CONTACT Japan 3 異星人設定資料

星系

恒星

 南方の星、82エリダニにある。
 地球から見るとやや弱々しい光の4.3等星であり、時計座(Horologium)と炉座(Fornax)のそばにある星座のちょうど歪曲部分に存在し、20.9光年の距離にある。*(1)
 恒星は我々のものと似ているG5タイプである(太陽はG2)が、質量が太陽の0.9倍と小さいため太陽ほど明るくない。直径も太陽の0.87倍であり、約1,210,500kmである。可視光の光度は太陽の0.67倍であるが、電磁放射光度(特に赤外線を含む全輻射)は0.74倍である。我々の想像上の世界ナユリンからの角直径(視直径)は約28'で、地球から見た太陽の0.95倍である。人間の目は、この太陽の光を基本的に太陽に似たものとしてとらえるが、紫外線はもっと少ない*(2)。太陽風も、少なくとも概算では、これに比例して少ないと考えられる。太陽風の強さは太陽がそうであるように振幅にとむが、ナユリンの磁場がこれらの変動を基本的には遮断する。この惑星系からみえる星座は大部分は太陽系から見えるものと同じであるが、いくつかの小さな、しかし目につく違いがエリダヌス座と近隣の星々で見うけられる。太陽は竜座と牛飼い座の間のよく目立つ星(3.9等星)である。
 恒星がナユリンの北の空で見えるとは限らず、軌道面の傾きと回転軸の傾きによって変化する。

惑星

 いくつかの恒星に対し非常に近い軌道をえがいてまわる巨大惑星の発見は天文物理学の概念を根本からくつがえした。この現象を説明する統一のとれた納得のいく理論はまだあらわれていない。人々はこのような巨大なガス惑星は、恒星の近くに誕生することはできないという意見に今でも賛成するだろう。しかし、巨大ガス惑星は明らかに恒星近くを動くことができ、たとえそれらが非常に高温になっても、それ自身の重力によって質量を失うことを防いでいるのである。恒星近くの軌道をとることについての説明には、原始的な塵雲内の共鳴や、多くの微惑星体の重力による影響について述べたものもある。いずれにせよ、もともとの内惑星はおそらく太陽に落ちてしまったのであろう。結局、このような現象がおこる原因の要素としては「もともとの内惑星が太陽に吸収されてしまった」ことと、巨大ガス惑星の軌道が安定したことがあげられる。この現象は我々の太陽系の創世初期段階でも起こる可能性はあったと思われる。そうだとすれば、我々の太陽系では軌道の安定は比較的早く起こったのであろう。なぜなら、我々の太陽系には今だに四つの内惑星があり、巨大ガス惑星はいくぶん遠くにあるからである。
 82エリダニではこのようなプロセスが他の観測されたケースほどではないけれども、太陽系よりはうまくいったとする。*(3)
 我々の設定は合理的であると考えられる。付表には幾つかは仮定し、その他は仮定から導きだした数値をまとめてある。ここでは最も興味をひく最重要事項と思えるものだけとりあげる。
 もっとも内側の惑星 PT(エブカワ)は 0.31 AU の平均距離で太陽の回りを周っている。(AUは「天文単位」で地球と太陽の距離に等しく、1.499 億km である)質量は地球の 0.19倍である。この質量によって、エブカワは非常に薄い平衡した大気を保っているが、それは太陽風からの水素とヘリウムを主成分としている。エブカワはクレーターによって荒涼とした岩質の星である。水星と同じく、その自転周期と公転周期は潮汐力により太陽に向けて2:3の比率で固定されている。いくらかの氷状の水と有機化合物が存在しているが、塵と混ざりあい、全く光が届かない極地のクレーター深くにある。地表の下には非常に多くの水が水和物や包接化合物の形で存在している。本来二番目の惑星があったと思われる場所には、平均半径0.7 AU のリング状にまき散らされたアステロイドベルト(ヒリャフルン)が存在する。比較的太陽に近いことや現存する第二惑星の大きさのため、アステロイドは太陽系のものよりも強い共鳴現象−Kirkwood gap のような−を示し、太陽系よりも多くの小惑星がより遠くまで散らばっている。
 0.92AU にある第二惑星PUは我々の世界ナユリンの主星となる惑星イカロミである。これについては、イカロミの章でより詳しく議論をする。
 第三惑星PV(エハアネワ) は 2.7AU にあり、その質量は地球の91倍である。巨大ガス惑星であり、薄いリングと11個の月を持つ。月の多くは小さいが、いくつかは氷や有機高分子を堆積させている。最大のもので質量が地球の0.03 倍でガニメデよりも大きく、主成分の窒素にメタンと少量のアンモニアを含む薄い大気がある。後者はとりわけ有効な温室効果ガスであるため、地表は暖かく、アンモニアが液体として溶解した水の海が存在する。ここには生命が存在する。それは原始的で顕微鏡レベルのものであるが、興味深いものである。
 PW(アネロヨマ)は 4.9AUにあり、質量は地球の15.1倍で天王星に似ている。この星もリングを持っている。ここには8個の小さい月があり、その大部分が岩と氷の混在物だが、いくつかの衛星上には黒い有機化合物が堆積している。
 PX(ケジアルワ)は 9.7AU で質量は地球の 18.2倍である。12個の小さい月があるが、そのうちの二つが炭素質であり、アステロイドを捕らえたものと思われる。その他の月は岩と氷である。イカロミを含め、すべての巨大ガス惑星は太陽系の巨大惑星とよく似た組成をしている。
 彗星のカイパー・ベルトは25AUのところにあり、遠方に広がっている。オールト雲も存在している。恒星系内では太陽系よりも彗星や隕石の頻度が高い。

