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CONTACT Japan 2 分科会1

「意志疎通の障害の対策」分科会

(分科会レポートは各分科会のリーダーおよび書記によって書かれています。)
当分科会のレポートの最初に、報告しておく事が二つあります。まず第一に失敗だった事。第二にこの分科会から、今後考察すべき様々な課題が生まれた事です。分科会司会者としては大変に楽しく有意義な時間を過ごさせていただきましたが、参加された方々がどう感じているかは少々不安なところです。
 さて、では分科会の目的から。この分科会では、コミュニケーションが困難な生物との意志疎通をどのように行うか? という事を考察しようとしていました。(この時点で検討の範囲の広きに気付いていれば…) 分科会担当としては、どのような形態にするかを悩みましたが、結局は「コミュニケーション不可能そうな生物を創るという前提のもとに短い時間で生物をでっちあげ、それとコンタクトする道を探る」という、今から考えると二時間枠でやるには無謀な進行方式を採用する事になったのでした。それもCJ2の前日に。
 で、分科会の雰囲気はと言いますと…「あああ来た来た来たCJ2が来た分科会が来たもう逃げられぬ何か進行に関する良案は無いものか頭が本当に回転しているようだ胃もキリキリ痛い痛くて思考がおぼっかないこんな時に人は神頼みしたりするんだろうかUFOから脳に直接電波が飛んできたりするのであろうか来い神の啓示来い電波びびっと来いようううほほーい電波」l…もう完全にアレな状態の進行役ではありましたが、参加された皆様は冷静に分科会の主旨を尊重して義論を進めてくださいました。それどころか段取りの悪い進行役の手助け・軌道修正まで積極的にしていただき、心強い気持ちで分科会の進行ができました。
 話が与太なのはここまで。
 最終的な目標にたどり着けなかったとはいえ、この分科会で討義された内容・課題について今後さらに考察していくためにはちゃんとした記録を残さねばなりません。この二時間の間には、次のような事柄が討義されました。  1:コミュニケーション困難な要因(物理的・文化的な問題に限る)
 2:上記条件を備えた生命(の案。ここでタイムアウト)
 各項の内容について、以下に整理します。

