CONTACT Japan

Proceedings of CONTACT Japan 1 Vol.3
アメリカの異星生物たち
−ビジュアルな考察−

想像力の限界

 地球上で、非常に遠距離で時代もずれているのに、しばしば古代文明の遺産には似通った模様や文字それに壁画などが見られることがある。さらに類似した単語や用語が発見されていたりする。これは超古代に共通の起源を持つのだと主張するひともいる。肯定や否定の証拠もない(と思う)以上、ことさらその可能性を否定するものではないが、こうも考えられないだろうか。人間の脳の思考パターンには、ある気付かない図式と制限があり、表現方式に共通性がうまれる可能性が高いのではないかと。極端な例を除いては、人間同士おおむね不快なものは不快として受け取られ、友好のシンボルは、まあ間違いようがなく、好意的に示され相手に受諾されるのである。逆に考えると、ヒトの持つ脳のパターンがなにかしら存在する以上は、想像力をいくら駆使しても、ある枠の中から出るのは至難の技なのだ。変わった生物を想像するのは、実に難しい。
 テラフォーミング研究で有名なマーティン・フォッグ氏が、「設定条件に矛盾をかかえるのはわかっているが、それでもあえて提案したい。異星の生物は、哺乳類、爬虫類、恐竜、有袋類以外のものにしようではないか。」と過激(!)な意見を述べているのも、私達ヒトの持っている想像力の限界に挑戟しているといえなくもない。

   アメリカのビジュアルなCONTACTエイリアンたち

  さすがにオリジナリティを貴ぶお国柄で、アメリカでの宇宙生物創造の歴史は、数多の傑作がSF小説や映画を賑わしてきた。しかし現実に科学的情報をベースにして想像力豊かな生物を造る試みは、「CONTACT」の活動が発足してから、具体的なプロジェクトとして、はじめて明確な形をとったかに見える。今年、1994年で11年目を迎えたアメリカの活動で、どのような太陽系外生物たちが作られてきたか簡単に見てみよう。紙数に限りがあるので2、3の生物を挙げることしか出来ないのは残念だ。
  cj1_p3usbj01.jpg (28725 バイト) cj1_p3usbj02.jpg (34821 バイト)

   
「デカポッド Dekapod」

cj1_p3usbj03.jpg (63179 バイト)
  固有名詞。DEKAは10を意味しているし、PODは、恐竜の竜脚類(SAUROPOD)などでいう、いわゆる脚である。つまりその意味は10本足になる。この「デカポッド」は、アルファ・ケンタウリ人だ。初期に作られて完成度の高かった生物であり、大頭の宇宙人で、脚は6本、腕は4本あるが、これが命名のゆえんだろう。巨大な頭蓋骨と3つに別れた下顎骨が特徴である。生物同士の交信は、地球人と同じく音波だが、大きな頭蓋骨の内部空洞、そして固定されていない、柔軟な筋肉で任意に広げられる3個の下顎骨のおかげで共鳴が起こり、発声の音量は、地球人には大きすぎるほどだ。この下顎の構造はにおいをかぐときにも有効で非常に嗅覚は敏感である。そのため彼らにとって地球人は臭い生き物だ。しかし原始の時代には危険を早く察知して警告信号を仲間におくるのには、非常に役にたった。背は高く2.5mは優に越す。ただCONTACTをはじめると、最初は、“ケンタウルス型”の生物になりやすいのはアメリカも日本も同じ傾向があり、実に興味深い。人間の背負っている形態学上の問題点が反映されるのだと思う。

 cj1_p3usbj04.jpg (45746 バイト)

 地球からのプローブ「ヘーゲン3」が、3連星アルファ・ケンタウリの惑星「アキレス」の荒地に発見した骨は、地球に有人調査船の派遣を決定させるに足る充分なインパクトをもたらした。プローブから電送されてきた写真から、生物がいる、または過去に存在していたことがわかったからだ。
 後で判明した腕の数は4本だが胴体上部についている。足は左右に3本づつだから6本ある。腕の「ひじ」は各腕に2ヶ所見られる。指は腕の数が多いのとは逆に、一本に2本しかついていないから、指の総数は、左右合計で8本しかない。額の正面像をみると、ほぼ地球人と同じ比率の場所に大きな目がふたつと鼻孔が見える。最初は、この頭骨を造り、次に筋肉や腱をつけていき、同時に胴体や腕や脚を考えていった様子が、当事のテレビ番組のビデオに残されていて関心をよぶ。上記のプローブや宇宙船のデザインも視覚的にコンピューターでワイヤーフレームから設計されたのだが、これらも機会があれば紹介したい。
 実際のCONTACT大会では、このデカポッドの惑星「アキレス」へ到達した調査隊が、ファーストコンタクトを行なった。非常に基本的な意味をあらわす単語の交換はできたが、感情や複雑なメンタリティの違いから、なかなか意志の疎通は手間をとるものだった。このメンタリティの違いは非常に重要な課題だと思う。