エリダニ星系

主星(イカロミ)

 PU(イカロミ)は我々の創造した世界ナユリンの主星である。すなわち、ナユリンはこの星の衛星の一つなのである。この星は太陽の回りを平均距離0.92AUで公転する。公転周期は地球年で0.93年であり、離心率は非常に小さい。イカロミの質量は木星の1.9倍で地球の604倍である。木星よりも太陽に近くて暖かいため、それに比例してガス物質が拡散しており、観測できる直径(とりまく大気の直径)は木星の1.3倍、赤道上で185,635 km である*(4)。この星は赤道上で11時間24分で一周する。地軸が19°15'傾いているため、緯度によって1日の長さは多少異なる。この星には隕石や宇宙塵の薄いリングがある。これはもともとは近づきすぎて重力によって破壊された衛星の残骸である。多くの衛星がこのようにして失われている一方、多くのものが近くの宇宙空間から捕らえられているので、失った数と得た数はおおざっぱにいって等しい。リングは赤道上60,000kmから75,000km で環を作っている。イカロミには木星と同様だがさらに強力な大きな磁場がある。磁場は太陽や外宇宙からの荷電粒子を捕捉し、強い放射線のベルトを形成している。これは惑星から離れるにつれてゆっくりと減衰するが地球人にとっては800,000km の点でも致命的に強烈で、この半径を超えてもまだ非常に強い。
 ナユリンから見るとイカロミは畏怖を呼び起こす姿をしている。それは7°の視直径、すなわち地球から見た月の14倍の直径をもった円盤に見える。そのアルベド(星にとどく光のうち星が反射する光の割合)を0.45 とすると、ナユリンの空におけるイカロミの最大光度は満月の633倍となる。背景色は黄褐色であるが、雲の島や渦巻がその表面に暗い白色や薄い青色や緑色を重ねている。3つの赤班は巨大で永続的な嵐である。イカロミの夜側で巨大な稲妻が走るのが、また極付近ではオーロラが揺らめいているのが ナユリンから見ることができる。リングは同じ軌道平面にあるナユリンからでは肉眼ではかすかに見えるだけであるが、ときおりリング内の大きな物体がかすかな星のように見えることがある。内衛星とその影はこの巨大惑星の光の中にたびたび現れる。イカロミの地軸の傾きと、それに伴うナユリン自身の軌道平面の傾きのため、ナユリンがイカロミの内半球の中央部から見て南中する位置かその近くにいる場合のみ日食を起こす。日食の長さはその時の配置や、ナユリン上のどの位置で見るかによって様々であるが、最大でおよそ4時間である。イカロミの黒い円盤が太陽のコロナを隠すが、隠された太陽にもっとも近いところで、最も広く最も明るいかすかな赤い帯が円盤の回りを囲む。イカロミの上空の大気を通ることで光が屈折するからである。ナユリンから見る太陽は、我々が地球から見る太陽とほぼ同様に見える。大きさや色といった違いは、肉眼ではほとんど認知できない。この地では地球よりも紫外線が少ないため、日焼けするには地球よりも時間がかかる。それ以外、というのは実際には何もないが、それ以外は同等である。

