2004年3月27日、兵庫県立西はりま天文台公園内においてAdvance CONTACTが行なわれた。
Advance CONTACTは、CONTACT Japanの合宿企画で時間的な制約や知識不足等の理由で適当に処理していた部分をもう少し深く考察することを目的とし、2002年2月に第一回が行われた。今回は今年の11月に行われるCONTACT Japan 6の企画に向けて異星人の諸設定に関する内容を掘り下げることを主眼とした検討会、また西はりま天文台で今秋に公開が予定されている2m望遠鏡を使用したSETI を計画しておられる文台主任研究員の鳴沢氏の講演、そして予定外の2m望遠鏡の見学、夜には60cm望遠鏡での観望会に参加するなど盛りだくさんの内容となった。西はりま天文台は兵庫県佐用郡の大撫山山頂にあり、交通アクセスは決してよいとはいえない。それでも総勢26名の参加者の方々は(苦労した方もおられたが)定刻までにほぼ現地入りし、13時30分過ぎに天文台内のスタディルームで開会式となった。
開会式のあと恒例の大迫代表によるCONTACT Japanの紹介と、先日アメリカで行われたCONTACT2004の簡単な報告があった。
さて、最初の企画は西はりま天文台の鳴沢真也主任研究員による講演、「2m望遠鏡で宇宙人を探す−光学・赤外線SETIの可能性−」である。鳴沢氏は2002年の3月に同じく西はりま天文台で行ったCONTACT Japan PresentationでSETIに興味をもたれ(!)、ご自分たちでもファースト・コンタクト・シミュレーションを行なわれたそうだ。そしてアメリカでは普通の望遠鏡を使ってSETIが行われていることを知り、このたび稼働する2m望遠鏡を使ってSETIができないかを考えるようになったという。
鳴沢氏はいろいろ調べているうちにフリーマン・ダイソン教授の論文を読み、赤外線を出している天体を探しだしてそれがダイソン球かどうかを調べることができるのではないか。しかしダイソン球からは中間赤外線が出ていると思われ、西はりま天文台の2m望遠鏡は近赤外線用のカメラしかなく探査には使えない。では完全に恒星を球で覆うのではなく、リングワールド(!)形態であれば近赤外線でも検出できるのではないか、と思索を練っているとのことだった。SFをほとんど読んだことがないという鳴沢氏からSFファンには聞き覚えのある単語が次々と飛び出してきて、たいへん面白い講演だった。
講演の後、予定にはなかったのだが、せっかくですから見学しませんか、と調整中の2m望遠鏡を見せていただくことになった。
2m望遠鏡のために新しい3階建ての施設が現天文台の隣に建設されており、つい一週間ほど前にエンジニアリングファーストライトテスト(初受光テスト)が行われたばかりである。観測室の外観はドーム型ではなく、「すばる」のような円筒形だったが、よく見ると髭のような突起がでていたりとなにやらSF的な様相をしている。坂元誠研究員に施設の1階から案内をしていただき、いよいよ望遠鏡本体のある観測室に入る。内部は空調が効いており、上着を着ていなければ寒いくらいだったが、一般人としてはじめて見るという2m望遠鏡を前に参加者はかなり熱くなっていた。公開時には望遠鏡の周囲に柵が設置されるそうだが、我々と望遠鏡を遮るものはなにもなく、直に触れることができた(ここだけの秘密だが、ほんとうに触りまくった。それ以上のこともした)。まだ可視光分光器やCCDカメラなどが設置されていなかったが、ほぼ完成形の望遠鏡を小一時間なめ尽くすように堪能することができた。おそらく一般人でこれほど2m望遠鏡に接近できたのは我々が最初で最後ではないだろうか? 最後に観測室の天井を開閉するというデモンストレーションもあり、たいへん貴重な経験をさせていただいた。この2m望遠鏡であるが、反射望遠鏡として国内で最大(42年振りの更新)となり、一般公開目的の望遠鏡としては世界最大の大きさになる。公開後にはぜひ見に行っていただきたい。
見学の興奮も冷めやらぬままスタディルームに戻り、本企画である「FCSに必要な異星人の設定項目の考察」を開始した。前回のCONTACT Japan 5分科会での検討結果をもとに、さらに具体的に煮詰めていき次回のCONTACT Japan 6の企画に役立てようという目論見だったのだが、検討内容を絞り込むことができず少し散漫な話し合いとなってしまった。それでも「メンタリティ確認テスト」のような具体的なメソッドも提案され、成果はあったと思う。
夕食を食堂で済ませた後、最初の夜企画は天文台での観望会である。これは西はりま天文台公園の宿泊者を対象して行われているもので、我々の他に中学生の団体や一般の方々も一緒になるのでかなりの人数になった。昼間は晴れてはいたものの薄雲がかかっていたが、夜が更けるにつれ雲は晴れていき十分な観測日和だった。われわれはまず2Fのベランダ「スタープラザ」で屈折望遠鏡を使って月面を観測。昼から夜になっていくグラデーションがたいそう美しかった。東方最大離角に近い金星も観測し、はっきりと半月形の金星を観ることができた。そして60cm望遠鏡の観測室に行き、土星、木星を観測。カッシーニの間隙やガリレオ衛星に参加者一同大満足であった。
観望会の後は全員宿泊棟に移動し、夜企画を行った。2m望遠鏡の見学で時間の足りなかった昼の検討会の続きを行う、はずだったのだが、畳の上で車座になって話しているうちに、お酒も入ったせいもありフリートークになってしまった。
いつ終わるともしれない宴会の始まりとともに、Advance CONTACT 2 は終了した。講演概要
今回Advance CONTACT2では、西はりま天文公園の主任研究員の鳴沢さんに講演していただきました。内容は今から彼が西はりまの2m鏡を使ってやろうとしているSETIの計画についてです。
最近、海の向こうでは電波によるSETIよりも光によるSETI(OSETI、おせち、って読むのか?)が流行だそうです。理由は
- 電波よりもレーザーの方が沢山の情報を載せられる。
- 瞬間的であれば、現在の技術でも太陽よりも明るい光が出せる。
ということらしいです。
それでレーザーなら2m鏡でいけるだろうということでいろいろ調べると、やはりナノ秒くらいの時間分解能が必要だろう、と。ところが、これが高い(10億くらい!)ので、ちょっと予算的にはしばらく無理。
それでは2m鏡に取り付け予定の赤外線検出器で何かできないかと調べていると、赤外線でダイソン球が探せることが判った。
ダイソン球探しは、10年くらい前に寿岳先生(西はりまではJJとファッション誌みたく呼ばれているそうな・・・あ、これはナイショって言われてたんだっけ)らが G-K-F型星を中心に調べたことがある。ところが、最近もっと暗いM型星にも生命がいる可能性が指摘されてきたので、今回はまだ手つかずのM型星を中心に調べる。
ただ、波長の関係で見つかるのは、完全なダイソン球ではなく、リングワールドやダイソン・パレット(惑星クラスの人工天体)かもしれない。
また、食連星のデータを洗い直してそっちからも、ダイソン天体を探してみよう。
とりあえずは蠍座の怪しい赤外線星、コードネーム「さそりの毒針」が標的。・・・ちゅうよな話でした。ダイソン球探しは日本では今彼だけ。世界でもリングワールドを探そうとしているのは彼だけじゃないかな。がんばってほしいです。
それにしても鳴沢さん、SETIをやってみたいと思ったのは、前に我々とFCSをやったからだそうで、若い才能をイバラの道に引き込んだような気がして、(ちょっとだけ)心が痛んだのでした。(伊藤俊治)