◆なぜ太陽の近くにするのか? First Contact Simulation(以下FCS)は、あくまで真面目なシミュレーションです。シミュレーションがシミュレーションとして成立するためには、地球人側と異星人側の技術などの間に“共通の土台”がなくてはいけません。でないと、シミュレーションとして成り立ちにくくなるからです(地球人が異星にやってきたら、突然モノリスが立っていました、では地球人がどう反応していいかわかりません)。 このため、地球人側はワープやハイパードライブなどの超技術は使いません。あくまで現在の技術レベルから予想できる方法でしか、宇宙を渡って来る事ができないのです。これは異星人側の設定にも言える事です。つまり、テレパシーを使う異星人や、波動エンジンやコスモクリーナーを持っている異星人は設定できないのです よって、当然超光速航行は不可能というか、ルール違反です。となれば、地球人がやってこれるほどの近く(と言っても4光年以上は離れてしまうのですが)に異星人がいないと困るのです。 |
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◆どんな星が有望なのか? |
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太陽はG2型ですので、表面温度が6000度ほどになっています。表面温度6000度の物体の出す放射は、可視光付近の光を最も多く含んでいます。 温度が高いほど、その星の出している光の成分は波長の短い方(紫外線の方)にずれます。 スペクトル型からすると、O-B-A-F-G-K-Mのうち、OやBの星では人間のような生物にとっては紫外線が強すぎると思われる。 もっとも、このような考察は実は今回に限っては無意味です。太陽から15光年以内には、O-B-A型の星は、たった一つ、A型のシリウスしかないのです。シリウスは連星系なので勘定からはぶきます。また、M型の星は一般に暗い星が多く、地球と同じエネルギーを得るためにはかなり恒星に近い処を回らなくてはいけません。恒星に近いところを回っているということは、恒星が安定しない星だった場合など、特に困ったことになります。 結局、探すべきはF-G-K(後のリストでわかりますが、F型は近くにはありません)型、あるいはM型でも明るい方、ということになります。 上の表には「輻射補正」という数値がついています。これは、星の明るさを表す“絶対等級”と星の輻射するエネルギー量とのあいだを補正する数値です。 絶対等級は、その星が10パーセクの距離にあるとした時の見かけの等級を表します。しかし、この等級は人間の目で見た明るさ、すなわち可視光の光量を元に決めてあります。しかし、実際にはM型などの暗い星では可視光より赤外線の方をたくさん出しているし、O型やB型では可視光より紫外線の方をたくさんだしています。だから、F型の4等とM型の4等では、可視光では同じくらいでも、全エネルギー量ではM型の4等の方が大きくなります。 実際には、F0型の4等星はM0型の5.2等星と同じエネルギーを出している、と考えられます。つまりこの等級の差が輻射補正です。輻射補正は、太陽の場合で-0.07、と決めてあります。 同じエネルギー量を出しているM型とG型の星を比べると、M型の星のほうが(我々にとっては)暗い、という事になります。逆にM型の恒星をめぐる惑星に住む異星人からすると、この異星人はおそらく赤外線域を可視光としているでしょうから、G型の星の方を逆に暗く感じることでしよう。 |
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◆惑星はどこにおけばよいか? 地球に近い環境を持つ惑星を設定しようとした場合、恒星から惑星に向かってふりそそぐエネルギーを同じくらいにすればよい、と考えられます。 そこで、まず恒星の放射するエネルギー量を計算します。 まず、恒星の出すエネルギー量は (絶対等級)+(輻射補正) で計算できます。太陽の場合で、この数値を出しておくと、 4.8+(-0.07)=4.73 となります。等級は、5違うと100倍エネルギー量が変わる、という数値ですから、 ε=(絶対等級)+(輻射補正)-4.73 とすると、今考えている星は太陽の(100の0.2ε乗)倍だけ小さいエネルギーを持っている、という事になります。 この場合、惑星はその分太陽に近づかなくてはいけないので、 |
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という計算式で計算できます(エネルギーの密度は距離の自乗に反比例するから)。 距離を測る単位を天文単位としますと、地球と太陽間の距離=1になりますので、この式は、 |
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となります。 一例として、バーナード星というM5型の星の場合でこれを計算してみます。 バーナード星は絶対等級13.2で、この場合の栴射補正は-2.4なので、 ε=13.2-2.4-4.73=6.07 となります。 これから距離を計算すると、 |
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となり、なんと0.06天文単位まで近づかなくてはいけない事になるのである。 より太陽に近い星であるεインデイで計算してみる。εインデイの絶対等級は7.0であり、K5型なので、塙射補正は-0.6。よって、 ε=7.0-0.6-4.73=1.67 ゆえに |
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となり、約0.46天文単位のところに惑星をおけばよいことになる。 ◆近距離有望恒星のカタログ さて、太陽から近い順に、連星でも閃光星でも白色矮星でもない星をずらっと並べてみます。とりあえず、距離12光年まででリストアップしました。 |
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◆では、どこに異星人を? 上にあげた8つの星のうち、どの星に異星人を構築する事になるのか、実はまだ決まっていません。当日、サイコロを振ってきめようか、という話になっています。 これまで日本で行われたFCSでは、1991年の金沢のI-CONではεエリダニが、1992年の横浜のHAMACONではτケチが、1993年からのNifty-Serveでの通信企画ではεインディが使われています。 また、惑星の方も、彗星のような長楕円軌道にしたり、木星型惑星の衛星にしたり、などのバラエティがあります。 今回はどんな恒星の回りに、どんな惑星を回す事になるのでしょうか。 |
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◆参考文献 この文章を書くために、『理科年表』東京天文台(1987年版)、『光世紀の世界』石原藤夫(早川書房)、『銀河旅行」石原藤夫(講談社ブルーバックス) を参考にさせていただきました。 |