CONTACT Japan

CONTACT Japan 2 ゲストからのメッセージ1

第2回コンタクトジャパンに参加して  松田卓也

 11月2−3日に六甲山のYMCAで開催された、第2回コンタクト・ジャパンに参加して、「明るい寝たきり生活」と題して、人類のひとつの未来像に関して講演した。ここではそのときの印象について語りたい。
 まずなんといっても印象的であったのは、参加者の多くが若いことであった。講演者とか一部の人を除けば、参加者はほとんどが20−30代の若者で占められていたと思う。それもとびきり知的な若者たちである。講演でも述べたことであるが、始めに前野さん(いろもの物理学者)から講演の依頼を受けたとき、なんとしょーむないことに大の大人が大騒ぎしているのであろうというのが私の印象であった(もっとも私もそんな人間であり、「しょーむない」といっても好音的な言葉であるので誤解のないように)。ところで私と前野さんの付き合いはニフティサーブにおける疑似科学批判を通じてである。さらに前野さんは、素粒子物理の研究者であり私は宇宙物理の研究者であること、さらに前野さんは神戸大学の出身ということで、これは断れないなと思った。さらにいえば、私も前野さんも、石原博士の主催するハードSF研究所の会員であるという共通点もある。
 第1回の集録を送っていただいてそれを読むと、これはなかなか大した物であるという印象に急速に変わっていった。そこで別の講演者として、友人であり、まともな天文学者である寿岳さんを紹介したのである。疑似科学批判をしているジャパン・スケプティツタスの会長である寿岳さんは、UFO論者を嫌っており、始めはコンタクト・ジャパンをそのような連中の集まりと誤解して「こういう人たちと対決するのが私の仕事なのです」とおっしやつていたが、認識を改められたと思う。ちなみに私もその会の顧問である。かくのごとくハードSF、疑似科学批判が私と前野さん、寿岳さんをつなぐ輪である。実は同じ輪に連なる人として、大阪教育大学の福江純さん(「やさしいアンドロイドの作り方」の著者)も呼びたかったのだが、都合で駄目となり残念であった。
 かたや寿岳さんのようにまじめに宇宙生命、宇宙文明を考えるSETIの研究者がおり、もういっぽうにUFOを宇宙人の乗り物と考えるナンセンスなUFO論者がいる。ファースト・コンタクト・シミュレーションは、遊びとして宇宙人を考える試みであると私は考える。会で義論されたように、宇宙旅行に必要な膨大な時間とエネルギーを考えると、映画「ET」のような、ひ弱な、生身の宇宙人が、遠い星から地球にやってこれるとは考えられない。くるとすればロボットでしかないと思う。宇宙人の解剖死体などというものは、現代の河童に過ぎないのである。
 ファースト・コンタクト・シミュレーションは非常に高度の専門知識を必要とする知的な遊戯という意味で、この会に集まった若者たちは飛び切り知的な人々であると思う。このような若者が現代の日本にもいるということを知っただけでも、会に参加した意義があったというものである。とくに印象的であったのは、若い女性たちの活躍である。ふつうは女性はサイエンスに弱いとされている。それが、かならずしもそうでないということを知るのは心強い。みなさんの名前は覚えていないのだが、懇親会で話をした女性が特に印象に残っている。私は長年、京大の航空工学にいたのだが、彼女がその工学部の修士卒業であるということ、さらに川崎重工で働いているというのも印象的であった。というのは、私の多くの優秀な学生たちが川崎重工で働いているからである。彼女のような一見キャピキャピの女の子が、こんな知的遊戯を楽しむというのは楽しい驚きである。そのほか、とても素敵な絵を描いてくれた女性、とてもユーモアに富んだ報告をしてくれた女性もいた。彼女は無重力状態では胸が下がらなくてよいとおっしゃっていたが、報告を横から拝見して、さすがにと思った。彼女の旦那がうまやらしい、いや、うらやましい。
 もうひとつの収穫は東大先端研のパトリック・コリンズさんの話である。米国NASAでスペースシャトルの打ち上げがフロリダのケネディー・スペース・センター、コントロールがテキサスのジョンソン・スペース・センターと分かれているのは、技術的必然と思っていたのだが、政治的なことであるらしい。日本の宇宙開発だけが政治に操られたナンセンスなもの(たとえば宇宙開発事業団と宇宙研の二本立て)とは限らないと知ってうれしい。またスペースシャトルもコリンズさんによると、コストが高すぎてナンセンスであるらしい。要するに米国もだめなのだ。今後の宇宙開発は官主導ではなく、民間主導であるべきだというコリンズさんの青見は新鮮であった。われわれ日本人は、日本の宇宙開発に関して知らなすぎると思う。知っても、マスコミのちょうちん記事ばかりである。それで私はコリンズさんの名前をいろいろのところで吹聴している。
 とにもかくにも、私はコンタクト・ジャパンを高く評価するようになった。第3回が待ち望まれる。
(*松田卓也氏のHome Page: 
http://nova.planet.kobe-u.ac.jp/~matsuda/matsuda.html
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