CONTACT 2004 Report (2004年)

 「概要報告」

 2004年3月の12日から14日にかけて、カリフォルニアでCONTACT第21回大会「CONTACT 2004 21st Annual Conference: March 12-14」が開催されたので参加してきた。
 今年はタイミング良く、サブタイトルの「The Challenge of Mars: Past, Present, Future」が示すとおり<火星>に関する発表がテーマのシンポジウム大会である。開催地は、シリコンバレーの中心地サンノゼから北へサンフランシスコ寄りにあるNASA AMES研究所だ。モフェット空軍基地に隣接し滑走路横には気球船を嘗て格納したという巨大なハンガーが2棟あるのも印象的だった。滑走路にはスペースシャトルも降りたことがあるそうだ。毎年の大会も21回目である。講演と平行し地球人チーム(参加者)と異星人チーム(オロビル高校の生徒たち)が各設定をして最終日にファーストコンタクトが行われる。またアメリカの場合、教師やSF作家の他にNASAの第1線研究者が参加するので講演内容もなかなか興味深い。今回はアメリカ在住でコンタクトジャパンMLにアクセスされている「電気羊」さんご夫妻に初めてお目にかかるのも楽しみだった。また大会2日目には「CONTACT Japan」の活動について報告することになっていた。

 プログラムブックによれば企画ハイライトは次の通りである。

  • 「スタートレック」シリーズで有名なリック・スターンバック氏の企画「MARS BASE」。2018年から2028年にかけての火星基地での生活をシミュレートするワークショップである。
  • キム・スタンリー・ロビンソン氏その他のメンバーによる「AVATARS2004」。火星の過去と未来を3D画像で視覚化する試みである。火星ローバー(今回はスピリットとオポチュニティ)の開発に密接に関係する研究である。
  • 「COTI HI」は、今回オロビル高校の生徒たちによって行われるワールドビルド。最終日にファーストコンタクトをする。基本は定番の「COTI(Culture Of The Imagination)」である。
  • 教師たちが中心になって行う未来への教育企画「Education for the Future」もある。
  • 「SOLSYS」は、将来の太陽系社会のあり方を考える企画。今回はハミルトン大学の学生たちが発表を行う。

大会前夜の様子:

 木立の中に点在する建物から宿舎をやっと見つけてチェックインしたときは、午後9時を過ぎていたがロビーではスタッフが準備の最中だった。日本の大会準備光景と全く変わらない。「ご苦労さまです」といいながらチェックインしていると私の名前が呼ばれてびっくり。なんのことはない、封筒の名前を読んで確認が行われていたのである。部屋にはキングベッドがでんとあり大きな冷蔵庫と電子レンジが備えてある。バスはないがシャワーが使えるし結構広い部屋だった。テレビと電話もあるので一泊50ドルはかなり安い。しかも軍が警備しているから安全度は抜群である。しかしインターネットに接続するのは苦労した。 NASAの機密漏洩防止対策のため簡単には市内回線につながらないからである。結局800番接続でいけることがわかりMCIのカードでつなぐことができた。もうひとつ恐れていたことが判明したがそれは食事である。朝と昼は大会側で用意してくれていたが、夕食は、ダウンタウンに行く車がない限り、NASA構内にあるマクドナルドしかないのだ。「電気羊」さんご夫妻のおかげで初日はおいしいタイ料理の店に行くことができたが、後日マックのバーガーをひとり噛しめる夜を過ごすことになる。
 それはさておきいよいよ明日は大会初日である。荷物をおいて着替えるとロビーのスタッフのところへ行ってみた。すると見覚えのあるひとがいる。コンタクトの創始者でリーダーのジム・フナロ博士である。温厚な笑顔がなつかしい。カブリロ大学を退官して今は同校の文化人類学教室名誉講師である。シアトル在住だ。ハグしてあいさつを交わす。10年ぶりの対面である。お互いにふけちゃったなあと笑いあった。他のスタッフも私を覚えていてくれてあいさつをする。ジムの最大の協力者でアーティストのジョエル・ヘーゲン博士とも再会する。「コンタクト(映画ではない)」のエイリアンのモデルはほとんど彼の製作によるものだ。また彼はNASAの火星プロジェクトにも参加している。後日の会話ではふたりともCJ6には行ってみたいと言っていた。