COTI Mundiの生物たち

 現在進行中の CUTI Mundiでは、恒星は82エリダニで、その第3惑星「エポナ」が種々の生物たちの生息地である。多彩な生物が進化系統樹と共に多く作られている。
(スティング・パウンサーStinging Pouncer)
 折り尺のような生物。一本の定規をくにゃくにゃと折り曲げたような体でさぞかし安定が悪かろうとおもうが、そういう我々地球人だってたいしたことはない。不安定な2本脚で重心を移動しながら、つまり常に前方へ倒れながら歩いているのだから。こいつは両生類で脚に水掻きがあるし、まるで一本脚のカエルである。移動するときは、ぴょんと跳ぶのである。エコシステムでは食物連鎖の頂点にいる。こういう生物を考えるときは、捕食行動、排泄行動、生殖行動なども平行して考えたものでないと、後でつじつまの合わなくなることがある。
 このエコシステムから抜け出して進化の階段を登り出すのが、次にのべる「セラトライドン」の祖先「ポンセドナス」だ。この動物は、手短に表現すると3本脚のみずすましである。
cj1_p3usbj05.jpg (49031 バイト)
(セラトライドン Ceretridon)
 前脚が2本、後脚が一本しかない「セラトライドン」という動物が考えられたが、大論争になったのが排泄孔の位置だった。もちろん消化器系の検討からはじめなければいけないのだが、3本脚の“みずすまし”のような、水棲動物(ポンセドナス Poncedonus)から進化したという設定で、外観から入ってしまったための問題だった。結局蓋付きの排泄孔を下部の横腹部につけることになったという苦し紛れの妥協案が採用された。また水棲動物時代に水中をみるのと上空をみる目をもっていたために、進化後も目は複数となっている。コティ・ムンディでは、もちろん動物だけでなく、植物の創造も実に楽しいもので、動物よりは楽な感じだ。しかし地球のものとの類似をできるだけ避けるという「例の努力はなされているのである。前述の3本足生物についてみると、祖先のポンセドナスからの進化で、プロトセライドン(ネオ・ポンセドナス)、モノポッド・セラトライドンとかバイペダル・セラトライドンなどのヴァージョンが、進化系統として考えられた。これらの名称も現実味があっていい。

cj1_p3usbj06.jpg (82505 バイト)

cj1_p3usbj07.jpg (31911 バイト)

cj1_p3usbj08.jpg (22921 バイト) cj1_p3usbj09.jpg (16758 バイト)
(その他の変な、82エリダニ第3惑星の生物たち)
 作り出された動植物たちは、名前を挙げると「チューブ・ワーム」「ボトム・ドエラー」「セグメンテッド・ドラゴンフライ」「ネット・アニマル」「サイクル・バグ」「ジャンピング・クラム」「バブル・ウイード」「マルチ/シングル・シーウィード」「マッド・エンジェル」「ボトム・ドエラー・イーター」「サンド・トラッパー」「モス・スポンジ」「フローティング・アイランド・プラント」「パゴダ・ツリー」などがある。すべてのイラストを紹介するのは、とてもここではできないので申訳ないけれど、名前を見ているだけで面白くなる。日本大会で多彩な 植物相も作れるといいのだが。
cj1_p3usbj10.jpg (12452 バイト) cj1_p3usbj12.jpg (22354 バイト)
cj1_p3usbj11.jpg (35810 バイト)
(蛇足)
 近いうちに、CONTACTの異星古生物学者でアーティストのヘーゲン氏から、サイファイチャンネルで放映された彼の番組のダビングを送ってくれるそうなので、また面白い生物を紹介できるかもしれない。
◆海外のビジュアルな宇宙生物の参考文献(注)いわゆるイラスト集は省いた。

(1)Cycles of Fire / William K. Hartmann and Ron Miller / Workman Publishirtg, New York
(2)Barlowe's Guide to Extraterrestrials / Wayne Douglas Barlowe/ Workman Publishing, New York
(3)Expedition / Wayne Douglas Barlowe / Workman Publishing, New York
(4)Challenge of the stars / Patrick Moore and David Hardy / Mitchel Beazley Publishers Ltd. London

Proceedings of CONTACT Japan 1 Vol.3 に戻る