外だが、これは火星や小惑星帯を含みそれらの内訳は不明、ということです。
 宇宙開発の開発主体は、「惑星開発局」(「内惑星開発局」と「外惑星開発局」にわかれている?)に統一されているという設定のようです。
 航空宇宙軍は、少なくとも設立当初(21世紀の早い頃? 「惑星開発局」設立と同じ頃に設立か?)は、宇宙における救難・治安維持活動による「惑星開発局」支援と、外宇宙探査(ダイダロス・イカルス及びオディセウスシリーズは当初から航空宇宙軍プロジェクトだったようですから)が二本柱だったように読取れます。
 航空宇宙軍が地球外地域の経営にまで強力な干渉をはじめたのがいつごろからか、
明確には読取ることが出来ません。が、少なくとも、フロンティアラインの停滞・後退と強引すぎる宇宙進出(21世紀初頭からの宇宙進出は、一般に合理的とみなすことができるよりも遥かに急速かつ強引になされた、という記述があります。このあたりが、「航空宇宙軍史」が単純な外挿的未来でない構築要素をもっている証拠です)によるひずみが表面化した2080年代には、『開発の最前線にたっていた内・外惑星開発局の管理能力の弱体化と、それをバックアップしていた航空宇宙軍の戦略転換』がなされます(「エリヌス」文庫版P40参照)。
 そしてちょうどこの頃から、外惑星の都市国家群に、「惑星開発局」の指示による開発資材供出への忌避や拒否。航空宇宙軍のみが警察能力をもつことへの反発が大きくなっていき、そのことが逆に、警察能力しかもたなかった航空宇宙軍に<軍備>を創出・増強させる口実となっていった、との記述がみられます(P41)。

☆謎の組織「惑星開発局」と外惑星動乱の真相?

 ところでこの「惑星開発局」というのが謎の組織なのですね。
 この「惑星開発局」がどのような経緯で成立したのか。どういう組織でどういう人間たち(特に彼等と国家や多国籍大企業との関わり)が運営し、その経済基盤はなんなのか。どういう理念に基づきどういう目的で宇宙開発をしているのか。それらについての記述はあまりないのです。
 ただ、「エリヌス」第3章を読返してみて、見落されがちだった気がするのは、「惑星開発局」が、強力な中央統制による徹底した計画経済によって運営と開発をしている、とはっきり書かれていることです。(P41末〜など)
 つまり、自由経済ではないのです。
 多国籍企業による投資や、帝国主義諸国による進出競走を連想してはいけない。
 おそらく「東インド会社」でもまだ自由すぎる。50年代のソ連邦経営を連想すればいいのかもしれません。(それがうまくいくはずがない、というのが90年代の私たちの感覚ですが、航空宇宙軍史が構築されたのは10年以上前ですし、うまくいかずに矛盾が噴き出したのが外惑星動乱だ、といえるかもしれません)。
 以前、わたしや隊長などの間で「重水素類輸出の決済はどんな形態なんだ?さっぱりわからん」とぶつぶついっていたのですが、今日旧?東側諸国との間でいまもなお盛んなバーター取り引きとか、「売却」ではなく開発局の課している「供出義務」、つまり現物で徴収される租税のようなものである、と、ごく自然にみなすことができそうです。(とはいえ、そうはっきり書かれてもいませんから、解釈のしようはいくらでもありそうです)
 とにかく外惑星経済は、日本や西欧・アメリカ経済でなく、現在の東ヨーロッパ経済を連想した方が的確なのかも知れません。

☆宇宙開発の秘められた動機

 さらに、「星空のフロンティア」にかなりはっきり書かれているけれどそれを読んでいない(入手しにくいから隊員にも未読の人はけっこう多いようです)人にはわかりにくい重要な設定をここで確認しておきましょう。
 航空宇宙軍上層部は、21世紀のかなり早い時期から、地球型異星文明と遠からず接触するという心証をもち、21世紀の末には、「星空のフロンティア」に語られるエピソードを通じて、それを確信した、ということです。
 これこそが、航空宇宙軍史における宇宙開発が、単純な外挿よりも(そして我々の属する現実宇宙よりも)遥かに急速に行なわれた理由になっているわけです。
 そして、甲州さンの書き振りは、その急速さには、航空宇宙軍?の操作?だけでは片付けられない、人類の無意識が働いていると示唆しているような気が、わたしにはします。

☆で、課題なんですが。

 紙面の都合もありますので、背景確認はざっとこんなものとしましょう。
 もちろん、私たちとしては、おとなしく素直な解釈に甘んじていてはつまらないわけです。
 設定の深読みで、直接設定されていない部分まで想像構築してしまうとか。
 谷甲州の記述と決して矛盾しないけれど、内在論理を暴走させて外道な世界構築を設定の隙間または異次元?にこさえてしまうとか。
 緻密な読解と論理展開の上に「甲州は間違っている」ことを論証してしまうとか。
 そういう楽しい記事をお待ちしています。
 とりあえず、航空宇宙軍史世界設定に関する疑問点を列挙してみます。
 記事作成の参考にしてください……

*惑星開発局とは何か?
  どのようにして成立したのか。どんな組織なのか。財源はなにか。どんな活動 をしているのか。地球経済や内地球圏内政(国家や企業)とのかかわりは?
*航空宇宙軍についても、その成立ないし変質の経緯はまだ書かれていない(予定 はあるのかな?)。その財源は? 経済的活動状況はどんなものか? 地球経済 や地球圏内政とのかかわりは?
*人類の宇宙開発の動機は?
  強力な経済的・社会的要請がなければ莫大な投下資本はなされないはず。
 いったいどんな必要度が? 人口分布からして人口圧とも思えない?
  たとえば外惑星からの重水素はどこで消費されているのか? 地球(地上)は 依存度しているのか? 外惑星動乱を地球人はどう受取っていた?

*外惑星は地球−月系になにを依存しているのか?
  最低限の物質的・エネルギー的自給はなされているはず(自給どころか余剰が しぼりだせることが宇宙都市開発の前提だとエリヌス文庫版35Pにもある)
  経済封鎖は贅沢品の払底以外に外惑星経済を苦しめえるか?(オガタ・ユウは ずいぶんひどい目にあったようにジャムナは回想しているが?)

*外惑星経済ってどんな風?
  そういえば貨幣がつかわれている描写がほとんどない(どんな通貨かよくわか らない)。また、社会主義型統制経済だという・の想像は間違っていないか?
 (いくらでも間違ってると論証できそうではあるなあ)だとするとどんな風か?
 もし重水素類を通貨で決済しているとすればどんな風か?(いつをもって受渡し とするのか?)

*外惑星の法律体系はどうなっているのか? 自治とはどういうレベルのものか。
  現在の地球上の法律体系のどんなものを採用し、どんな風に適用しているのか?  
 きりがないのでこの辺にしておきます。投稿、おまちしています。




●戻る