Education CONTACT After Report

 2005年01月29日にEC(Education contact )を、アミューズメントメディア総合学院・大阪校ノベルス科の生徒を対象として行いました。
 さて、ここからは誘致した側の講師として話を進めていきます。
 ECそのものは同校で2003年にも行っていますが、2年制なので生徒は全て入れ替わっています。
 今回はコンタクト・シミュレーションというものを全く知らない19歳から22歳くらいの生徒達に、当日集合するまで何があるかも知らせず、敢行致しました。
 予備知識を入れなかったのは、前回の開催時に大まかな内容を説明したところ、半数近くの生徒(特に女子)が「科学やSF、異星人なんて私には関係ない」という情けない理由で欠席したからです。
 私はコンタクト・シミュレーションというものを知った時、これは生徒達に体験させるべきものだと思いました。
 将来、小説家になろうという大望を抱くからには、知的好奇心は必須と言えます。
 また、どんな事であろうとも体験出来ることは何でも体験して欲しいと願っています。
 今回の場合、具体的に体験して欲しかった事は、以下の4つでした。
・文系であっても基礎的な科学知識は必要であること。
・自分達がいかにモノを知らないかという自覚を持つこと。
・論理的な思考を重ねるとはどういうことか、自分も参加し、具体的なやりとりを通して体感すること。
・プレ・コンタクトやコンタクトを通して、相手の考えを相手の立場で考えたり、どう交渉するかを模索すること等でコミュニケーションの面白さを学ぶこと。
 これを読んだ方々は奇異に思われるかも知れませんが、嘆かわしいことにうちの生徒の大多数は、成長過程で上記の事に気付く経験をすることなく、現在に至っております。
 そういう経緯で、今年は40名近くがECに参加しました。
 生徒はA・B・C・Dの4グループに分け、各グループ毎に発言の呼び水役となるようDC(Day contact)経験者の卒業生や講師を一人混ぜ、グループ構成も普段の発言が活発な子、普通の子、消極的な子が偏らないよう割り振りましたが、Dグループから大量に当日欠席者が発生し、Dグループだけはグループ編成がうまく機能せず、スタッフ側に進行上の負担を強いてしまいました。
 この点については今後の課題としたいと思っています。
 グループ分けが済んだ生徒達は各教室に移動し、CONTACT Japan 6でも使用された「生物設定クジ」をひき、自分たちが何者であるかといった基本的な設定に取り組み始めました。
 最初は何をするのかさえ分かっていなかった生徒達ですが、意見を出し合って議論したり自分の意見が多数決で採用される事に喜びを見いだす者も現れ、スタッフの巧みな誘導もあり、企画は何とか進行していきました。
 午前10時半に開始した企画は、午前中に50分と30分、お昼休みを挟んで午後に30分と50分の4回に分けて設定が行われ、AグループとBグループ、CグループとDグループがプレコンタクトを終えたのは午後4時過ぎでした。
 そして午後4時半、コンタクト開始です。
 植物型の異星人であるAグループと光でコミュニケーションをはかる異星人のBグループは、Aの使役動物がBの光で洗脳されるなど、動きのあるコンタクトになったようです。
 また慎重で引っ込み思案な性格のCグループと好奇心旺盛で出たとこ勝負なDグループのコンタクトは、予定された時間を超えてもコミュニケーションを取るべく努力を重ねましたが、結局、時間切れで幕引きとなり、両グループとも残念がっていました。
 コンタクトの途中に生徒の一人が体調を崩し、そのケアに回った為、私は最後まで見届ける事が出来ませんでしたが、後日、生徒達に感想をきいたところ、またやって欲しいという声が多数あがり、手応えを感じました。
 コンタクトの魅力の一端は伝わったように思えます。
 スタッフとして参集して下さった皆様、本当にお疲れ様でした。
 いつもとは違う参加者層にスタッフ側も戸惑いを隠せなかったようですが、是非ともまたEC開催へのご協力をお願い致します。
 ありがとうございました。

(北山しお)

Aチーム

 まず最初に「設定カード」を3枚引いた。その結果、

  • 無骨格。
  • ある程度大きくなるまでは子どもと見なさない。
  • 雌雄同体。

が選ばれた。しかし参加者はこれを見てもあまりピンと来ていない様子。そこでまずは「無骨格」に着目して、地球にいる「無骨格の生物」を挙げてもらうことにした。すると「イソギンチャク」「タコ」「クラゲ」「ナメクジ」「ヒトデ」「植物全般」「シリコン(珪素)系生物」「アメーバ」「スライム」「ミミズ」などが挙げられ、これらを片端から大迫先生が描いていく。意外とたくさんあったようで、なかなか一つに絞れないであろうからということで、「この中で自分がなりたい生物を選んでください」と呼びかけ、何度かの多数決を行った。その結果として我々は「植物」ということになった。
 しかし問題はこの後だ。植物となると「どうやって宇宙船を造るまでの文明を発達させるのか?」が大きく問題になる。やはり自分で動くにはいろいろ無理があるとの考えから、使役動物を用意し、それを操る手段なども必要となるだろう、と議論が進んだ。そこでいろいろ出た特徴の中からチョイスして自分達の特徴を各人に設定してもらい、全員に発表してもらうこととした。そしてその中で最も多かった特徴や設定を取り入れ、今回の自分たちの姿と能力を決定した。もちろん、少数派で外れてしまった人たちには「自分の作品でその設定は活かしてください」と告げることも忘れない。
 以下、設定された異星人の視点で紹介してみたい。

