産経新聞

 [遊撃隊切込み隊長]改めわれらが[蟻の一穴]である天羽孔明隊員は、日本国四大紙の一つサンケイ新聞に果敢な突撃を敢行。無事「戦闘員ヴォルテ」の潜入工作を果たした。本人は潜伏中で直接の連絡はとれなかったが、「最後の三行を過激なアジテーションとみなして削除したマスコミの傲慢を断固糾弾する!」とのメッセージが巷間に流れている模様である。甲州戦線の諸君、権力の横暴に断固として抵抗しよう。

 戦闘員・プロトタイプV・ヴォルテ−彼は遺伝子工学の粋を集めて作り出された戦闘用バイオニック・サイボーグだった。そんな彼が活躍するこの物語は、白土三平の劇画『カムイ外伝』を青年時代に熟読していた作者が、いつかは自分でもこんな話しが書きたいと思い、そしてできたのだという。
 実際に読んでみると、戦いのシーンなどはまさに『カムイ外伝』を彷彿とさせる細かい描写力だ。ともすれば、SFであることさえ忘れてしまいそうになる。
 物語自体は、小気味のよいストーリー展開とテンポの良さが、非常に印象的だった。
 もっとも僕自身がこの『カムイ外伝』を愛読しているので、すぐにストーリーの中に溶け込むことができ、あっと言う間に読み終ってしまったというのが実態である。




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