イカロミ星系

衛星

 一つの章をさいたナユリン以外は簡単にのべる。より詳細なデータを表の一つに記載してある。イカロミは木星のほぼ二倍の大きさがあるにもかかわらず木星より太陽に近い位置にあるため、600万qまでの距離でしか衛星を保持できず、衛星系はそれほど大きくない。内側の三つの月はナユリンにいる人間の裸眼だと変光星よりも小さく見え、天空でイカロミが近づくたびにその輝きで見えなくなる。また昼間はいつも見えない。三つとも致命的な放射能領域にある。外側にはナユリンからは見えるがそれほど目立たない二つの小さな月がある。
 これらの軌道の間に木星のガリレオ衛星とよく似た四つの大きな月がある。三つはガニメデに質量も大きさも類似している。これら三つは、たまたまナユリンから見える最大の見かけの大きさがほぼ同じである。一番内側は3°、すなわち地球から見る月の6倍の大きさで見え、他の二つは約3.5°の大きさで見える。しかし明るさはかなり違う。
 一番内側の衛星アシギャワはナユリンと最接近する満月の際には、地球の月が満月の場合の165倍の明るさとなる(実際には、そのような場合にはイカロミの輝く面が背景になるため、コントラストとしてもう少し暗く見える。イカロミの脇に出たときに初めて本当にアシギャワを“鑑賞”することができるが、それでもかなりの見ものであることには違いない)。それほど明るいのは、イオのように潮汐力の振幅により火山活動が起るほど主星に近い軌道をえがいているためである。硫黄堆積物により赤みがかった黄色の色合いをもち、アルベドは0.64となっている。ナユリンからみると合の周期は0.33ナユリン日すなわち2.76地球日である。最大離角においては周辺すなわち半球の境界線からは、イカロミに対しナユリンの向こう側の約2180qのところに見える。後に述べるようにこの値、およびこれに対応する値は秤動によって変化する。
二番目の月オラカワはより暗い色合いで、灰色がかった白である。ナユリンに対する理論上の最大明度は月の地球に対するものの約57倍であり、合の周期は0.98ナユリン日もしくは8.3地球日である。最大離角においてはイカロミに遠い側の約3250qのところにみえる。*(5)
 三番目の月はナユリン自身である。ナユリン、アシギャワ、オラカワの三衛星は、イオとエウロパとガニメデがそうであるようにラグランジェ共鳴関係にあるが、イオたちがそうであるようにその関係は180度の星位あたりで多少変動するため、表に記載した軌道の値はあくまでも“コンタクト”時点でのものである。
 四番目の月イジクワはオラカワよりもさらに暗い灰色がかった白でナユリンの外側の軌道にある。イカロミによって掩蔽されるためイカロミに近い側の半球(ニアサイド)からは満月として見えることはないが、イカロミから遠い側の半球(ファーサイド)で満月として見えるときには月が満月の時の4倍の明るさで見える。合の周期は2.3ナユリン日すなわち19.7地球日であり、時々逆行してみえる。
 オラカワのナユリンに対する潮汐力は月の地球に対するものの0.2倍にすぎない。他の二つの月が及ぼす力は0.1倍である。もちろん、これは最接近した場合の潮汐力であり、月が互いに遠ざかるにつれて距離の約三乗に反比例し、すみやかに減少していく。太陽のナユリンに対する潮汐力は太陽系の太陽が地球に与えるものとほぼ同じで、月が地球に与える潮汐力の約半分である。
 一方、イカロミがナユリンに与える潮汐力は月が地球に与えるものの882倍であり、最大値(大潮の時)は地球で経験するものの588倍になる。ナユリンを含むこれらの大きな月は潮汐力により、公転周期と自転周期が 1:1の固定されているため、秤動のわずかな影響をのぞけば常にいつも同じ面をイカロミにむけていることになる。ファーサイドの大部分の地域では主星を見ることが出来ず、ニアサイドの大部分では常に主星を仰ぎ見ることになる。

