CONTACT Japan

Proceedings of CONTACT Japan 1 Vol.2
参考資料集 Part 2

SETI Japanレポート

 すでに新聞などでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが去る五月二十三日、渋谷は五島プラネタリウムにおきましてSETI Japanの講演会が行われました。興味深い話なども聞くことができましたので簡単ではありますがレポートしてみたいと思います。

 今回の講演を知ったのはパソコン通信(NIFTY-Serveにて)でした。CONTACTを行うからにはやはり最新のSETI情報はかかせません。と言うわけで時間を作って参加してみました。私は開場時刻を少し過ぎた頃についたのですがすでに列ができています。

 参加者の年齢層はかなり幅広いようでしたがやはり若い方が多い。ことに女性が多かったのは印象的でした。なかには制服姿の女子高生も見受けられるほどです。

 今回の講演会のゲストであるところのジル・ターター博士(Dr.Jill Tarter)はNASAから独立し資金を受けるSETI研究所(SETI Institute)という非営利目的の公的研究機関の実行責任者という要職にある科学者です。こうした要職に女性が進出できるのだからアメリカと言う国はこの点やはり日本より進んでいますね。ちなみにご主人もパークレー校の電波天文台長をなさっているのだそうです。

 さて講演会はターター博士が英語で行いそれを司会で世界的に著名な天文学者である平林久博士や寿岳潤博士が翻訳しながら進めるという形式をとりました。これが中世ヨーロッパにおける封建制度とキリスト教教会の役割みたいな題材を英語で話されたら私の英語力ではさっぱり理解できなかったでしょうが、幸いにもSETI関係のテクニカルタームが多かったこともあり意外に理解することができました。とはいえ理解できた言っても大阪の事を話しているのを聞いて、ああ、東アジアのどこかのことを話してるんだなあ、程度の理解力ですが。つくづく英会話の必要性を感じました。

 講演会場はプラネタリウムそのものを使い、スライドも天井のドームに投影します。球面に投影するからどうしても歪むし座る場所が悪いと首をねじらなければ上下が逆さまになったりします。演台と思われる位置から計算して演者の正面に陣取ったのが裏目に出てスライドを見るのに一苦労しました。

 そのスライド内容ですが、最初に写し出された一連の物は宇宙の誕生から生命の誕生まででした。超新星の爆発によって水素やヘリウムの核融合産物であるから炭素や酸素、窒素などの原子が宇宙に広がり我々生命の材料となったと言う趣旨が冒頭の話です。

 次に火星のバイキング探査機のスライド。地球外生命の可能性の例として出された物でいまのところ火星に生物がいるという兆候はないとのこと。それから恐竜のスライド。たぶん初期のテコドント類と思われる恐竜です。ここでは恐竜が絶滅しなかったならばこうした恐竜が知性を持ち得たかも知れないと言う話でした。次がイルカのスライドで知性は持てても文明の構築はこうした生物では難しいだろうと言う内容でした(知性という抽象的な内容になると急にレポートの内容が薄くなるのは何故^^;)。

 興味深いと感じたのは知性の例として目の進化をたとえにあげられたことでしょう。生物はいろんな種に分化しているがにもかかわらず目の構造はどの生物でも同じである。これと同じように生物は形態こそ違うにしても知性化に収赦するのではないかというような趣旨の発言があったわけです。進化論的にはちょっと全面的には納得しかねるような気もするのですが、進化論以前に私の英語力に致命的に納得しかねる部分が多々ありますからこの点は何とも言えません(英語力の必要性を感じるわ けです、こういう時に) 。

 こうした生物と知性の説明の上で、我々人間がそうであるように知性は環境に働きかけ環境を変えうる、だからそうした活動の結果、文明の存在を知ることが可能であろうと言うSETI計画の本質的な認識に至ることになります。

 ここで宇宙で現在唯一存在が確認されている地球文明のスライドが写し出されました。宇宙空間では星聞物質の影響などで同じ電磁波でも光よりもマイクロ波の透過性が優れているのはよく知られた事実です。このスライドは太陽系を電波で観測したときの波長と明るさの関係をグラフ化したもので横軸が波長、縦軸が明るさとなっています。

 当たり前の話ですが太陽系では太陽の放出する電磁波が総ての波長でもっとも強い。ただし一センチから十セ ンチの波長帯のマイクロ波を除いて。この波長帯では地球が放出する電磁波がもっとも明るいのだそうです。つまり地球は小さい天体にもかかわらず一センチから十センチの波長帯のマイクロ波ではひときわ明るく輝いているのです。これは地球の文明活動の反映ですが、つまりこうした活動を探し出すことで地球外文明の存在を確認することが可能だろう。こうした観点からSETIの清動は行われているようです。

 ただSETIを行うためには宇宙からの膨大な電波の中から地球由来の電波を除去しなければなりません。これについては妙な電波については複数の天文台で確認して地球由来かどうかを確認するそうです。

 それでいままでの成果ですと地球外文明のものとは断言できないが妙な電波が三つほど観測されたことがあるとか。ただ、他の天文台がフォローアップしようと思ったときには消えてしまったため客観的に存在したかどうかの確認ができていないそうです。

 もしも人工信号が受信されたらどうなるか? これについてはすでにコンピューターシュミレーションにより幾つかのパターンが実験されておりスライドでも写し出されておりましたがなるほど自然現象とは違います。非常に目立つ存在ですね、文明って。

 これでジル・ターター博士の講演は拍手と共に終わりました。ここで予想外の事件が起こりました。深夜に到着する予定のドレイクの方程式で知らない人はない天文学者フランシス・ドレイク博士が成田から会場に現れたのです。何と私の二メートル後ろの席にいらしたのでありました。
 拍手と共にドレイク博士を迎え、質疑応答がはじまりました。

Q:何をもってそれが異星人の信号と判断できるのですか?
A:色々方法はあるが、それが自然現象と違うかどうかは例えば周波数分光で判断できる。人工電波ならその領域は非常に狭いが自然現象であればその領域は非常に広い。仮にそれが人工電波でなければ新しい自然現象の発見となる。

Q:ドレイクの方程式の意味はいまも変わっていませんか?
A: (この質問には当然ドレイク博士自らが答えてくれました)ドレイクの方程式は考え方だから式そのものは変わっていない。また最初にドレイクの方程式を発表してから色々な新しい天文現象が発見されたりしたが、しかしそれでも方程式が表すところの意味は変わってはいない(博士はあれは知的ジョークであるというような事を言ったような気がするんだがよくわからない^^;)。

Q:UFOをどう思いますか?
A:UFOについてはそれを他の人がフォローして観測できないので何とも言えない(どうも博士は行く 先々でこの質問を貴けているらしい)。

Q:電波望遠鏡をロケットに載せて深手宙に打ち上げる可能性は?
A: (これもドレイク博士が回答)
 一)ロケットでの電波望遠鏡の打ち上げは経済的ではない
 二)でも月の裏側に電波望遠鏡を設置するのは非常に有意義だ
 三)千天文単位ほど離れると太陽が重力レンズとして使えるのでかなりの集光効果が期待できる。

こうした有意義な質疑応答が続いた後、時間を大幅に超過しながらSETI Japan講演会は拍手のうち に幕を閉じたのでした。なおNASAのSETI予算がカットされたため募金を受け付けているそうです。連絡先は

SETI Japan
 代表者 ペイジー・バーソロミュー
 電話/FAX 045-641-9466

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