Day CONTACT 6 After Report


 Aチームの創造した多数決至上生物ゼンカイッチ1000名は、近傍恒星への植民中に、Bチームの直立クマ型生物シワイ10名が同じ恒星系にやってくるのを発見しました。レーザーによるやり取りの後の直接接触の結果、両種族は平和裏に一時同一星系内に共存したあとで、何事もなければ別れていくことになりました。

ゼンカイッチ シワイ

 ゼンカイッチは水際を好む両棲生物で、体長約30cmのペンギンに似た体に、ヒレと水かきのある足、象の鼻のように自在に動く尾を持ちます。集団の意思決定に直接参加することが本能となっており、意思決定の際は多数派に従います。議決前に少数派であっても、議決後は多数派に鞍替えし、古い主義は省みません。その結果すべての議決は全会一致となります。意見の相違が発生しえないこと、多産でないことから、種族内には戦争はありません。コンタクトの舞台となる恒星系には先見の探検隊を送った後、約1000人でやってきました。探査の第一の目標は「そこへ行くこと」で、恒星系のほとんどの惑星・衛星に証拠として電波塔を立てていますが、領土として所有しているという意識はありません。移民団1000人は「重大な決断ほど多人数での議決」という価値観からくる、恒星間移民プロジェクトに必要な最低限の人数です。地球に似た第二惑星の大陸の海沿い2箇所に植民を開始し、全員が議決に参加することの象徴としての高さ100mの電波塔と、水路のある平屋のみの街を作り上げたところで、宇宙船が減速しながら接近してくるのを発見し、本星との通信用のレーザー発信機を向けて通信を試みました。
 シワイは身の丈3mのクマによく似た生物で、保守的で猜疑心の強い種族です。しかしこの恒星系を訪れたのは、種族としては異端の特性をもち、好奇心が強く、思慮が浅い個人10名でした。彼らは各々が種族の中でも高いレベルの技術力を持っていました。彼らは母星系で好奇心と思慮の浅さから引き起こした犯罪で種族から追われ、この恒星系へ100年かかって逃げ出してきたのでした。彼らは各個人の興味を満たすことを優先し、集団全体としての目的をもっていません。
 彼らは、反物質エンジンの減速噴射による雑音のため、ゼンカイッチからの通信に気づかないまま、物資補給のためガスジャイアントの衛星に到着します。反物質プラントを作り始めた頃にようやく通信によるコンタクトが成立し、ゼンカイッチが訪問する形での直接コンタクトとなりました。
 議決に影響がある人数がいるかを気にするゼンカイッチと、研究者としての個人の欲求と、物資補給を欲する10名のシワイとのコンタクトは、順調に、あるい意味すれ違いで進み、互いの利害が衝突することはありませんでしたが、一致することもありませんでした。
 ゼンカイッチは、彼らの人数の少なさに気づいた時点で、彼らを重要な存在とみなさず、また意思決定の遅さから、「不自由な生物」であると考えました。ただそこへ行くため「行った証拠を残す」ために、シワイの母星あるいは、次の目的地への同行を(ただし人口が倍になる100年後に)希望して拒否されました。しかし、落胆もしませんでした。シワイの要求は彼らに影響を与えるものではないため、好きにさせることにしました。
 シワイの集団は実は逃げ出したときには残余命が150年程で、人工冬眠技術を使ったとしても300年ほどしか延命できません。にもかかわらず世代を更新する意思も定住の地を求める意思もないので、やがて一人一人と知識を残すこともなく宇宙空間で命を終えていくでしょう。

受信したゼンカイッチの群れの画像データに対抗して、本当は数名しかいないシワイに宇宙船メンテナンス用のロボット群も混ぜて作った送信データ



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