石飛卓美の教祖を目差せ

「今からこの部屋では<石飛卓美の教祖をめざせ>が始りま〜す」
「もっと女の子を呼んでこい!ここはいまから始まるから、死んでる部屋から呼んでこぉい!」
「呼んできま〜す!」
「これからですね(コホン)教祖を目指せ、という企画を始めます。まず第1章として、<生駒山系民俗宗教事情>から。
「生駒山ちゅうとこは凄い。どんだけ凄いかっちゅうこと、知ってますか」
「神様のスーパーマーケット!」
「そう、その通り。そもそもこの辺に、神社仏閣が新興宗教を入れて全部でいくつくらいあると思います?]
「新興宗教を入れると600も700もある筈ですが」
「正解!約600あります。それでは年間参拝者はいくらか?
「15万人」
「300万」
「いいや、両方とも離れすぎ」
「100万?」
「まあ、そんなものですね。正解は90万人。ところでそのうち、なんと30人に1人が宗教関係の活動家か、教祖か、霊能者なんです」
「ほおお〜っ」
「明日オプションツアーでこの辺歩きますが、その時30人見たら1人がそうです」
「石を投げたら霊能者に当る」
「そう、そういう世界です。数は日本一です。なるべく人とあったら、にらみつけないように。指でささないようにしてください。
「さて、今日はいまから皆さんに宗教をつくってもらおうという企画なんですが……」
「私にも宗教がつくれるんですか?」
「できる!誰にでもできる。
「で、30人に1人はおるという霊能力者、(ここ生駒に)最低3万人はいることになりますが、その7割は女性です。とはいえそのうちなんらかの霊能力を本当にもっているのはさらにその2割か3割」
「多いやん!」
「金縛りにあうとかしょうもないのも含めてですけど」
「女性といってもおばあちゃんが多いんでしょう」
「うん、おばあちゃんが多い。50代以上、30〜50代の女性が多い。20代からだと非常に強力な霊能力者になれる可能性が高い。
「ところが強力な霊能力者、万人が認めるくらいとなると1割くらいしかいません」
「ところで生駒山系の宗教が600あるとしますと(実数は)その3〜4倍あることになります。
「宗教法人というのは、信者の数が数十人というのと200人以上というのと、2つに分類されてる。 ほんとに零細な数十人と言うともうほとんど<家族内宗教>です」
「家族内宗教?!や、やるなぁ」
「そう、家族内宗教。一家と親戚と近所の人をかためたものと。200人以上となると大規模ですね。 ところが<零細>団体は、数が非常に多い」
「数十人の方はやっぱりつぶれてしまいますよね」
「そう!すぐつぶれる。つぶれるけど、次から次へとたつ。どうしてか?
「なぜ(宗教法人に)メリットがあるのか。日本国憲法に信仰の自由が保障されている以上、誰も文句が言えないんです。
「あのホメイニ君が『悪魔の詩』で死刑を宣告したでしょう。イスラム教は政教一致で制裁を加えても かまわない。陰山君が『S年F組』でイスラム教をからかうネタをふったが、もしホメイニに伝わったら処刑されてるかもしれない。しかし日本やアメリカでは政教分離だからそれはできない。だから新興宗教をどんどんつくれる。
「なぜ宗教で喰えるのか?
「まず税率が低い。お布施はいくら貰っても、(税が)全くかからない。リクルートから貰っても関係無い。消費税もかからない。宗教活動のための土地 を買っても建物を建てても、不動産取引税も固定資産税もかからない。家を建てて自分が住んでも、寺だ!といえば、税はかからない」
「うちもそうしてま〜す。あ、あんまりいうと親に怒られる」(編注:この発言者の家はお寺です)
「しかも収益事業をしても良い。お札を売る。壷を売る。それらにかかる税金は一般会社42%に対して27%だけ。相当な金ですね。儲かるのは、当たり前。儲かってしょうがない」
「質問。宗教法人でも赤字を出すことありますか」
「うちはあります」
「やり方によるんです。古くからのしがらみがあるところより新しいとこの方が儲けやすい。例えば、解散して、すぐまた作って、同じことをする」
「そうか。『天下一家の会』も宗教法人にしておけば罪に問われなかった!」
「そうです」
「そうだったのか!ベルギーダイヤモンドも」
「途中からしようとしたのが間違い」
「そこで、いよいよ次は宗教法人を作る方法!その法律手続きについてお話ししましょう。
「これは実に簡単。3人以上の成人の責任役員と代表者の名前、本拠地と、内容を、法務局に登記するだけでいい」
「(責任役員は)家族でもよい?」
「そうです」
「有限会社と一緒ですね」
「そうです。それと都道府県知事か文部大臣の許可が必要。文部省の文化庁・宗教法人審議会で許可して貰うだけですが、これはよっぽどでない限り許可されます。実に簡単である。そうして出来てしまうとこういう色々な『イイコト』ができる、と」
「教義・教典・信者の3原則はなくても成立するんですか?」
「そんなものは登記の段階のでっちあげでいける。」
「で、でっちあげ……?!」
「そう。でっちあげで充分です。こういう風に宗教法人というのは簡単にできてメリットが多いんですよ。会社をつくるのは資本金が必要ですが、教祖には必要ない。教祖には誰でもなれて、会社の社長よりも簡単に儲かる!」
「教祖には誰でもなれるんですか?」
「そう、誰でもなれる。特に能力とか財力とかはいらない」
「霊能力は?」
「実は別にいらない」
「いらない?」
「そう、そこです。実は教祖にはたったひとつ必要なものがある。『カリスマ性』が若干……いや若干以上必要なんです。演技でいいんですけどね」
「だますんですね」
「そう。そのためにもカリスマがいる。
「カリスマには2種類あります。ひとつは『恫喝的カリスマ』。田中角栄的というか、政治家に多いタイプですね」
「恫喝というと、いきなり人の家に飛込んできて、『この家は呪われてます。3代前の水子を殺した霊が祟ってます。この壷を買わなくては祟られたままです』と」
「そうそう。そういうのが教祖の条件、というかひとつの類型です。さてもうひとつは、どうです、皆さんわかりますか?」
「相談相手になってあげる。豊田商事式の親身になる、というか、慈愛的なものは?」
「それでは弱いですね。訴えかけるものが弱い。」
「みただけで恐い、と思うもの。それは『人間離れした恐さ』です」
(参加者一同どよめく。石飛氏をはじめK君、S氏、M氏、T氏など該当者であるなぁとの声しきり)
「いつも鼻水をたらしながら、えへらえへら笑ってばかりいる、と。特にもともとまともな人が突然神がかりになってそうなると、一番恐い。実はそれが新興宗教として一番ウケる」
「そういうふうになってしもたら誰か仲介者が必要ですね」
「そうそう、それ!カリスマ教祖には仲介役が必要になってきます。新興宗教が大きくなるときには実は教祖だけでは駄目で、それ以外にも様々な役職が必要です。実務面の責任者とか布教の特攻隊長とか。今日用意してある「霊力判定新テスト」は、そういった役職適性まで診断しようという試みだそうですが……そろそろ始めますか?」

ジャムナ




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