 まずはコミュニケーション困難な要因について。
A)活動のタイムスケールが違う生物
 人間は、三日に一回ほどの間隔で飛脚が持ってくる手紙を使って将棋をしたりは(忍耐強ければ)出来ますが、これが五十年に一回となると歩を突いただけで終わってしまいかねません。人類の呼び掛けに対するレスボンスが遅い生物や、逆に速すぎる生物は、待つ身になる側が相手の返事に気付かないか、交流を諦めてしまう事になるかもしれません。
B)コミュニケーション自体が危険な生物
 たとえば、非常に大きな電流を用いてコミュニケーションする生物は、人間から見れば「突然電撃で襲って来る化け物」に見えるでしょうし、たとえ音声を使っていても、鼓膜が破れるほど(ならまだマシですね)の大音量であったりすると接触を試みるのに多大な危険が付きまといます。
C)人間と感覚器の差異が大きい生物
 可視光域・可聴域のズレはもちろんのこと、主としてコミュニケーションに使用する感覚器が違う生物です。もっとも難しそうなのは嗅覚による情報伝達をしている場合ではなかろうかという話になりました。大気を遮断した宇宙服内にいる人類は何故相手が黙ったまま何もしないのかと不思義に思い、相手は相手で完全なる無表情(無臭)を無礼と感じるかもしれません。
D)群体で知性を持つ生物
 私が最初に想像したのは蜂のような生き物でした。知性を持つ女王蜂と、知性が無く巣(もしくは女王蜂の影響下)に戻って情報伝達の役目を果たす働き蜂のような関係です。しかし、この生物については議論が沸騰し、現在のコンピュータネットワークのように、単体である程度の知性(機能)を持ち、仲間との接続により、総体として発達した文明を発展させる生物という案が主流となりました。この生物の個体と接触しようとするならば、相手の文明形態を理解した後、情報の出入り口と情報伝達手順とを十分に研究しなければならないでしょう。
E)人類にとって生物に見えない生物
 石が意志を持っていたら…。 こんな事を考えるのはSF好きかダジャレのきつい人だけかもしれませんが、珪素系の生命が存在したならば十分に考えられる生物ですし、巨大でありすぎたり、小さすぎたりする生物も、人間には生物に見えないかもしれません。
F)異文明・未知の生物との接触を極端に恐れる文明を持つ生物
 未知の知性体と接触した場合、地球のような過疎の星にいる文明にとっては「こんな来る価値の無いとこまでよう来てくれはりましたなぁ。なんですか。どうせ何十光年も離れたところから来はってるんやさかい、侵略とか戦争なんかは無意味と思うております。仲良うしてくれはりまんのやろ?」と思ってしまうでしょう。しかし逆もまた有り得る話です。星と星の間の絶望的な距離を知り、文化の交流に意味を見いださなければ、強引な接触は相手にとって脅威でしょうし、惑星それぞれに知性体がいるような生命の豊かな場所にいる文明は、既に異文明との接触で手痛い経験を持っているかもしれず、我々との交流を拒むかもしれません。これはおそらく最も接触困難な相手ではないでしょうか。
G)言語を使用しない生物
 電波で交信とか、接触して電気信号で…というようなものではなく、伝達される情報の形態がその生物に依存しているようなコミュニケーションを行う生物の事です。たとえば、彼らの脳(と呼べる器官)でなければ理解不能な、思考情報をそのまま伝えるような生物の事です。しかもその情報が各個体によってかなり違ったりすると、外から見ている我々には無数の語彙と文法があるように見えてしまうわけです。
H)人類にとって文明には見えない文明を持つ生物
 一見高度な文明を持っているように見えない生物、人類には見えにくい面で発展した文化などを発見した時に、人間はそこに知性を見いだせるでしょうか? あまりに異質な文明を持った生物を我々は見過ごしてしまうのではないかと考えるのです。
 この8つの要因が出たところで既に分科会時間の半分が過ぎてしまっていましたが、気を取り直して「それではなんとかこれを元に生物を」という事で残りの時間を生物創造の時間にあてました。が、ここで新たな問題が起こりました。「どうやら群体生物だとコミュニケーションが難しそうだ」と皆が感じたのかどうかはわかりませんが、案が出る生物はほとんど群体生物となり、詳細を決定する際に、個体とそこから形成される群体との役割の割り振りや、群体生物の活動の考察にかなりの時間が取られてしまったのです。
A)個体の機能(知性)は?
 各個体が、知性を持たない場合はともかく、個体にある程度の知性が存在する場合には、人間の社会とどれほどの違いがあるのでしょうか? たとえば現在の地球に異星の生命体がやってきて、そのへんに居た人にコンタクトを求めたとしたら。その場に居た人が逃げ出して大騒ぎになり、国家として、また地球人類として対応の方策が決定されるまでにはかなりの時間が必要でしょうし、そのような状況を見て異星の客は地球人を群体生物だと思ってしまうのではないでしょうか? 特に社会という概念が生命にとって普遍でなければ、その可能性も無いとは言えません。単に群生している(社会を築いている)生物と、群体生物というものの区分けを考えなければなりません。
B)完全なる群体生物の外界との接点は?
 個々の生体が本当に単なるパーツとしてしか機能しない場合、集合体は一体どのような外部とのインターフェースを持つのでしょうか? また集合体同士がコミュニケーションしているならば、今回の義論においてはさらに「困難さ」を付与しなければならず、群体生物である事が意志疎通の障害にはならないのではないか? これは困難な問題です。
 これらの、討義中に出た問題については今後さらに踏み込んだ考察を行い、完成させる必要があるでしょうが、それは先の話(なんらかの形でもう一度結論を出したいものです)とします。
 最後に分科会で(未完成ながらも)産み出された生物を当日配布したレジュメから紹介して当分科会のレポートを終わります。

1:嗅覚によるコミュニケーション手段を持つ群体生物で、蜂のような形態で飛行または浮遊する。個体の識別などを嗅覚によって行うが、単体では知性を持ち得ない。集合体の大きさは巨大で人類にとっては都市のような建造物を思わせる。

2:個体同士の情報交換は接触した状態で味覚を使ったものである群体生物。情報交換の方法は複数あり、遠距離または不特定多数への大まかな情報伝達には匂いを使う。

3:イルカのような音波ソナーによって3次元を認識する水棲生物。ただし、人類が受動的に外界の光を感知するように、彼らの持つ器官も生活環境(水中。波うち際の音が必要か?)の背景雑音を元にしたパッシプなソナー機構のようなものである。しかも水中で匂いの交換などを元にした群体を形成する。

4:ネットワーク生命。情報伝達方法は定かではないが、常に拡張を求めて(人類にとって)危険な方法で接触を試みようとする。この生命体についてはかなりの考察がなされたが、個体の役割やネットワーク全体である集合体の知性については説明が可能なほど決定できなかった。

5:極度に危険を恐れるため、接触を拒否する文明。彼らは接触を好まず、伎に意思の伝達が可能になったとても嘘や言を左右にする態度をとる、 決して敵対的ではない(反撃という可能性がある)が友好的に交流を深める事も不可能にする、ウソつきなやつらである。
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