経済システムと技術的裏付けなしで社会は存在しない。
宇宙船は、星間飛翔体としての構造を有し、経済的なバックグラウンドのもとで建造され、運航コストその他によって決定された航路を進む。戦争は、必ず開戦にまで至らしめる社会背景を持ち、経済・社会万般にわたる準備と戦略・戦術・組織構成・兵站・訓練メニューにまでわたる軍の整備があって初めて成立する。 当り前のことではあるが、科学技術水準が、そして人々の生活と心情が大きく変化している場合、そのすべてを構築するのは容易ではない。
科学的アイデアが核になっているいわゆるハードSFではない。
しかし、ハードSFをも内に含んだ作品。
谷甲州は、そういった作品が書ける数少ない作家の一人である。
谷甲州を知る人は少なく、ファンはさらに少ない。だがいまこそ谷甲州こそが新しい、谷甲州が面白い。文章が巧くなくても、女が描けていなくても構わない。
力と充分な論理性があれば。
1988年4月17日
谷甲州ファンクラブ「青年人外協力隊」結成にあたって [初代隊長] 阪本雅哉