13日(金)初日

 すがすがしい朝の日光を浴びて小鳥の声の中を大きな木陰にリスを見ながら5分ほど歩くと会場に着く。朝の8時半から朝食サービスがあるのだ。パンや飲み物、コーヒーや果物が置いてあるので本当に助かった。
 9時から30分刻みの講演が始まる。メモはとるが時差ぼけで寝てしまった場合のためテープレコーダーを回しておくことにした。
 最初に会場で会った日本人カップルが「電気羊」さんご夫妻だと思ったら違っていて、男性は日本の某トップメーカーのマネージャー氏、女性はそのアシスタントの方だった。ウエブサイトからこの大会を知って参加されたとのこと。コンタクトジャパンのこともご存知だった。どうも新しい製品開拓が目的のようであった。
 「電気羊」さんご夫妻とはその後対面を果たしたがおふたりともかなりのSFファンである。「電気羊」さんは、カブリロ大学のいわゆる女子大生さんである。彼女のご主人は某コンピューター関連会社のアメリカ勤務だ。100人ほどの大会に日本人が合計5人参加というのは高いパーセントである。また数年前に「パラマウントスタジオ」で会ったアーティストのリック・スターンバックさんとも再会を果たした。そのとき彼が案内してくれたスタートレックのセットはまだ記憶に鮮やかである。

 毎日の講演とスピーカーを紹介しよう。講演内容は「講演報告」で報告する予定である。
 初日のプログラムと講演者は次のとおりだ。30分の時間枠で進行するのだ:

  • 「月と火星:ヒューマニティの次のステップ」マイケル・シムズ(NASA Ames研究所火星探査センターの科学者)
  • 「火星と時間感覚」オリバー・モートン(サイエンスライター。火星に関する著作多数)
  • 「斬新なデザインツール」キース・ドイル(アーティスト・コンピュータープログラマー)
  • 「ジオフュージョンの火星」チャック・スタイン(ソフトウエア視覚化技術のジオフュージョン社の共同創設者)
  • 「火星の人類:ひとつのゴール、多くの方法」リック・スターンバック(技術者・科学者・アーティスト。スタートレックシリーズのメインアーティストとしても有名。Space Model Systems社を設立)
  • 「宇宙戦争」ジェラルド・ノルドリィ(元空軍将校。サイエンス・SF作家。コンタクトの会計担当でもある)
  • 「アーティストの視点」ドン・ディビス(天文アーティスト)
  • 「火星そしてその彼方:トモローランドのビジョンを実現する」アンドリュー・チェイキン(作家・科学者・編集者。「A Man on the Moon: The Triumphant Story of the Apollo Space Program」は有名)
  • 「火星3部作リーディング」キム・スタンリー・ロビンソン(SF作家。受賞多数。「Red Mars」「Green Mars」は翻訳されている。「Blue Mars」はたしか未訳だ。)
  • 「バルスームの遺産-アメリカ南西部のレンズを通して見た火星」ジョン・カーター・マックナイト(編集者・コラムニスト。「Mars Society」の初代会長)
  • 「火星の視覚化:過去と現在」キース・ビーネンボス(オランダから参加。火星風景の画像化を研究開発。美しい画像は以下で見ることができる)
  • 「生物学と火星の未来」クリス・マッケイ(NASA Amesの惑星科学者。現在の研究テーマは、太陽系の進化と生命の起源。火星探査計画と人類の定住計画にも参加)

14日(土)

 2日目のプログラムと講演者は次のとおり:

  • 「コンタクトの考察」ダグラス・レイベック(ハミルトン大学文化人類学教授。著作多数)
  • 「活性化する妄想」ダレル・アンダーソン(専門は印刷・画・映画用CG・ソフトウエア作成・イラストなど)
  • 「短編3本」ジョエル・ヘィゲン(アーティスト。国際宇宙アーティスト協会(IAAA)の創設者。NASA Amesにも参加。アメリカコンタクトの主要なメンバー)
  • 「M.A.R.S.:数学、芸術、宗教、科学:4つの相補的な信条体系」キャロル・セクィン(カリフォルニア大学バークレイ校のコンピューターサイエンス学部教授)
  • 「大渦巻きⅡプロジェクト」ジェローン・ラプル(1996年にはILMに技術部長として参加。スターウォーズ、AI、ハルク、ターミネーター3、タイムマシンや多数の映画のCGを担当。現在ILMでアーサー・C・クラークの「大渦巻きⅡ」映画版でクラークと仕事中)
  • 「サイバースペース・ミーツ・アウタースペース:実際の火星訪問」ブルース・ダマー(コンタクトコンソーシアム。マースローバーのロボット技術の視覚画像開発)
  • 「リードオンリーのエイリアンにどう対処するのか」アラン・タフ(カナダトロント大学名誉教授。Invitation to ETIの創設者および代表。SETIやバイオアストロノミー団体でも活躍中)
  • 「エクソラリウム」ディビッド・ブリン(科学者・SF作家。受賞多数)
  • 「ETIプロジェクトへの招待」スカーレット・ワン(トロント大学で学位取得)
  • 「エクソラリウム」シェルドン・ブラウン(カリフォルニア大学サンディエゴ校のアートにおけるコンピューティングの教授、および同センター所長。非常に幅広い分野で活躍中)
  • 「コンタクトジャパンの報告」マサミチ・オオサコ(筆者)
  • 「火星:倫理学とETの社会生態学」ジム・フナロ(CONTACT創設者・代表。文化人類学者。カブリロ大学名誉講師)
  • 「未来のための教育」ドン・スコット(教師。レンジャーでもある。未来のための教育のリーダー)
  • 「地下の火星」ガス・フレドリック(科学技術教育者。火星の溶岩洞窟の研究に携わっている)
  • 「COTI HI」リチャード・ジンマー(文化人類学者、心理学者。ハッチンススクール教師。学生に火星コロニーについて教えている)(その他の参加者:デイブ、キャロル、イスラエル)
  • 「芸術と科学の車」ランドール・シュローダー(移動教育者。各種の自動車で全米をまわってユニークな教室とアートを作成している)
  • バンケット(夕食)
    • 基調講演:マイケル・シムズ

