私が始めて谷甲州氏の作品を読んだのは、ン年前の『CB−8越冬隊』でした。
この時私はまだ高校生だったんですが、周りにSFファンなぞ一人もいず、いやSFという言葉自体ジュヴナイルか、せいぜい星新一のショートショートか、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』くらいしか認識のない環境の中で、「アシモフは偉大だ!」「眉村卓はうまい!」「半村良も星新一も面白い!」などと独りつぶやいていたのです。
そんな状態でしたので、自分に合わないと思った作品はことごとく避けていたのですが、その中に谷氏が入っていました。だって、そのとき読んだ『CB−8』は高校生の私にはとても退屈で、4、5ページしか読めなかったのです。
それがここ数年、いろんな人達と出会って多大なる影響を受けるようになったせいか、はたまた私が成長したのか(これを俗に病が進行したともいうようで)以前には読めず本棚のコヤシとなっていた本がおもしろく読めるようになってきました。
それでも谷氏は敬遠しておりましたが、八十七年のSFMに載っていた短編(航空宇宙軍史シリーズ)をたまたま読んでしまったら意外とおもしろかったのと、『人外協』なる訳のわからぬ会に野次馬したのがきっかけで、一冊の本を読むことになりました。それが『カリスト−開戦前夜−』でした。
私はダンテのおじさんを愛してしまったのです。
直情型で実戦的な行動家で考えなしの単純なおじさん。最初っからホレてしまいました。彼の出てくる場面はワクワクしながら読み、彼のセリフは一文字一文字聞きホレ……あゝどうしてあっけなくお亡くなりになったのか。(前刊『星の墓標』で既に亡くなっておられたという話を聞いたときはショックでした!)
でも良いのだ。ページを戻せば、本を変えれば、ダンテのおじさんはいつでも不滅だ。
ランスのおにーさんも好きです。ロッドやラム、ブローだって好きです。タナトス戦闘団は皆好きです。
ダンテのおじさん達のおかげで、谷甲州の作品=退屈という認識が一挙にブッ飛び、今までこんな素敵なお方を知らずに過ごした数年間に涙を流して反省している次第です。
今後は谷甲州氏の作品は全部読むぞ!と誓いを立ててがんばるつもりです。