地上から宇宙を見る |
宇宙からはあらゆる波長の電磁波がやってくるが、このうち、大気層を通過して地上に到達できるのは可視光線とある範囲の波長の電波だけである。人類はまず、可視光による宇宙の観測を行った。目視から望遠鏡へ、そして巨大な天体望遠鏡へと、光学天文学は発展した。それから、電波望遠鏡を用いる電波天文学が確立された。VLBI(超長基線電波干渉計)という、世界各地の電波天文台の大型 アンテナを結ぶことにより、地球サイズの電波望遠鏡を作る技術が開発されている。 |
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現在実用化されている唯一の方法は化学燃料を燃焼させて燃焼ガスを噴き出し、その反動推力で上昇するロケットである。人工衛星打ち上げロケットの場合、打ち上げ時の全重量の80%ほどを燃料が占める。 化学ロケット以外の方法で考えられているものに、レールガンがある。電磁力によって物体を第1宇宙速度以上の初速度で発射し衛星軌道上まで持っていくというもので、発射時に大きな加速度がかかるので無人の荷物の打ち上げに用いることが考えられている。また、さらに理想的な宇宙交通機関として軌道エレベーターが考えられている。が、これは現在実用化されている材料では建造することはできず、新しい高強度材料の開発が必要である。 |
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1957年は国際地球観測年であった。この年、人類初の人工衛星スプートニク1号がソ連によって打ち上げられた。続く1958年にアメリカがエクスプローラ1号を打ち上げ、バン・アレン帯が発見された。なお、日本でも カッパ6型ロケットが打ち上げられた。 相次ぐ人工衛星打ち上げの中、宇宙開発を平和目的に限定するため、1959年には国連は「宇宙空間平和利用委員会」を設置した。 大気圏外の衛星軌道上に観測装置を置くことにより、地上まで到達できない電磁波による観測も行えるようになった。Ⅹ線天文衛星が打ち上げられ、Ⅹ線天文学が発達した。また、赤外線天文衛星も打ち上げられた。 |
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1959年、ソ連のルーニク1~3号が月へ向かい、2号は月の晴の海に命中し、3号は月の裏面の写真を撮影した。1969年になってアメリカのアポロ11号により、人類は初めて月に降り立った。アポロはLOR(ルナ・オービット・ランデブー)という方式をとっていた。サターンⅤロケットの1段目と2段目で地球の衛星軌道にのり、ここで3段目を再噴射して月へ向かう。機械船のロケットを使って月の孫衛星軌道にのると、軌道上に司令船を残して月着陸船は月面に着陸する。月探査後は月着陸船の上部がロケットにより孫衛星軌道に向かい、司令船とドッキングする。そして着陸船を切り放して地球へ帰る。アポロの乗員は3人でそのうち2人が月に着陸した。 |
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惑星探査機は地上からロケットで打ち上げられ衛星軌道上で再加速して目的の惑星に向かう。ボイジャー2号の場合では、タイタンIIIEセントールロケットで衛星軌道にのった後、セントールロケットを再点火して木星に向かい、さらにアポジ・モータで加速してから慣性飛行に入った。その後は惑星をフライバイすることにより方向を変えたり加速したりして次の惑星へと向かった。なお、ボイ ジャー1・2号の総重量は825kgでこのうち105kgが科学観測横器であった。 現在月や惑星の衛星軌道上に人工衛星を周回させ、継続した観測を行うことも行われている。 金星 1962年、アメリカのマリナー2号が磁場も放射帯もないことを確認。1970年にはソ連のベネーラ7号が着陸に成功し、表面温度475℃、気圧90気圧というデータを送ってきた。1978年にはアメリカのパイオニア・ビーナス2号が大気の西部は二酸化炭素97%、窒素1~3%、水蒸気0.1~0.4%であることを明らかにした。 水星 金星を通過したマリナー2号は1974年に水星に接近し、非常にアルゴン、ネオン、ヘリウムを含む希薄な大気があること、表面温度は-200~+500℃という分布を持つこと、磁場は地球の1%で質量は地球の6%であることが報告された。 火星 1965年にアメリカのマリナー4号がフライバイ観測を行い、それ以後、マリナーシリーズによって火星の地形が明らかになり、クレーターの密集した地域があることや太陽系最大の火山オリンパスが発見された。また、大気は 0.01気庄程度で主成分は二酸化炭素であることがわかった。1976年にはアメリカのバイキング1・2号が火星に着陸した。そして、初の地球外での生命調査が行われた。有機物は検出されなかったが、このとき行った実験の結果では火星における生命の有無についての結論は出せないと考えている人も多い。 木星・土星・天王星・海王星 1973年にアメリカのパイオニア10号が木星に再接近し、続くパイオニア11号とともに木星がヘリウムや水素でできているガス惑星であることを確認した。1979年にはボイジャー1・2号が木星のリング、衛星イオの活火山が発見された。また、メタンとアンモニアガスの大気中で放電が起きていることも確認された。 木星を通り過ぎた後、パイオニア11号は1979年に、ボイジャー1号は1980年に土星に接近した。そして、土星に磁場や土星のリングを観測するとともに、衛星タイタンに窒素を主成分とする大気があることを発見した。 また、1986年に天王星に最接近したボイジャー2号は大気中にヘリウムが多いこと、自転軸と磁軸が60度ほども違っていることなどを伝えてきた。 そのままボイジャー2号は1989年海王星を通過した。そしてリングや衛星トリトンの火山を発見した後、太陽系から飛び立って行った。 ハレー彗星 1985年から1986年にかけて、日本のさきがけとすいせい、ヨーロッパ宇宙機関のジオット、ソ連の2機のヴェガ、アメリカのアイスの計6樺の探査様により調査が行われた。その結果、ハレーの核は1 5×7×10km程度のサイズの黒い雪だるまであることやガスやダスト中には大量の有機物が含まれることがわかった。 |
