第43回日本SF大会 G-CON

 日本SF大会では久々に、G-CON で FCS企画を行ないました。今回は、CONTACT Japan 1や i-CON の企画と同様の、

異星人側は、異星人と自分たちの住む惑星や恒星系の設定を行う。
地球人側は、宇宙船を設計し異星人の住む恒星系を訪れる。
地球人の代表と異星人が異星人側の星系でコンタクトする。

という形式です。
 この形式は、ファースト・コンタクトをできる限り真面目にシミュレートしようという面からすると必ずしも最適とは言えないものの、もっともシンプルでSF大会のような短時間の企画や CONTACT のすべての要素を体験するには適した方法です。

 またゲストには野尻抱介さん、林譲治さんにそれぞれのチームで参加していただきました。

G-CON FCS企画 After Report


 現在、この惑星上には100を超える国境で仕切られた国が存在しますが、それとは別に様々な文化を有する人間があらゆる地域に暮らしています。通信手段の発達した今日、我々人類が交信し理解しあうことは、昔に比べれば格段の進歩を遂げ、科学技術によって大きく改革されつつありますが、未だに民族、宗教、領土、主義などによる争いが絶えないのも事実です。精神文化面では、殆ど古代から進歩がみられないという意見もある程です。
 あなた自身とは異なる文化を理解し許容できうる精神こそ、これからの地球文明を存続させていくのではないでしょうか。
 あなたはわけもなく「あの国は…」とか「あのひとたちは…」などと言っていませんか。
 私たちが実施しようとしているのは、純粋に科学として「異文化間に橋をかける」ための行動をシミュレートしてみようという企画で「CONTACT」もしくは「ファースト・コンタクト・シミュレーション(FCS、First Contact Simulation)」と呼ばれるものです。
 今回の企画では参加者が宇宙人側と地球人側に別れ、文明間のファースト・コンタクト(最初の接触)をシミュレートします。 異星人文明の存在は確認されていませんから、我々自身が異星人文明を構築します。
 普通は3日かけて行うイベントを3時間でやってしまおうというので、かなりの簡略版となります。
 フルに企画に参加して濃厚な3時間を堪能するもよし、意思決定に参加はできない代わりに好きな時間に好きなだけ見学できる見学者として参加するもよし。どちらでも十分堪能できると思います。見学は随時可能で入退出自由ですので、ちょっと興味のある人は、ぜひ一度覗きに来て下さい。


第43回日本SF大会 G-CON のページ

 

 

地球人側
 歴史的な経緯により、未知の存在と遭遇した場合は最初にコミュニケーションを成立させたチームが所属する組織が交渉を完全に独占することが認められている社会だった。そのため、知的生命からのものと思われる信号を受信した地球では多くの集団(国家、企業、宗教団体、金持ち)が、発信源である恒星系に 向けて、危険度度外視・片道のコンタクトチームを送ると言う状況になった。
 地球人側チームが代表する国家では、1.5世代型と呼ぶ宇宙船に、小学校低学年程度の子供5名と30代の大人2名を乗せ出発した。50数年の航行の末に、10光年離れた恒星系に先着させることに成功した。
 コンタクトが成功すれば、国家は彼ら7名を国家英雄と称え、彼らの子孫や兄弟たちを優遇したに違いない。

異星人側
異星人のイメージ図 異星人の住む惑星の主星は変光星であり、そのことが彼らを悩ませていた。
 恒星の状況を改善しようとしたが、逆に失敗してしまい(彼らの観測によれば)数百年以内に恒星系は居住不能になってしまう結果となった。まだ恒星間航行能力を持たなかった彼らは、自分たちの持つすべての情報をすべて周囲の恒星系に向けて送り出すことで宇宙のどこかに自らの存在した歴史を残そうとしていた。

交渉
 異星人側にとっては、すべての情報はすでに送ってある。当然ながら地球人は、近いうちに恒星系が居住不能になると知ってわざわざ訊ねてきたと考えている。しかし地球人は、情報を詳しく解析するよりも先に到着することを優先してやってきたため「まずは、交渉権を得てから」と考えている。
 そのため、恒星間航行能力をもった地球人に自分たちの種族の存続を期待する異星人と、細かい状況は知らないままに異星人との交渉権獲得により将来的に利益を得ようと画策する地球人の交渉は最初からかみ合わないものとなった。

結果
 言葉はそれなりに通じる、お互いに交渉の意志をもっている、 相手を攻撃したり騙したりするつもりもない。という好条件ながら、意思の疎通をはかるのはやはり難しかったようである。

(阪本雅哉)