CONTACT Japan

Proceedings of CONTACT Japan 1 Vol.3
参考図書紹介 Part 3

 FCSに関係するSF作品について,個人的趣味をもとに代表作を分類・リストアップしてみました.

概説

  「千億の世界海外SF傑作漫」(福島正実編,講義社文庫)という本の解説では,宇宙テーマのSFを次のように分頚しています. a宇宙開発SF、 bコンタクトSF, c宇宙文明SF、 dスペースオペラ、 eその他。また,この中のコンタクトSFについて次のように述べています.
 「人類が太陽系から外宇宙にむかって飛びだせば,当然いつの日か,他の知的生物と遭遇することが,考えられる.互いにまったく異なる環境にそだち,異なる歴史とメンタリティとを持つ知的生物同士のコンタクト(接触)は,これまた当然のことながら,さまざまの問題をひき起こすにちがいない.それは,地球上の,唯一の種である人間同士さえ,数千年の歴史を通じて,ありとあらゆる摩擦と闘争とを,あくことなく繰り返していることからも,当然予想しなければならないことである.(中略)こうした,まったく化学組成のちがう宇宙人同士のコンタクトは,どうしたら達成されるのか,それ自体一つの問題だが,化学組成の同じ知性同士の場合には,またべつのきわめて困難な問題がある.コンタクトー般のありかたが,本質的には二つしかないからである.闘争か,それとも友好的に接触するかである.もちろん,それ以外に,お互いに無縁な存在として認めあい,コンタクトを避ける場合,無関心に別れ去ってしまう場合も考えられる.(中略)ともあれ,こうした問題のもつ意味を思索することを通じて,生命とは何か,文明の本質とは何かを問うのが,この種のSFの存在理由でなければならない.」
コンタクトSFについての名文ですね.さて, FCSに関係するSFはコンタクトSFだけとは限りません.宇宙や異星を舞台としたSFでは,異星生命・異星環境という背景世界をしっかりと構築しているものがあります.いったいどんな異世界が構築されてきたのか,FCSの参考になるはずです.また,コンタクトを広い意味での異文化接触ととらえるならば,文化・文明・知性といったものを取り上げたSFが関係してきます.さらには,[センス・オブ・ワンダー] という意味でほとんどのSFがFCSに関係あるものと考えることができます.早い話が,FCSの参考のためにいろんなSFを読みましょう,ということなのです.そういうわけで,割とSF初心者にもとっつきやすくてFCSに関係の探そうなSF小説をリストアップしてみました.
 

コンタクトSF

「宇宙翔けるもの」

イワン・エフレーモフ著
「千億の世界 海外SF傑作選」 福島正実編 講談社文庫

 互いに生物としての基礎的な組成の違う異星人同士(酸素系の地球人と弗素系の異星人)が大宇宙の真ん中でまったくの偶然から行き合わせたという,典型的なファースト・コンタクト・テーマの作品.理性を持って宇宙に乗り出すほど進化した生物は互いに友好的に反応するはずだという観点から書かれている.地球人側宇宙船の名前はテルル号.

「最初の接触」

マレイ・ラインスター著
「千億の世界 海外SF傑作選」 福島正実編 講談社文庫

 宇宙空間での異星人同士の宇宙船での遭遇を描いた作品.英語題名はずばり“First Contact”.互いに相手の友好性を完全には信頼できない状況で,互いの故郷星系の情報を秘密にしたまま無事に別れるためにとった手段のアイデアが見事.地球人側宇宙船の名前はランヴァボン号.

「竜の卵」

ロバート・L・フォワード著 ハヤカワ文庫SF468

 重力670Gの中性子星に棲むチーラの文明と,地球人とのファーストコンタクトを描いたもの.

「ロシュワ−ルド」

ロバート・L・フォワード著 ハヤカワ文庫SF627

 [宇宙船を構築し,異星探査におもむく]という点で我々のFCSに最も近いと思われるSF.特異な異星環境やそこに生存する異星の知性体をきちんと構築した,本格的ハードSF.

「マンハッタン強奪(上・下)」

ジョン・ E ・スティス著 ハヤカワ文庫SF1056,1057

 マンハッタン島が突然異星人に鳥ごと連れ去られてしまう.異星人の正体と目的を探るためのコンタクトが始まる.クライマックスは宇宙戟争.

異星生命・異星環境

「宇宙船ビーグル号」

ヴァン・ヴォクト著 ハヤカワ文庫SF291

 巨大探査宇宙船と異星生命との出会いが措かれた古典的名作.

「重力の使命」

ハル・クレメント著 ハヤカワ文庫SF602 〔「重力ヘの挑戦」創元推理文庫〕

 高重力の惑星メスクリンと原住生物メスクリン人という異世界構築が見事な古典的SF作品.
 その他,異星生命・異星環境構築を割ときっちりしている作品に,次のようなシリーズがあります.
<惑星シリーズ> 石原藤夫著  ハヤカワ文庫JA
<ノウンスペース・シリーズ> ラリイ・ニープン著 ハヤカワ文庫SF
<知性化・シリ−ズ> デイヴィッド・ブリン著 ハヤカワ文庫SF

文化・文明・知性

「太陽風交点」

掘晃著   徳間文庫

 主人公は宇宙の遺跡調査員.主人公のパートナーとなる結晶生物トリニティの存在が秀逸.同じ主人公とトリニティが登場する作品は他にもあり,[生命]や[文明]といったものを考えさせてくれる.

「サターン・デッドヒート」
「サターン・デッドヒート2/ヘキシーの星のライオン(上・下) 」

 グラント・キャリン著  ハヤカワ文庫 SF770,862,863

 太陽系に残された手掛かりから,異星人の宇宙船が発見された.その宇宙船にのって,異星へと旅立つ.地球とスペースコロニーとの対立などの太陽系の社会情勢も描かれている.異星人の文化がおもしろい.

「死者の代弁者(上・下)」

オースン・スコット・カード著 ハヤカワ文庫SF884,885

 惑星の原住種族を研究していた異類学者が殺害された.異文化接触の困難さが措かれている.「エンダーのゲーム」の続編.

その他

<サイバーナイト・シリーズ>

山本弘著 角川スニーカー文庫

 RPGの設定を小説化したものだが,内容は結構本格的でハード.[知性]や[文明]といったものがしっかりと考えられている.特に第一作「サイバーナイト/ドキュメント戦士達の肖像」はFCSの参考書としてお薦め.
 他にもFCSに関係しそうなSFは数多くあります.SFに馴染みの無い方のための参考書として,「SFハンドブック」早川書房編集部 編 ハヤカワ文庫SF875
をあげておきます.

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