CONTACT Japan

CONTACT Japan 2 分科会2

「遺跡から文明を考える」分科会

(分科会レポートは各分科会のリーダーおよび書記によって書かれています。)
目論見
 …西暦21XX年,人類は念願の異星文明との接触をはたした.しかし,この最初の接触(ファーストコンタクト)は,予想されていたような『異星人との出会い』ではなかった.とある近傍恒星系の惑星地表上で探査船が発見したのは,ただただひろがる遺跡のみ.異星人の知的活動の跡であることは確かであったが,その遺跡を構築したはずの異星人(知的生命体)はどこにも存在しなかったのである.『ファーストコンタクト』には遅すぎたのだ.人類が初めて接触した異星文明は,その時点で既に滅びていたのであった.いったいどのような異星人がどのような文明を構築していたのだろうか.そして彼らはどのようにして滅びていったのであろうか.この謎を解明するために,新たな調査隊が派遣された.異星人そのものを通してでなく,遺跡・遺物を通しての『異星文明とのファーストコンタクト』を実現するために…. というような設定のもと,参加者のみなさんにこの異星遺跡調査隊の一員となってもらい,遺跡から文明を考えるには何をすればよいかの検討および実際に設定された遺跡から文明を推定するシミュレーションを行なうというのが企画の目論見でした.
はじまり
 CJ2初日の夜,懇親会にも参加せずにプレゼンテーションソフトで企画の説明と遺跡のCG画像を作成.会場にノートパソコン,モニターなどを設置して参加者が集まるのを待つ.どれくらいの参加者が来てくれるだろうかというドキドキは開始時間前になくなってしまいました.ゲストの堀晃氏,Greg Barr氏,Patrick Collins氏をはじめとして大勢の参加者が集まり,机を移動して座席数を増やさなければならないくらいになったのでした.さてそうなると.企画内容に満足してもらえるかどうか.新たなドキドキであります.
『遺跡から文明を考える』には?
 企画の概要説明の後.まず,遺跡から文明を推定するにはどのような要因について知る必要があるかについて議論しました.この段階で,遺跡そのものの材質・年代・分布・作成方法,遺跡を残した生物の大きさ・滅亡原因,生態系を含めた環境など種々の要因があげられました.また,何をもって遺跡とするかという点も問題になりました.そもそもそれが遺跡であることを特定することは困難な問題であり,通常は全体調査から遺跡のパターンを発見することになります.ここでは,「疑わしきは遺跡とみなす」という立場から,遺跡であるということは容易に明確になるということにしました.また,実際には言語や絵などの記録情報を探すのが先決であり,文明を解明する情報源としては有効だとの意見もでましたが,ここではあまり取り上げないこととしました.
遺跡を選ぶ
 CG画像を作成しておいた遺跡を提示し,その中から今回の議論の対象とする遺跡を選択しました.候補となった遺跡は富士山型(タイプF,図1),ピラミッド型(タイプP,図2),ドーム型(タイプD,図3)の3つです.参加者の挙手による多数決で,富士山型の遺跡が選ばれました.
cj2_22_1.jpg (11149 バイト) cj2_22_2.jpg (14861 バイト) cj2_22_3.jpg (12066 バイト)
図(1) 富士山型 図(2) ピラミッド型 図(3) ドーム型
休息:遺跡を作る
 ここで休憩時間.その間に,司会者である私(中村)が遺跡の設定についておおまかなところをねつ造していた,というのは秘密です.
探査開始
 まず探査主体の設定から始まりました.第一次探査隊は遺跡の探査が主目的ではなく,発見した遺跡の情報を地球に報告したところ参加者たちの第二次探査隊が派遣されてきたのです.私が第一次探査隊の一員として第二次探査隊の隊員に各種データの説明を行ないます.
 この惑星の重力は1.2G,自転周期は30時間,海はあるが生命に乏しく,生態系として豊潤ではないということが判明しています.発見された遺跡は大陸のほぼ中心赤道上にあり,外観は岩砂漠の中に忽然と現れた約100mの高さの自然の山のようなのですが,明らかに周りの地質とは違う堆積物であり,熱や放射線は出ていませんが重力異常が見られたのです.また予備調査により,その山の中には球状の高密度物質が存在することも判明したのでした.
 まず調査方法について検討しました.安全性を考えてパッシブな非破壊検査から初めることとしおおまかな内部構造が判明しました(図4).堆積物(A),球状物体(B),周りの岩砂漠(C)という構造になっています.Bの正体について,A,Cのそれぞれについてサンプルをとったり地中ロボット探査を行なってBまで到達したりして調査を進めます.Cの年代に比べてAの年代がはるかに新しい(若い)ことや,Bに重金属が大量に含まれていること,Bの表面がプラチナでコーティングされておりほとんど真球に近いことなどが判明しました.

cj2_22_4.jpg (26736 バイト)

図(4) 遺跡断面図

謎は深まる
 Bが人工物体であり,AがBの保護・Bの表面の保護・Bの鋳型として使われたのでないかという推測が出されましたが,謎は深まるばかりです.Bにプラチナが含まれていることから,「これは遺跡ではない.鉱脈だ・掘り出そう」という意見もありましたが,第三次調査隊によるBの正体の詳細な調査が求められることになりました.
※「遺跡から文明を考える」というテーマでしたが,遺跡の設定で時間切れとなってしまいその正体の究明や文明を考えるまでにはいたりませんでした.企画前は時間が余ることを心配していたのですが.これならば最初の「遺跡から文明を考えるには?」の検討を省略した方がよかったかもしれません.しかし活発な義論を行うことができました.参加していただいた皆様,ありがとうございました.
追記:企画中に堀晃氏から,氏の『宇宙遺跡調査員シリーズ』(『トリニティシリーズ』と呼ばれることが多いかもしれません)の短編をまとめた本が出版されるというアナウンスがありました.この本はすでに出版されていますのでお知らせしておきます.

堀晃:遺跡の声−宇宙SF傑作選2−,アスキー,
    ISBN4−89366−614−2 (1996年12月6日発行).
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