CONTACT Japan

Proceedings of CONTACT Japan 1 Vol.3
FCSの流れと注意事項

 いよいよCONTACT Japan 1まであと1ヶ月となりました。そこで、FCSに参加される前にFCSの流れ、注意して欲しい事柄などについて記します。

FCSの原則
 FCSでの参加者の目的は、異文化間の接触(のシミュレーション)を行う事です。
 地球生命と異星の生命の接触でも、異星と異星でもかまいませんが、目的としてはコンタクトが行われる事を前提としています。
 つまり、設定の段階でコンタクトを行えないような世界や生物を作る事はFCS自体を破壊する行為となります。また、 FCSでは原則として直接の接触が行われます。通信のみによるコンタクトなどは、CONTACTという活動のなかでFCSとは別に扱われるものと考えてください。御都合主義のように見えますが、これについては「コンタクトできない状況は実際には存在するのだが、FCSでは扱われる事がない。FCSを行うからコンタクトが発生するのだ。」という“コンタクト原理”が適用されます。
 「何故直接合わなければならないのだ?」という問いに対する一つの答えとして、単に挨拶を交わすだけでなく何等かの交渉が行われる場合を想定してみましょう。往復に10年、20年とかかる交信が延々続くのに比べ、1ヶ月でも滞在して話し合えば大幅な時間の短縮となります。現実においても、会議や交渉のための海外出張など、つきつめた合理性で考えると首を傾げたくなるような行為が当たり前に行われている事を考えれば明らかでしょう。

FCSの流れ
 さて、ではどのようにしてFCSは進行していくのでしょうか。おおまかに分割すると以下のようになります。
   1:グループ分け
   2:グループ全体討論
   3:分科会での設定
   4:コンタクト
 これだけでは実像を掴みにくいと思いますので、詳しく説明します。
<1:グループ分け>
 まずコンタクトする二つの文明を決定します。大抵の場合、一方は地球人類、もう一方がその近隣恒星系の生命体となります。CONTACT Japan 1では、地球人類と近隣恒星系(当日決定されます)の組み合わせが予定されています。
 参加者は、ここで決定した2つの文明グループに分かれます。ここからはコンタクトが行われる時まで、グループ間の交流は一切なくなります。ただし、観測などが行われた場合には、その情報のみやりとりする場合もあります。
<2:全体討論>
<3:分科会での設定>

  CONTACT Japan 1のタイムテーブルを見ますと、時間的に最も大きな部分を占めるのが分科会での設定です。2つの文明グループに分かれた後に行われる全体討論も、分科会での設定を円滑に行うための基本設定作りと言えます。例えば、地球人が宇宙船を作るとします。宇宙船を作る分科会と宇宙船を飛ばそうとする組織や目的を考える分科会とで、地球の技術レベルや工業力の認識に差があれば整合性のある設定を作る事ができません。そこで全体討論の場で基本的な設定を決めなければならないのです。
 分科会では、地球人側ならばコンタクト当時の地球の社会背景・出発する宇宙船の設計などを、異星人側ならば惑星・その環境・異星人自身などを設定していく事になります。
 グループ内の分科会同士は設定を行う必要上、情報交換を行わなければなりませんが、自らの分科会と相手の分科会の討議を邪魔する事なく調整を行うのは大変難しい事です。CONTACT Japan 1では、分科会から質問用紙を発行し、応答すべき分科会はその用紙に答えを記入して返答するという形式を採っています。
<4:コンタクト>
 いよいよ各グループが設定した、二つの文明のファースト・コンタクトです。ここでは各グループのコンタクト代表団が実際に対面します。この「実際の」コンタクトが、どのようになるかは誰にも予想できません。綿密な設定であればあるほど、また厳密にルール(情報の漏洩など)を守ってFCSが行われているほど興味深い状況が展開されるでしょう。
 今回のFCSでは、コンタクト本番が行われる前に「プレコンタクト」という時間をとってあります。 「プレコンタクト」とは、当然予測される、実際のコンタクト前の情報の疎通を実現させるためのものです。設定によって状況は変わるでしょうが、おそらく、プレコンタクトの時点では、訪問者は既に相手の星系に接近しており、恒星間宇宙船からの観測(または接近する宇宙船を観測)や、電波による通信などを扱う事となるでしょう。ここで分科会での設定が不十分だと相手からの観測や問い合わせに答えられません。即興で設定を行うか、電磁波の代わりとなるグループ双方の耳目(スタッフが担当します)の、その場の判断に委ねる事になります。
注意事項など
 冒頭の原則に基づいてFCSを成功させるには細心の注意を払う必要があります。分科会討論では、特に次の3点について十分に理解していてください。
●時間に制約がある。→円滑な進行が必要。
●一人で行うものではない事に注意。→分科会という小グループが設定の基本である。
●FCSの設定を行うには常識が必要。
 FCSでは、その設定しなければならない事柄はあまりに多岐にわたるため、常に時間が不足する状態となります。分科会での討議が設定を行うための基本的な活動単位ですが、ここで紛糾していては他の分科会にも影響を及ぼします。各分科会のリーダーが取りまとめを行いますので、リーダーが行う議事進行を妨げないようにしましょう。議論に熱中しすぎて、一人で設定をどんどん決めていく、他者の意見に耳をかさなくなる、自分の意見に固執してしまう、といった状態に陥ると議論が議論でなくなってしまいます。
 また、誰も見た事のない未来の出来事を創造する(過去に異星文明とのコンタクトは記録されていませんから、当然未来ですね)のですから、設定において科学的常識という基盤がなければシミュレーションをする意義を失ってしまいます。例えば、現在から100年後に、人類は光速を超える移動手段を持っているでしょうか? 老化せず、不死の生命を持つ事はできるでしょうか? 社会的な設定においても同じです。100年後に地球の環境はどうなっているのか? 国家という枠組みはどうなっているでしょうか? 現在の状況と過去の進歩を振り返り、類推し、新たな可能性を検討しなければなりません。「遠い星に行くからワープします」では、あまりに無茶な話です。無思考はFCSの天敵です。面白く、楽しく、有意義なFCSを行うには、現在の科学知識は重要となります。
 ただし、現在の知識だけで未来と異星の生命・文明を構築しなければならないのかというと、そうではありません。これらの基盤の上で想像力を最大限に働かせるところにFCSの醍醐味があるのです。それが適切であるかどうかのジャッジを行うのは,参加者自身であり、分科会での討議です。
 本番であるコンタクトで、訪問の意義を見失ったり、対話が進まないなどという事態を防ぐために、地球人に、また異星人になりきるためには、その設定がしっかりしていなければなりません。それにはやはり、大前提である「コンタクトを行う」という目的を念頭において分科会を進行させなければならないのです。
 以上ですが、おおよその雰囲気が掴めたでしょうか。FCSは実施する度に、その創造される世界の状況が著しく変わります。決まったルールというものを設定しておく事はFCSの内容を狭い範囲に規定してしまう事になりかねません。ですから、ここでは参加者のみなさんがFCSに参加する上で遵守して欲しい心構えと、今回のCONTACT Japan 1の進行の流れについて説明しました。まだ疑問に思う事や不明瞭に感じる部分がありましたら、CONTACT Japan 1当日にスタッフなどに確認してください。

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