 我々の名前は「カブラ」。これは自分たちを数える単位が「1株、2株」と呼ぶところから来ている。植物が進化して知性を持った知的生命体といえるだろう。しかし他の植物と異なるのは、根を自由に動かすことが出来、ちょっとした移動なら自分の力で行うことが出来るという点だ。またもっと遠くへ移動したい場合、そして何よりも自分たちの住環境を整備するために、フィトンチッドや樹液(プログラム樹液と我々は呼んでいる)を使用して知性を持たない動物たちを使役する方法を、進化の果てに身につけた。
 とはいえ、生まれつきそういうことが出来るわけではない。我々は今でも昔ながらの方法、種から発芽するという方法で繁殖を行っているし、最初は大きく成長するだけで手一杯である。やがて身長が大人と同じ10mほどになり、移動できるようになると初めて「子ども」となる。そこから訓練所で使役動物を使うための訓練を受け、資格を取得してやっと一人前の大人と認められるのだ。「年輪を重ねる」ことが重要なのだ。もちろん使役動物は1種類ではないし、それぞれにあったフィトンチッドや樹液を作り、発散したりしみ出させたりしなければならない。当然個体個体により向き不向きはあるので、使役できる動物が何であるかによって職業は決まる。向き不向きがわかれば、その職業に就いている株が、子どもを教育する。
 我々は使役動物を使役しているが、我々の望むことをやってもらう代わりに彼らを養っている。一方的な使役と言うわけではなく、「共生」と呼ぶに近い状態である。彼らも我々が過ごしやすい環境にあれば、当然得られる養分は質、量ともに向上するわけだからだ。
 余談だが使役動物の総称は「カブモン」。従って新たな使役動物を獲得したときには「カブモン、ゲットだぜ!」と言うかどうかは定かではない。

Bチーム

 Bチームの制約条件は下記のものであった。

  • 左右対称。
  • 植物や動物を捕食する。
  • 発光する。
  • 惑星重力環境下でないと正常な発生が行われない。

 これらの条件を元に、生物設定を開始した。「左右対称」や「捕食」は人間と同じで、ある意味特徴になりにくかったためか、「発光する」を中心に基本特性が検討された。

  • [基本特性]
    • 陸生生物である。
    • 夜行性であり、光を利用して獲物を捕らえる。
    • 休眠をとる。
    • 体長は1~2m。
    • 捕食に便利な牙と、身を守る鱗を持つ。鱗があるため、成長するためには脱皮を行う。
    • 雑食である。
    • すばやく動けて、身軽である。
  • [外観]
    • 子供・雄・雌で若干外観が異なる。
    • 各々を図で示す。
  • [感覚器官]
    • 目(視覚)、嗅覚、音。
  • [コミュニケーション手段]
    • 足の先端近傍上部にある発光器官が発する発光パターンで会話する。
      体の上部にある管状器官から、発光する金粉を放出することができる。これもコミュニケーションの手段となる。放出された金粉は短期間で発光しなくなる。
    • 上記管状器官は、金粉を放出するため、呼吸器官を有している。この呼吸器官を利用して音を出すことができ、コミュニケーション手段の一助としている。
    • 発光によるコミュニケーションは夜はわかりやすいが、昼はわかりにくい。そのため、以上のコミュニケーション手段を昼夜でうまく使い分けている。
  • [ライフサイクル]
    • 子供は無性である。
    • 1対1のつがいとなり、雌雄が決まる。このとき決まった雌雄は一生変わらない。また、つがいは基本的に、一生同じまま維持される。
    • 出産は一生に1度だけで、生まれてくる子供の数は少数である。
    • 出産後は雌が子育てを行い、雄は社会奉仕に従事する。他の雌とつがいになることはない。
  • [文明を発達させた大きな理由]
    • 脱皮期間中は無防備となるので、安全に住むための住居建築が必要だった。
  • [宇宙へ出ていった理由]
    • 移住。
    • なお、宇宙船内での生殖が不可能なので、到着後に生殖可能となる年齢の子供を連れていく必要がある。
    • 移住できるかどうか判断するための探査は、出産期を過ぎた成人(ある意味老人)のみで行った。