ナユリン(アネカワンの世界 )

 ナユリンは巨大惑星の衛星としても例外的に大きい衛星である。質量は地球の0.71倍で、イカロミに対する質量比はガニメデの木星に対する質量比の約15倍である。これは惑星系の形成初期に特異な、他に類を見ない条件が生じたことによるものと考えられる。おそらく二つの大質量のものが衝突したか、もしくはさらに三つめが衝突したためであろう。結局のところ、我々が知っている現象−月が地球に対して非常に大きい衛星であったり、金星が逆回りに自転していたり、天王星の地軸が90°傾いていたりといった現象−と同じような偶然に起因する現象である。イカロミや連れ立つ衛星や太陽の影響のほかに、古代の塵雲の残りの影響もあるため、ナユリンの軌道は真円に近い。現在ではその離心率はちょうど0.05で、月よりもほんの少し小さい。
 ナユリンのイカロミからの平均距離は148万kmであり、およそ0.01AUにあたる。主星を周る公転周期は8.44地球日である(このレポート全体において、1日は1自転期間を意味している)。以上のことから、イカロミの1年はナユリンの40.17日となる。
 他の衛星と同じく、ナユリンはイカロミの赤道面の非常に近くを公転している。この公転面に対するナユリン自身の地軸の傾きは15°10'である。後で述べるが、このことは重要な結果をもたらす。ナユリンの平均密度は5.08 g/cm3である。*(6)この値から導かれるように、その直径は地球の0.91倍、11,645kmであり、その表面重力は地球の0.84倍、823cm/sec2である。海面での平均気圧は0.71bar*(7)であり、これによって気体濃度が地球の大気の0.84倍であると計算される。しかしながら、すくなくとも地質学上の時代としての現時点においては、大気中には比較的多くの二酸化炭素が存在しており、温室効果は20世紀の地球の0.91倍である。その理由のひとつとして、岩が二酸化炭素を炭化物の形で固定する陸地の割合が、地球と比較して小さいことがあげられる。温暖な時期にはアルベドも地球より小さく、多くの太陽エネルギーを保持する。しかし後で述べるように、温暖でない他の時期には、広大な雪原や氷河が多くの太陽エネルギーを反射する。
 これらの要因やイカロミの軌道要素を総合すると、理論的な平均気温は地球の15℃に対して10℃となる。しかしこの数値は季節や場所によって地球よりも大きい幅を持つ。概して、我々はナユリンについて、日中は地球よりも明るく、イカロガ(ニアサイド:主星イカロミに向かっている側)の夜は地球よりもずっと明るく照らされており、「平均としては」地球よりも温度が低いが、この「平均」についてはあまり意味がないと考えればよい。
 平原に立つと、人は4.8km向こうに地平線を見ることになる。これは地球の5kmとあまり違いはない。高さeにある物体は Re1/2の距離から見ることができる。ここでRはその星の半径である。このため、例えばナユリン上で5kmの高さの山の頂上は54kmの距離から見ることができる。もちろん、地形や天気が影響するのはいうまでもないだろう。これまでに述べたように、ナユリンはイカロミの回りを8.44地球日で公転しているから、日の出までの時間、または日の入りまでの時間はおよそ101時間である。実際には、大気の屈折現象の影響を受け(黄昏時が存在する)、さらには緯度や季節や、地軸の太陽に対する傾きの影響を受ける(下記参照)。天気さえ良ければ、ニアサイドの夜はイカロミや他の月に明るく照らされている。ケジロガ(ファーサイド:主星イカロミと逆の側)の夜はその場所や他の大きな月、とりわけイジクワの月齢によって非常に明るくなることがあるが、もちろんニアサイドの夜よりも明るくなることはない。
