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CONTACT Japan 2 分科会2

「恒星間宇宙船内恋愛」分科会

(分科会レポートは各分科会のリーダーおよび書記によって書かれています。)
 この企画は本来の趣旨は恒星間宇宙船での閉鎖社会を安定して維持するためには何をなすべきかを検討する物でした。
 いかに恒星間宇宙船が巨大とは言え、惑星に比べるならその居住空間も利用できる資源畳も限られています。こうした制約の当然の帰結として、恒星間宇宙船の乗組員はその数に制限が生じます。
 従ってそこに作られる社会そのものも、数多くの制約のもとで維持されねばなりません。恒星間宇宙船内恋愛とは、そうした社会の継続性、要するに社会が一世代で崩壊することなく、世代から世代へと継続しうることを検証する意味があり・・・ました。
 ですが、いざ企画がはじまってみると『恒星間宇宙船恋愛』と言う紛らわしいタイトルのために多くの企画参加者に誤解を与える結果となりました。
 いま考えてみれば、巨大恒星間宇宙船で男女のカップルを想定し、彼ら・彼女らの恋愛が成立しうる条件を考えれば良かったのかもしれません。
 これに関連して企画担当者として反省すべき点は、議論の対象が漠然とし過ぎた事でした。実際、時間の半分が議論の対象を検討するために費やされてしまいましたから。  『企画趣旨の明確化と議論の対象を具体的に絞る』、この二点に不備があった事は今後の反省点として、あえてアフターレポートに記すものです。
 企画を進める上ではいささかの紆余曲折もございましたが、休憩を挟みまして、以下のような事を議論を進める上での前提といたしました。
 1.恒星間宇宙船の人口は1万人
 これは恒星間宇宙船の人口を1万と限定したわけではなく、世代を重ねる過程で生じる人口動態の変化は認めるというものです。数字の根拠は、前日の『世代間宇宙船』での1万人という数字を目安にしております。その青味では必ずしも科学的根拠のある数字では無いかもしれません。
 ただ仮に人数がこれより少なければ、論点は社会と言うよりも個人の問題に収斂するでしょう。例えば2、3人の乗組員となれば、ここでの考察は個人レベルの問題が大きな比重を占めます。
 逆に乗組員の数が多ければこうした議論を行う前程そのものが無くなります。考えようによっては地球もまた巨大な恒星間宇宙船とも解釈できますから。
 2.10光年ほどの距離を100年
 これも100年で航行するのではなく、100年以上と言う意味です。これは世代型宇宙船を必然とします。同時に第一世代がいない時代が生じることも意味するでしょう。従ってミッションの継続をいかに次の世代に伝えるか、と言う問題がこの社会では課題となります。
 10光年とは何を意味するかといえば、恒星間航行と言うミッションには終わる時がある事を暗示しています。特に何星を意図したものではありません。例えば10光年先の恒星ではなく、隣の銀河系に行くと言うような事になれば、ミッションを継続する意味そのものに疑問符が付くことでしょう。
 3.世代の目安は5世代程度
 これは参加者の多くから指摘された点でした。世代間宇宙船の場合は遺伝的な問題がどうしても生じます。特に人口動態の結果として、人口は増えても構わないとはしておりますが、遺伝子の多様性にはどうしても限りがあります。
 またこの間題は第一世代の世代構成比などにも依存するため、ここではその点は特に検討しませんでした。実際に恒星間宇宙船を考える場合には、これは無視できない要因でしょう。
 しかし、遺伝的な問題を検討しなければならないのは世代が継続した場合に限られますが、それは逆に言えば社会が世代を継続することに成功した事を意味するからです。
 こうした前提で討論されたのは主に宇宙船内社会の行政機構についてでした。これは時間的制約も多少有ります(すいません)。
 恒星間宇宙船における行政機構を考える場合、問題となるのは権力の基盤は誰にあるかでしょう。別の表現を用いれば、力を握ることが出来るのは誰なのか? 今回の企画では具体的には宇宙船の運用管理の責任者たる船長と、居住区内に存在する都市の運営管理責任者としての市長の関係があげられました。この他に「宇宙のランデプー3」みたいな社会も考えられ、実際そうした意見もありましたが、不確定要素が多いので今回の検討からは外してあります。
 先にあげた二つの権力者の関係する形態として3パターンが考えられました。
1.市長・船長が同格でその上に上部組織がある
2.司法・立法・行政と同格に船長を置く
3.司法・立法・行政のシステムで行政の長としての市長の下に船長を置く

 この事に関して議論を進める上で宇宙船内の人口の配分を検討した結果、
 宇宙船の管理     2000人
 居住区管理(ハード)  500人
 居住区管理(ソフト) 5000人
 ミッション管理     500人
となりました。これも多分に恣意的な面も含んでおりますが、この人口分布はそのまま権力基盤に強い相関を持つことが考えられます。
 例えば宇宙船の管理者の長としての船長が、居住区の管理者の長としての市長より仮に制度上は上位にあったとしても、宇宙船の管理が10人程度で出来たとするなら、権力者は市長となるでしょう。ここに制度上と実態との権力者の齟齬が生じてしまいます。この人口分布の考察は、こうした制度上の権力者と実態の権力者の齟齬を無くす意味がありました。
 ミッションについては便宜的にファーストコンタクトとしてあります。彼らは目的地に到着するまでは教育にも関与し、居住区管理(ソフト)の一翼を担います。これは乗組員の効率的な利用−乗組員もまた資源である−と言う観点とミッションの継続と言う両方の視点からとられた処置です。
 議論を進める過程で判明したのは、この間題は恒星間宇宙船内の二人の権力者、船長と市長の力関係をどうするか? に帰着するという事でした。こうした事から市長が船長の上位にある、3が妥当となりました。なお、参加者の意見のなかには、1から3のいずれでもないミッション担当者に最終決定権を持たせるべき、と言う意見があったことも併記しておきます。
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