15日(日)

 最終日の講演プログラムは次のとおりである:

  • 「言語上の表現とコンセンサスの形成」アリエル・オニール(ハミルトン大学。COTI HIに関与。学生の活動を通して文化振舞いと社会的実践について言語学の研究をしている)
  • 「火星砂漠研究ステーションにミッション支援を提供する」ジャスティン・ミリアム(マースソサエティ研究者)
  • 「ソルシスのシナリオを微調整する」リード・ライナー/パネル討論
    • ソルシスというのは未来の太陽系社会のシミュレーション。
  • 「COTI」コンタクト
  • 閉会あいさつがこのあとある。

まとめ:

 コンタクトジャパンの活動報告は、口頭でのプレゼンだったがなんとかうまくいったと思う。CONTACT Japan 6の宣伝もした。しかしなんといってもNASAのロゴがはいった演壇でコンタクトジャパンの活動報告をしたのは非常に気持ちのいいものであった。15分の持ち時間いっぱいだったが内容は好評で安心した。
 アートショーの部屋には、火星風景のインターラクティブなアニメーションや、高校生たちの作成した異星生物のモデル、火星の立体視画像、CG、火星儀などがあり楽しかった。またロビーにはコンピューターが数台設置されていて自由に使えるようになっていた。別室ではワールドビルドをしたり、参加者とオロビル高校の生徒たちがFCS企画を進めていたりなかなか良く企画されていたと思う。
 ただ食事は昼がピザの宅配だったり土曜日夜のバンケットといってもバイキングスタイルだったりしてそれほど期待とおりではなかった。ドイツから来たライターにインタビューを受けたりもした。講演ホールの片隅にはTシャツや宇宙関係のモデルを販売するコーナーができていた。ちなみにコンタクトTシャツは、コンタクトジャパンが先に始めたグッズである。「ロードオブザリング」のバッジもあったのは面白かった。またNASA関連の商品やお土産ものは、研究所入口の近くにあるスーベニヤセンターで買うことができた。ここの定番は「宇宙食」や「帽子」であろう。貫禄のあるおばさんがカウンターにいた。
 今年は、期間限定で「マース・センター」という展示場が研究所を出たすぐのところにできていたので大会終了後の月曜日にのぞいてみた。ウエブサイトの写真で見たよりも実際は小さな建物ものだった。白いバルーンドームの中に展示があるが、ざっと見たところ主に小中学生用というか一般来場者用のものである。実際に小学生たちがバスでどんどんやって来ていた。ただ一室にさりげなく本物の「月面の岩石」が展示してあったのはさすがである。なにしろコンタクトで最新情報やCGを見ているのでこれは比較する方が無理な話である。
 


「プログラム内容報告」

 

「月と火星:ヒューマニティの次のステップ」

マイケル・シムズ(NASA Ames研究所火星探査センターの科学者)

 最新の火星立体画像をいろいろと見せてくれた。これはアナグリフ(anaglyph)という立体視で左に赤、右に青のフィルムが入っためがねが配られそれで画像を見る。ご存知の方も多いと思う。もちろんNASAやJPLのウエブサイトでも見られるのだが、やはり最新映像を大スクリーンで見るとシムズさんの解説もありかなりの迫力である。アナグリフにはまりそうだ。

「火星と時間感覚」

オリバー・モートン(サイエンスライター、火星に関する著作多数)