 ナユリンにはオーロラもある。地球よりも小さい質量や遅い自転のせいで、ナユリンには地球の0.1倍程度の弱い磁場しかなく、大きな蛍光を発する宇宙からの荷電粒子はほんのわずかしか極に集中しない。しかし、致死領域よりは外側の軌道をとっているとは言え、ナユリンの周囲にはそれでもまだ多くの放射性物質が存在している。それゆえオーロラは、時にはあざやかなものが、どの緯度においても見ることができる。この現象はナユリンの尾の部分(その半分はイカロガ、半分はケジロガにある)の中央付近で非常に顕著である。イカロミがナユリンの公転よりも速く自転するため、それに伴ってイオンや電子を吹き飛ばすためである。地表におけるバックグラウンドの放射線量は、一般的には人類が何の防御もせずに長期間滞在できる量よりも高いが、ナユリンの生命は非常にうまく適応している。
 潮汐について議論する前に秤動について述べる。ナユリンの軌道は真円ではないが自転速度は一定であるので、月と地球のようにイカロミに見せる面がほんの少しだけずれる。秤動の大きさは経度にして東西約7°であり、ナユリンでは(地表の外縁の動きとして)最大711km となる。この地域は地表全体の2%にあたり、イカロガ、ケジロガの4%を占める。緯度方向の秤動の大きさは約2倍である。これはナユリンの公転面に対する地軸の傾きが15°10'であることによるもので、この値と一致する。ナユリンが軌道をまわる時、イカロミに対してまず北半球がより多く向けられ、次に南半球が向けられる。距離は1540kmであり、地表全体の8%、それぞれの半球の16%に当たる。
 この現象は潮汐に重要な影響を持つ。潮汐の動き全体が地球に比べて複雑である。
 太陽が地球に与えるのと同じような影響をこの星系の恒星はナユリンにおよぼしており、地球と同じく、恒星による潮汐力は潮汐力全体の約1/3にあたる。ナユリンの自転は遅いため、潮汐のサイクルはゆっくりである。3つの兄弟衛星はわずかな、大抵は無視可能なほどわずかな影響力しか与えない。しかしながら、ある地域である条件下(たとえば海岸近くの海底で、他の潮汐力や水域の自然振動周期が共鳴しているような場合など)ではこれらの力は無視できないものとなる。
 最も支配的なのはイカロミの影響である。もしナユリンのイカロミに対する軌道が真円なら、この巨大惑星は惑星直下と、もう一つは正反対の位置の海に二つのふくらみを作るだけである。ナユリンが硬い球体であると仮定すると、これらの地点と、90°離れた地点での海洋の深さの差はおよそ640mであり、他の影響による値の変化は比較的少ない。しかし離心率と大きな地軸の傾きがあるため、秤動によってイカロミの潮汐力によるふくらみをがゆっくりと前後に動く。イカロミの潮汐力は大きい湖でも注目に値する影響力をもつ。
 それぞれの半球における潮汐力による巨大な隆起は、イカロミの回りを一周まわるあいだに、東西に14°、南北に30°20’移動する(約1420km と3080km)。これらの楕円のなかでは、莫大な水の流れは非常に速くあらゆる陸地を浸食し、潮汐力の移動による地殻変動も引き起こされる。これら以外の地域ではイカロミの潮汐力は距離につれて減少するが、それでも大きい影響力をおよぼす。こういった条件も地域によって異なり、特にその領域における海洋と陸地の割合に大きく影響される。潮汐力は海岸に沿って大きく、海水を内陸深くまで運んではまた戻してくる。この地域の生命はこのような状況に対して興味深い適応を行っている。
 地軸の歳差運動は世界と生命の運命に対して重要な影響をあたえる要素である。地球では重力の影響により地軸が26,000年で一周するが、春分点が変わること、また北極星がある場合にはそれがどの星になるかというくらいで、ほとんどなんの影響もおよばさない。しかしナユリンにおいては、イカロミの質量やナユリンがイカロミに接近しておりほんのわずか楕円軌道を描いていること、またイカロミ自身の大きな地軸の傾きやナユリンの地軸の傾きといった要因により、歳差運動は非常に速く、その周期はおよそ10,000地球年であり、ナユリンに劇的な変化をもたらす。付録のイラストとテキストでわかるように、ナユリンの太陽に対する傾きは、4°5'から34°35'まで変化する。(地球は23°30'で変わらない。)この変化には5,000地球年かかる。極地、温帯、熱帯はそれに伴って小さくなったり大きくなったりする。人類が歴史的時間と考えるおよそ5,000年の間に、惑星全体の状態が温暖で一定の状態から、氷河期へと変化し、次の5000年でふたたび元に戻るのである。

