天ちゃんの・徒然草子
夢・1

天羽[司法行政卿]孔明

みなさんは“悪夢”にうなされて夜中に目をさますなんていう経験はありますか? ぼくはですね、小学校の低学年の頃は頻繁にあったんですが、4〜5年生になった頃には、もう夢を楽しむようになっていたので、“悪夢”もまた、ぼくにとっては喜びでしかなかったんですね。“悪夢”見たさに、わざと胸の上で手を組んで寝たりしていたほどです。友人や相方にも、「あぁーあ、なんとかして極めつけに怖い“悪夢”が見てみたいもんだ」なぁーんてうそぶいていたほどです。そんなわけですから、よもやこの齡になって“悪夢”にうなされるなんて事があるとは、それこそ夢にも思っていませんでした。うんうん。
 前置きはこのぐらいにしまして、本題に入りましょう。
 その“悪夢”を見たのは、昨年の夏の事です・・・。

 ちょっと気分が悪かったので、隣の部屋にいる相方に言って、いつもより少し早目に寝たんです。たしか、PM10時頃だったと思います。
 そして、夢を見たのです・・・。
 最初の夢は憶えていません。とにかく、なんだ奇妙な夢を見て目をさましたんです。変な夢だなぁっていう思いはあるんですが、それがどんな夢だったのか、全然思い出せません。そのうち、さらに奇妙な事に気が付きました。なんだか、部屋の様子がおかしいんです。自分の部屋のはずなのに、知らない部屋なんです。知らない部屋のはずなのに、よく知っている部屋なんです。ん? ん? ん? で、気がつきました。どやらまだ夢の中にいる事に・・・。
 みなさんは、夢の中でさらに夢を見たり、あぁこれは夢なんだって気がつく事ってありますか? ぼくは、過去になんどかその経験がありますので、あぁこれは夢なんだって気がついた途端に、すぅーっと意識が遠くなって、で、目がさめたんです。
 枕元に置いた時計を見ると、AM3時。変な夢だったなぁっと思い、取り敢えず起上がろうとしたんですが、どうも金縛りにあったように、身体が動かないんです。身体が動かず、もちろん頭も動かせないのに、どうして枕元の時計がみれたんでし
ょう? おまけに、自分の足元まで見る事が出来るんです。変です。どう考えても変です。どうやらこれも、夢の中のようです。こんな経験は初めてでした・・・。
 そして再び、目をさましたのです。この段階で、それまでの夢の記憶がありましたから、まっ先にこれは夢だろうかと疑いました。まず、時計で時間をたしかめます。枕元には時計なんかおいていないので、部屋の右にあるビデオのデジタル数字を見ます。04:32だったでしょうか。部屋の電気を点けようと、手をのばしました。でも、電気のコードに手が届きません。そこにコードが見えているのに届かないのです。おもいっきり手をのばしました。それでもコードに手が届かないんです。それもそのはず、ぼくは手をのばしていなかったからです。
 えっ? と思いました。どうやらまだ夢の中にいるという事に気がついたんです。はっきりと恐怖を感じ始めました。しっかりと目をつむるんですが、まだ部屋の中が見えているんです。それも、全然知らない部屋の中がです・・・。
 ふたたび、目をさましました。全身にびっしょりと汗をかいています。パニック
っていますので、時計を見るなんていう余裕はありませんでした。夢だろうか? これも夢の中だろうか? とそればかり考えていました。とりあえず、声を出して隣の部屋にいる相方を呼びました。大きな声を出して、相方を呼びました。でも、隣の部屋の相方は、ぼくのその呼び声にまるっきりこたえないんです。それもそのはず、ぼくは声を出していなかったのです。ここで、はっきりと恐怖を感じました。どうなっているのかと、必死で声を出したのです。で、その声が出た時に、ぼくは目をさましたのです・・・。
 天井を見ながら寝ていました。見覚えのあるぼくの部屋です。
 ゆっくりと腕時計を見ました。アナログの針は、12時30分を差しています。
 腕時計をはめたその手で電気のコードをひっぱりました。
 部屋に灯りが点きました。
 ゆっくりと上半身を蒲団の上におこしました。
 ビデオのデジタル時計も、蒲団の左右に置いた時計も、腕時計と同じ時間をさしていました。
 本当に目がさめたのだろうかと疑うのさえ怖かったんです。
 全身に、寝汗をかいていました。
 とりあえず自分の部屋から出ると、隣の相方の部屋の灯りがまだ点いていました。
 相方の部屋の扉をあけると、相方は蒲団の中で本を読んでいました。ぼくの顔を見るなり、「どうしたん? 変な顔して。寝てたんとちゃうの?」と聞いてきました。
「うん、寝とってんけどな、ちょっと変な夢を見てん・・・」とこたえました。
「今何時?」とぼくが聞くと、「12時半」と答えてくれました。
 とりあえずそれ以上相方と話をするのをやめて、一階へおり、冷蔵庫から麦茶を出して呑んだあと、手洗で顔を洗いました。
 まだ変な気分でしたが、考えるのも怖かったので、そのまま2階へと上がったんです。 この時は、もう相方の部屋の電気は消えていました。
 相方の部屋の扉をあけ、もう一度声をかけてもよかったのですが、それをせず、自分の部屋へともどりました。そして、夢の事は考えないようにして、もういちど蒲団に入って寝たんです。
 二つある目覚し時計の音に目をさましますと、朝の7時です。窓から朝日も差しているから、ちゃんと朝なんでしょう・・・。
 とりあえず一階に下りますと、台所で相方がぼくの弁当を作っていました。
「なぁ、夜中にぼくあんたの部屋に顔だしたやろ?」っと聞きますと、「うん。なんか変な夢見たとかいってたなぁ・・・」っとこたえてくれました。
 ここでようやく最後のあれだけは夢の中じゃなかったんだという事がわかって、ぼくは胸をなでおろしました。で、相方に、「ゆうべぼく、すっごい怖い夢みてんでぇ」っと事のあらましを語って聞かせたんです。で、最後までぼくの話を聞いていた相方は、「ふぅーん、ほんで、なんでここが夢の中ちゃうって思うの?」なんていうんですよ。でもこれは、自信をもって「今は夢ちゃうわい」って言ってやりました。相方は悔しそうに、「くそっ、そうと知ってたら夜中に私の部屋に来なか
ったよって言ったらよかった」なんて言うんですよ、ひどいでしょ・・・。
 でもね、もう本当にこんな夢だけは見たくないです・・・。こうして書くとたいした事ないみたいだけど、本当に怖かったんですから・・・。

 では、今回はここまで。次回は、絵の事でも・・・。

 「ミッドナイト・ジャズ」のビデオを見ながら・・・。

1995.06.10, AM,02:55.



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