 火星に人類が降り立ったときその地理学的な特長からどのような感覚を得るだろうかという話から始まった。例えばグランドキャニオンの崖にたつときの素晴らしい眺望は、はたしてマリネス渓谷を眼前にしたときの気持ちと比較できるのか。火星の景色はどのように人の目に映るのか。ひとの人間性は月世界の次に火星の開発に向うとしたらどういう具合に対応していくのだろうか。地質学的な年齢からも火星に生命があったとしたらその化石を発見するだろう。そこから火星で流れた時間感覚を読み取り、火星の古代の姿を考えてみる。時間に拘束された感覚がそこにある。もちろん火星に住むようになっても主な流れは人類の歴史そのものであることに違いはない。

「斬新なデザインツール」

キース・ドイル(アーティスト・コンピュータープログラマー)

 プレゼンテーションされたアプリケーションはなかなか面白かった。「Mutation Softwre」というよくある生物の進化プログラムだが、このプログラムは実によく作られたアプリケーションで、まず画面に基本的な構造の生命体を作り、いろいろな要素を3D画面で入力してやるとひとりでに進化というか変異が進んでいく。このパラメーターの入力が楽しい。もちろん前の段階に戻すこともできるので比較研究も可能だ。このソフトがあればFCSの際にはイメージを具体化するという大きな効果があるだろうし、アーティスト探しに苦労することもないかも。もちろんフラクタルのプログラムも組み込まれていた。会場の反応も大きかった。画像をみていただきたい。

「ジオフュージョンの火星」

チャック・スタイン(ソフトウエア視覚化技術のジオフュージョン社の共同創設者)

 GeoFusionという視覚アプリケーションの会社を作っていて、今回はやはり火星の地形を動画で堪能させてあげようというプレゼンテーションであった。月面や火星の今後の探査、特に有人探査には役立ちそうだ。

「火星の人類:ひとつのゴール、多くの方法」

リック・スターンバック(技術者・科学者・アーティスト、
スタートレックシリーズのメインアーティストとしても有名
 Space Model Systems社を設立)

 彼のプレゼンテーションも設立したコンピューターグラフィックスの会社の作品を使いユーモアのあるものだった。月面で撮影されたスニーカーの写真など貴重なものである。もちろんジョークなのだけど。


 これ以降の、後半の講演は時間が結構たってしまいましたので、すべて報告するよりも、記録をたどって興味が深かったものをいくつか報告することにします。

<アヴァターの宇宙>

 講演はブルース・ダマー氏
 「サイバースペース・ミーツ・アウタースペース:実際の火星訪問」というものでロボット技術による視覚開発により、火星地表での画像をリアルに見せてくれた。講演も良かったが、同じ人の展示で面白かったのは、いわゆるアヴァター(化身)を使い様々な異世界というか平行宇宙を体験するというもので、そこには多彩な世界が構築されているのである。日本で経験されている方もあると思うが、平行世界・異世界というか「コンタクト」に関連しているので興味深い。
 CD付きの本を出版している。コンタクトの展示会場で本人から直接いただいてきた。PDFファイルを開くと、メニュー画面が現れる。行きたい世界や部屋のアイコンをクリックすると、インターネットに接続されて希望の世界や宇宙に移動できるようになっている。直接そのURLにアクセスしてもいいと思うのだが、ゲートウエイが一覧できるのは便利である。当たり前だが英語なので読解の苦労はあるが。あなた自身のアバターを作ることができるし、お気に入りの世界を構築できるので「CONTACT Japan」参加者でワールドビルドが大好きなあなたにはお奨めの一品かも知れない。Windows/Mac どちらも使える。
 タイトル「AVATARS!」作者「BRUCE DAMER」出版社「Peachpit Press/ 1249 Eighth Street, Berkley, CA94710, USA. Tel: 910-524-2178 Fax: 510-524-2221」ISBN: 0-201-68840-9 価格:US$39.95である。

<大丈夫?>

 NASA AMESの著名な若手科学者;クリス・マッケイ博士の講演内容「生物学と火星の未来」で面白かったのは、宇宙環境の汚染というか検疫の問題であり、特に火星環境を地球から送ったプローブやローバーに付着した微生物や細菌が汚染してはいないかという疑問は誰しも抱くことだろう。
 しかし講演の後、質疑応答で博士がいい放ったのは「大丈夫、大丈夫、火星の環境も過酷なところですし、また特に月など真空宇宙にむき出しになっているところでは、あっという間に強力な宇宙線が始末してくれるのでクリーンなんです」「火星の場合、環境が苛酷だから問題ないでしょう」であった。
 しかし聴衆はあまり納得していなかったように思えた。現に月面に放置された機械に付着して生き残った「地球の生命体」を後から月面に行った宇宙飛行士が発見したのはよく知られていることだし、それほど簡単に安全と断定はできないのではと思う。ではどうすればと問われると応えに窮するのだが。