Cチーム

 Cチームの異星人に対する制限事項は以下の通りであった。

  • 同じようなユニットがつながってできている。
  • ある程度大きくなるまでは子供と見なさない。
  • 植物や動物を補食する。
  • 変態する。

 この制約条件より以下の様な生物が設定された。

  • 群体生物であり、複数の個体が体側にある接続肢で結合している。この接続肢を経由して各個体間で、情報および栄養のやり取りが行われている。このため群体内では意識の共有がなされている。状況に応じて各個体を分離・再結合することも可能である。
  • 各個体の全長はおよそ1m程度であり、頭頂部より見た形状はほぼ正方形であり、側面からは鏡餅をのせた四角形といった外見である。足は4本で下腹部に生えており、同様に下腹部中央にある口へ食物を運ぶことができる程度の器用さを持つ。
  • 目は頭頂部に2つ左右対称にカメレオンのように飛び出した形状でついており、広範囲の視野を持つ。
  • 卵生で一度の出産でおよそ1万個程度の卵を海中に放出する。孵化した幼生はおよそ3年程度海中で生活し、その後変態して成体となり陸生生活となる。
  • 陸上へ戻った成体は群体の一部となる。寿命はおよそ20年であるが、コンタクト時点では文明の進歩にともない平均寿命は40年程度に延びている。
  • 群体は1000個体前後で構成され、その一部(20~30個体で構成)が分離し狩猟を行うことも可能である。
  • 性格は慎重で、群れることを好む。ただし知識欲は旺盛であり、群体の一部が冒険を行い母群体へ戻って情報の共有を行うことにより、群体としての知識を増やしている。
  • 自他の区別はあるものの、知識は共有される。

 またコンタクト当時の彼らの社会は以下のようになっている。

  • 文明レベルは地球の22世紀相当レベルであり、特に生物学の分野での発展が特化している。
  • 母星では各群体同士も直線状に連結した個体同士により結合され、惑星レベルでの群体が構成されている。
  • 母星より10光年離れた恒星(コンタクトの舞台)に惑星が存在することが発見され、探検と調査の目的で30個体程度からなる群体を載せた有人宇宙船により該当惑星へ航行中であり。航行時間はおよそ100年程度であり、移動中は乗員はコールドスリープ状態となていた。
  • この宇宙船以降も後続する宇宙船がすでに出発しており、約10年後に到着する予定である。後続する宇宙船がこの恒星系に到着した時点で、現在の調査隊は母星へ向けて帰還の旅に入る。探検隊の最大の目的は母星の群体へ、この恒星系での体験した情報を持ち帰り共有することにあった。

Dチーム

 前提条件は

  • 前後対称。
  • 色盲。
  • 他の準知性生物がいる。

の3点。
 種族の名前は「ウミツキ」。姿は、お椀を伏せたような形に前後に目がそれぞれ2個と触腕1本ずつあり、腹側に脚がはえている。大きさは高さが1m、前後に1.5m、幅が0.5m程度、寿命は300年程度。
 準知的生物の名前は「ヤマぁダ」で、形はヒトとサルが似ているくらいにはウミツキに似ている。ただし大きさはおよそ半分程度しかない。寿命も半分程度で知性のレベルも半分。
 ウミツキにとっては便利に使用できる、道具とか使役動物としてあつかわれている。たぶん知性はあるけど、自身の意思は無いのだろう。
 特徴としては、とにかく好奇心旺盛で細かいことは後から考える。また好奇心を持って楽しむことは行動の最大優先順位となっている。
 ヤマぁダへの扱いからも分かるように、他の知性体を大切にしようとする感覚に乏しい。ウミツキどうしの集団の場合でも、まれに集団に属する個体が他の集団に捕獲されたりするが多くの場合には気にしない。
 自分たちに危害を加える「敵」が存在することは想定していない。もしも、結果として危害を加えるような未知の生物が居た場合には

  1. 好奇心をもって観察に行く
  2. 襲われて、吃驚する
  3. 集団で抵抗する
  4. 戦うとけっこう強い
  5. 勝った場合、対象は自分たちの所有物として扱う

といったパターンを取るだろう。
 惑星Xには、すでに開発されつくした母星ではできない、何かをやって楽しむために未開(もしくは未知)の地でヤマぁダを使って、実験やその他楽しいことをやろうと考えた集団がやってきた。
 基本的に趣味や目的を同じにする団体でやって来ているため、惑星Xへの往復の時間(全人生の30%を越える)は負担にはなっていない。
 さてこんな後先も考えない自分たちの能力も知らないような連中が、生存競争を生抜き、文明を築き、恒星間開発に乗り出すことができるのかどうかは誰にもわからない。
 こんな性格だから、惑星Xに別の異星人がやってきたときに効率とか相手の意思や自分たちの能力も考えずに追いかけまわしたのはしかたないことですが、そ
れなりに考慮された異星人たちには気の毒だったかもしれません。