CONTACT Japan

CONTACT Japan 2 分科会2

「長楕円軌道の惑星生物」分科会

(分科会レポートは各分科会のリーダーおよび書記によって書かれています。)
恒星:(ISONO)我々の太陽と類似(スペクトル型、質量)

惑星:(SAZAE)
    楕円軌道
      長半径a=3AU(天文単位)、
      近日点1AU、遠日点5AU
      公転周期5.2年(地球年)、
      1897日(地球日)
    地球と類似の惑星、地球と同じ質量、
    表面重力、
    原始地球(植物発生以前)の大気組成と類似
    近日点で、
     気温58℃(温室効果、氷の反射)
      海:陸=9:1
     気温15℃のとき
      海:陸=7:3
    遠日点で、
     −187℃、海は氷
     海底火山付近の海水のみ凍結せず、液体の水が存在。

生命の発生
 冬季であっても凍結しない海底火山付近(ウォータースポット)で生命が発生。火山生成物を栄養とする。硫化水素で呼吸。

生物の進化
 分化:そのまま海底に固着するするもの
     >火山付近領域に固有の生物移動するもの
    酸素を利用する生物は出現せず!
  生産者(植物的)光をエネルギーとして、硫化水素を発生。
  海底に固着(ワカメ?)
  地上に進出したもの(コケ?)
  火山付近/冬季種子
  海中浮遊(植物プランクトン?)
  消費者(動物的)
  越冬方法:氷中で冬眠
       世代交代
       卵
       ホットスポットに集まる
       冬眠種を食べる種

  見込みがありそうな(将来、文明を産み出す?)種族(NAMIHEI)
  夏季は海上付近の豊富な植物を食す
  冬眠型(ウォータースポットでの激烈な生存競争から逃れる)
  外骨格型
  体に植物(ワカメ?)を付着
  植物を取るために「手」が発達
【解説】
  え−、以上が、分科会の報告だったのですが、これじゃ(とくに参加されていない人には)なんだかわかりませんね。というわけで、少し、解説を付け加えさせていただきます。
■恒星について*1
 今回は企画の時間が限られているということもあり、効率的に密度の高い議論ができるように、悪くいえば、ちょっと「ズル」をしています。あくまでも、楕円軌道がテーマですので、企画で作ろうとする惑星がめぐる恒星の設定はわれわれの太陽と類似(つまり、スペクトルはG型)ということにしました。太陽類似の恒星に設定することで、太陽系内の惑星の軌道半径と比較しやすくなり、作ろうとする惑星の姿を想像しやすくなります(われわれの太陽系の各惑星の軌道半径などについては理科年表でご確認下さい)。
■惑星について*1
 ガス惑星の大気中の生物や、惑星以外の、衛星上の生物なども考えられないわけではありませんが、必要以上に複雑な設定は避け、やはり上記と同じ理由で、大きさ、質量が地球とほぼ同じ惑星上の生物、ということにしました。
 さて、肝心の惑星の軌道についてですが、恒星に近い時は1天文単位(AU *2)、遠い時は5天文単位(ほぼ木星の軌道半径)に設定しました。近日点1AUというのは、やはりあんまり熱くなりすぎるところの生物は想像しにくいということで決めました。
 公転周期は約5年2ヶ月、いちばん寒い時は気温−187℃ですから、地球人の感覚からすれば、「ながーく、さむ−い、冬」が続く惑星ということになりますね。海水もほとんど凍ってしまい、海底火山付近の一部の領域のみが液体として存在しています(ウォータースポット)。
 夏は、この惑星には二酸化炭素から炭酸同化作用で遊離酸素を作ってくれる地球の植物のような存在がいませんので(これについては後述 *3)、大気中の二酸化炭素濃度が高くなることもあり、その温室効果で58℃とけっこう高温になります(*4)。

cj2_25_1.jpg (17720 バイト)

■この惑星の生物について
 というわけで、上記のような、「ながーい、さむーい冬」のある惑星で生存する生物の姿と進化の様子を考えていくことになります。地球に比べだいぶ厳しい環境で、将来は知性を獲得して文明を起こし、地球人とコンタクトしてくれそうな生物になってもらわないとならないので、なかなかたいへんですね。
 まず、生命は惑星の一年を通して液体の水が存在する海底火山付近で発生したと想定し、火山が作り出す化合物(硫化物)を利用する生物を考えることにしました(*5)。生物はやがて植物的な生産者と動物的な消費者とに別れて進化していくことになります(*6)。また、惑星の一年を通じて活動するが、海底火山付近のウォータースポットから離れることのない生物と、海底火山に縛られることなく広い範囲で生息するが、冬眠、卵または種子のような非活動的な形態で冬を越すものとに別れていきます。
 ところで、「いずれ、この生物たちも進化の過程で酸素を利用する能力を獲得し、地球型の生物のように進化していく」設定案も候補として上がりました。「硫化水素型」と「酸素型」どちらがよいか、参加者の投票は同数であったため、アインシュタインがその存在を否定したといわれる(?)「サイコロの神」に決めてもらうことにしました。その結果「硫化物を利用する生物がこの惑星を支配しつづける」ことになりました。
 さて、やがて「いずれは知性を獲得し、文明を築く」ことを期待される生物、この分科会の主人公、「NAMIHEI」が現れます。「NAMIHEI」は動物的な生物で、広い領域で生息でき、夏季はエサを求めて活発に行動しますが、冬季は冬眠してすごします。冬季のウォータースポットでは狭い領域で激烈な生存競争が行われるため、そこから逃れて冬眠したほうが「長期に安定した生活」ができるであろうということです。
「NAMIHEI」はカニのような外骨格でエサを取るために「手」が発達しているというところまでは設定しましが、外見の詳細までは決められませんでした。
 なお、残念ながら、企画時間の関係で、より多様な生物種を考えたり、この惑星上で文明を芽生えるさせるまではいたりませんでした。「NAMIHEI」くんの運命やいかに?! というところで終わってしまったわけですね。「長楕円軌道の惑星」+「硫化物利用型生物」という二重に難しい設定ではありましたが、まだまだ面白いことを考えられる可能性がある奥の深い世界だと思います。
■おまけ
今回のCJ2はゲストの豪華さでも参加者にとってたいへんうれしいコンベンションでした。それにしても、ゲストの松田先生、寿岳先生のお若いこと。懇親会では、n回りも年下の参加者たちと夜遅くまで宇宙やCETIの話額を楽しんでいらっしゃったようです。科学する心に年齢はないのですね。
■註
*1
 恒星「ISONO」、惑星「SAZAE」、「SAZAE」の生物「NAMIHEI」・・・いずれ、地球人がこの星系を発見したとき、命名するであろう名前と思っていただければ良いでしょう。でどころは明らかですが(笑)、きっと探査隊長が日本人(の子孫)なのでしょう。
*2
 天文単位.Astronomical Unit AU地球の公転軌道の長半径1.5×10^8Km
*3
 CJ2終了直後、ゲストの金子先生から、生物起源でない遊離酸素が惑星上に存在する可能性が あることを教えていただきました。まだ、その成因までは明らかではないようですが。
*4
 二酸化炭素の三重点は−57℃、昇華点は−79℃
*5
 あなたがもしSFファンであれば、ブルース・スターリング「スキズマトリックス」や、アーサー・C・クラーク「2061年宇宙の旅」に登場するエウロバの生物を連想するかもしれません。
*6
 ここでは便宜的に「動物的」「植物的」とい言葉を使っていますが、地球の生物である「動物」「植物」と同じ生物ということではありません。
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