<明治維新>

 ダグラス・レイベック博士の「コンタクトの考察」で印象深かったのは、彼が日本の明治維新を取り上げて、旧世界から新しい世界への移行があのような形でなされたのは、この惑星上まれにみる時代の交代があったからだ(Extraordinary replacement on this planet) という話をしたことだ。たしかに鎖国されていた日本と海外諸国が接触を行ったのは、まさに異文化間のファーストコンタクトであり、周知のような推移があったのは実にすごいことだったという内容だった。時代や条件は異なるとはいえメキシコの場合の結果なども例にあげていた。また地球上には、異なるが尊敬すべき4000もの文化が存在するにもかかわらず、悲しいことに敵とみなすことがそのファーストコンタクトの基本姿勢であるという。

<すごい迫力>

 エイリアンの造形やCGなどNASAにも協力しているジョエル・ヘィゲン博士の講演は、博士製作の短編映画の上映である。ただし人体のCTによる「総天然色・スライス画像」の連続だったので、筆者はちょっとついていけないほどの迫力があった。コンセプトは面白いのだが悲しいかな見慣れていないひとにはちょっとつらかったのでは。これは私が昔ニューヨークのホログラム美術館で内臓のホログラムを見たときのことを思い出させた。医学を生業とされている方は大丈夫であろう。

<コンタクト/ワールドビルド>

 最終日は、「COTI SMACK DOWN / The W.A.Y vs Ybanez Inhabitants」といいカリフォルニア州オロビル高校の生徒たちによるワールドビルドの報告である。
 全てを聞き取り記録できなかったので断片的だがおおよその内容は以下の通り。知的生命体は、地球とあまりかわらない惑星「Ybanez」で進化した酸素形生物である。この辺は設定を容易にするため決められていたようだ。高校生たちの指導役は古くからのメンバーのイズラエル氏と日系アメリカ人のタモリ氏だった。この惑星は地球太陽型恒星から0.76AUのところを公転している。Gも地球と変わらない。
 惑星の諸生物を結構作っていた。「KOA'K ROOM」という住居内部の画まである。この「Tank」という生物はなんだったか、恐ろしそうなやつだ。この世界を支配する種族は、古代は洞窟生活者であった。種族は自らをセオリアン(Theolian)といい、宇宙船で地球へと向うことになる。ニックネームは、スパイダーだ。外形は写真のイラストを見ると一目瞭然である。訪問チームは、指導者の「名誉有る頭脳(Glorious Brain)」とよばれる者や生物技術者などなどで構成された。なかにはセキュリティを担当する兵器をもつ者もいる。写真で右手に武器(紙筒)をつけた彼らが見られる。また耳のおおきなマザーと呼ばれる養育者(女性?)たちもいる(写真)。地球へ向う目的は、調査目的だった(と思う)。
 私のノートに Visiting team ---> understandingと書いてあるから。このあたりは時差ボケと疲れであまり記録がない。またあちらのコンタクトの報告書は、われ等がコンタクトジャパンのように立派な仕事がされていないのでないのだ。聞き逃したら最後、担当者に連絡をいれてみるしかないのが現状のようだ。まあこんな形で高校生たちのワールドビルドは、時間切れとはいえなかなか面白い内容だったのである。以前コンタクトに参加された方も同じ感想を述べられていたが、アメリカの高校生たちはプレゼンテーションがうまく成果を多くの画像にしているので理解しやすい。

 後編は筆者のいいかげんな性格が見事に反映されて詳細な報告ができなくなり申し訳ありません。
 CONTACT は、毎年開催されているので参加されて直接体験されてはいかがでしょうか。確かに英語のヒアリング能力は必要ですが、それより時差の睡魔に対する抵抗力と3日間NASAのMacで夕食を我慢できるかということが大事かもしれませんが。朝食と昼はつきます。最後に、同じ昨年ですが9月にソルトレークからデンバーまで1000マイルを走ったとき、ユタ州のモアブという街にはいる直前に通過した道路が、植生を無視すると全く火星の岩山はこうもあろうという見事な赤褐色の大地でして、火星探検に行っているような疑似体験をしました。地球上でさえこれほど異なる場所があるのですから、違う惑星や衛星上の景色などだといくら想像力を膨らませても足らないと思われます。

(大迫公成)