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1980年代に入り、アメリカは恒常的に滞在者のいる本格的な宇宙ステーションの検討を始めた。 これにヨーロツパ宇宙機関、カナダ、日本が参加することになった。この「フリーダム」計画は当初実験・居住モジュール6基 (アメリカ4基、ヨーロッパ2基、日本1基)という計画であったが、予算の関係などで計画は縮小され、アメリカのモジュールを2基とすることになった。4基のモジュールの最大収容人数は8人。建造には、スペースシャトルが19回飛行するとなっていた。その後計画は変更を重ね、名称も「アルファ」となり、ロシアの参加も検討された。この案では上記モジュールにロシアのミールがつく。また、ロシアのソユーズがドッキングできるようになる。恒常的乗組員は6人。建造にはロシアのロケットの打ち上げが12回、アメリカのスペースシャトルの打ち上げが14回行われ、さらに日本用に3回、ヨーロッパ用に2回の打ち上げが必要だが、これはスペースシャトルかアリアン5で行う。しかし、この計画もさらに変更があるようであり、予断を許さない。 |
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日本の文部省宇宙科学研究所では火星近くの軌道を回る小惑星「ネーレウス」の土砂サンプルを採取する計画を立てている。2002年に無人探査機を打ち上げ、2006年に帰還させる予定。探査機にはイオンエンジンを用いる。この計画では回収したサンプルを分析することにより太陽系の成り立ちなどの情報が得られることが期待されているが、これは小惑星からの資源採取の第一歩とも考えれるだろう。 |
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無人月面移動探査機 月面環境の特徴は重力が地上の1/6であること、真空であること、昼夜が約15日周期で繰り返されることから昼夜の温度差が200~300℃になることなどがある。これらをふまえて考えられている無人月面移動探査機について説明する。移動方式は車輪(6輪)で駆動方式はブラシレス電動モータ(各輪独立駆動方式)、電源系は太陽電池およびバッテリー。昼はヒートパイプ、ラジエーター、 サーマルルーバを利用して放熱し、夜はヒータで保温する。構造的には、スタックや横転のしにくい設計、またはその状態から脱出する機構を併用することが考えられる。現在のロケットで打ち上げ可能なものとして、全長約4m、幅約2.2m、高さ約3.7mで重量900kg以下というサイズのものが考えられている。 月基地 1980年代後半にアメリカで月・惑星探査構想が出されて以来、これに沿って様々な月基地のコンセプトが提案されてきた。一例として日本の建築会社の提案を紹介する。まず2005年に無人探査を行う。このとき、小規模の酸素発生装置のデモ運転を行う。そして2010年から有人月面基地の建設に入り、2025年には居住者10人、酸素製造量年間10t、発電量一日100kW、水素 製造量年間1t、そして、ヘリウム3製造のパイロットプラントを持つ、居住区画2つ、実験区画4つという基地になっているというものである。 |
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火星基地 火星基地についても様々な提案がなされている。やはり、日本の建設会社の1つの構想について紹介する。 火星基地建設予定地は低緯度地方の周囲1kmにわたり水平は土地とする。居住部はなるべく固めて、ロケット発着場は居住部の東側で1km以上離れたところ、原子力発電装置は居住区から300m以上はなれたところでなければならない。基地は円筒形居住モジュール、空気膜構造居住部、温室、原子力発電装置、太陽電池パネル、およびそれらを結ぶ道路からなる。最終的な居住人数は16人である。これらを従来からある建設樺械で建設した場合にほとんどの建設作業は適切な時間内に終了することが可能であるとしている。例えば温室1棟を作るのに29時間かかるとしている。ただし、使用すると仮定している建設機械のホイールローダー(自重5.5t)、掘削機(自重10t)、ウィンチ、ボーリングマシンなどをあらかじめ火星に送っておくべきだとしている。なお、現在大型ペイロードロケットとされているタイタンIIIでは火星遷移軌道まで2.5t程度の荷物を運ぶことができる。 また、居住部をレゴリスで覆うためには従来の建設機械では時間がかかるので、別の方法を考えるべきだとしている。 |
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以上、人類が行ってきた宇宙開発、これから行うことを考えている宇宙開発について説明してきた。では、なぜ、人類は宇宙開発を行うのか。1つには知識を得るためである。宇宙開発により宇宙に関する知識そして地球に関する知識を得る。もう1つには利用するためである。通信等における人工衛星の利用、宇宙環境を利用した実験や製造、月のヘリウム3や小惑星の鉱物などの資源の利用、さらには居住空間としての宇宙の利用が考えられる。 |
◆参考文献 宇宙開発のおはなし 山中龍夫、的川泰宣 日本規格協会 宇宙についての基礎知識 宮本正太郎 講談社学術文庫 太陽系グランドツアー 中富信夫 新潮文庫 やさしい宇宙開発入門 野田昌宏 PHP 最新宇宙技術論 学研 自動車技術, Vol.47、No.9、 1993 日本機械学会第71期通常総会講演会講演論文集(IV) AVIATION WEEK & SPACE TECHNOLOGY,November 8、1993 |