天気に関する注釈:
 自転速度が遅いため、旋風性の嵐はめったになく、起こったとしても弱いものとなる。しかし風や雷をともなった嵐はよく起こり、たいてい地球上で通常経験するものよりも激しい。太陽に対して地軸が大きく傾いている時には、温暖な地域が狭くなっているが、大気の大きなかたまり同士の衝突のためにたびたび巨大な嵐が起こる。地軸の傾きが小さい時は天候は一般的におだやかで、気候は緯度によって(現在の地球ほどではないが)変化する。また、(これも現在の地球ほどではないが)高度によっても変化する。高度による変化が地球よりも少ない理由は、低重力下では大気圧は高度にともなう大気圧の現象がそれほど急ではないからである。

 歳差の周期が小さいため、熱的な慣性が半球の氷河化を防いでいる。実際、地球が一度ならず経験した全球的な氷河期はここでは起こっていない。氷は低緯度に向かって形成していき、大洪水を引き起こしながら高緯度に向かって後退していく。
 幾つかの数値をあげると、変化をする範囲は赤道から緯度で30°50'、距離にして約3130km となるので、変化速度としては1地球年あたり0.6 kmとなる。最も傾きの小さい時は、南北の熱帯領域は赤道から3500km である。一方最も地軸が傾いている時には 415 km となる。同様に温帯地方の範囲は 8300km と 2200km になる。いうまでもなく、いつどこで何が起こるかは、その地域の状況や陸/海の比率、正確な大気組成などに影響される。ナユリンには地殻変動が存在し、アルベドは地球よりも小さい。これは生命が長期間存続するのに必要な条件である。
 生命はこの歳差のサイクルに適応している。知的生命やその文化もこれに適応したものとなっている。

注釈

(1) Stephen H. Dole, Habitable planets for Man, Elsevier, 1970
 CONTACT Japan 3では計算の簡略化のため距離を20光年としました。

(2) 異なるいくつかの研究において、これらの数値と異なる値が得られている。我々の値は質量や光度といった値の慣例的な値から導かれている。それらは参考文献に載っている幾つかの値のほぼ平均値となっている。ここで述べている観測値のどれも完全に確実なものではなく、そこから導かれる値もそうではないことを心に留めておいて欲しい。

(3) 我々の知るところ、この件に関して82エリダニについて詳しく研究されたことはない。このことは我々の見る空におけるこの星の位置を考えると驚くべきことではない。我々が提案したような惑星は、それよりも大きく、かつ/または近い惑星に比べて見つけるのが難しい。とくにその軌道がわれわれの黄道に対して極端に傾いている場合には困難である。

(4) これらの関係は一次元ではなく三次元である。

(5) より正確に言うと、アシギャワではこれは外縁の後方21°27'である。経線上の秤動により、それは7°ほど増減し、広い時には28°27'すなわち2890kmの範囲で時々見ることができ、狭い時には14°27' すなわち1470km となる。オラカワについて、これに対応する変化は、平均32°(3259 km)、最大39°(3960km)、最小25°(2540km)となる。これらの数値はナユリン上の平均海面における最適な視点におけるものであり、これらの値は緯度や時間によって変化する。明らかに分かる通り、緯度による秤動により、この地点は30°20'の弧を描いて、ナユリンがイカロミのまわりを一周するあいだに北から南に移動し、再び北に戻る。

(6) 金星と地球の値から内挿して求めている。

(7) 質量と表面積から計算している。


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