明らかに知性を持った思われる地球外生命の電波を天文台がとらえる。このような冒頭で姑まるSF小説は多数存在いたしますが、いま現実世界でこのような事態に遭遇したとき天文学者達はどう行動するのでしよう。配偶者に電話する?友人に電話する?上司に電話する?新聞社に電話する?TV局に電話する?総理大臣に電話する?国連事務総長に電話する?それともまず近くの精神科に電話する?我々素人の脳裏にはなんとも手の打ちようが無い混乱した情景が浮かんできそうです。

 しかし、現実ははるかに先を行っています。地球外生命からの電波信号に如何に対処すべきか? こうした事態を想定した国際的なプロトコルが存在するのです。

 天文に詳しい方なら国際天文学連合(IAU)の名前はご存じの事と思います。本文をお読みの方の中にも「IAUサーキュラー」などの天体観測情報を活用された経験の持ち主はいらっしゃることでしょう。
 しかしIAUの活動は単に天体観測情報の通知にとどまりません。天体観測から天体物理など天体に関するすべての分野の研究をサポートするために40以上の委員会が各国の研究者の連絡をとりまとめています。
 この委員会のなかで1982年にSETIにかんする専門の『第51委員会」が創設されました。ここで91年に、国際宇宙飛行学会(IAA)のSETIの委員会によって提案された「宇宙から実際に地球外生命から送られたと思われる電磁波信号についてとられるべき原則」についてのプロトコルがIAUの決議となるよう総会に提出されました。プロトコルの内容は以下の9の原則から成り立っています。
1)地球外生命のそれらしい信号・形跡を発見した場合には一般に公表する前にそれが自然現象および人類が関与した現象で無いことを証明する努力が必要である。ただし判断でさない場合には未知の現象として公開しても良い。
2)一般に公開される前に、このプロトコルに関連しているすべての観測者・研究機関に速やかに通報されねばならない。独立した観測によって発見が確認され、さらに連続したモニタリングが可能なネットワークが確立できる。
  この現象の発見者はそれが独立した観測によって信頼できる証拠であると判明するまでいかなる形式にせよ一般に公開してはならない。また発見者は関連した国家の当局に通報する。
3)証拠が確実であることが判明し、このプロトコルに参加した関係者に通報した後の発見はIAUの中央天文台電報局を通じて全世界の観測者に通報され、国連の事務総長にも通報される。また関係する国際機関にもデーターと情報が供与される。
4)これまでの手順をふんだ上で、発見は一般のメディアに迅速に隠すことなく公開されなければならない。発見者は一般向けの発表の権利を持つ。

5)発見の確認についての総てのデーターは通常の科学社会のルールに従って利用できるようにされる。

6)発見は引き続き継続されて観測される。そのデーターは将来の解析にも役立てることができるように可能な限り記録され永久に保存される。
7)発見の事例が電磁波による物であった場合はその周波数帯を保護するよう国際電気通信連合に求める。
8)国際協議が行われて合意ができるまで相手に対しては何の応答も行わない。
9)国際宇宙飛行学会(IAA)のSETI委員会はIAU51委員会と協力して発見後のデーターの処理方法について引き続き検討する。発見後は科学者と他の分野の専門家からなる国際委員会が設けられる。
 SETIの結果として地球外生命の存在が確認された場合の重要性を考えればこれらのプロトコルの妥当性は理解できるものでしょう。逆にいわゆる“TVのUFO番組の類”がいかに科学とは無関係の思慮の足りない浅薄な物であるかがわかります。