これが、今回の恒星だぁ |
今回のCONTCT Japan 1では、太陽系から近い恒星を回る惑星上に異星人とその文明を構築する、という話はこの前に述べた。
実際、どの星にするかは、初日に巨大なサイコロを振って決める、という事になっている。そこで今回は、このサイコロの6面に書かれる6つの星について、より詳しい情報を書いておこうと思う。 |
(0)太陽 |
スペクトル型 |
G2V |
地球からの距離 |
0光年 |
絶対実視等級 |
4.79 |
見かけの等級 |
−26.8 |
質量(太陽比) |
1.00000 |
直径(太陽比) |
1.00000 |
地球と同じエネルギーを受ける惑星の軌道半径 |
1.00000天文単位 |
同じく、その公転周期 |
1.00000年 |
その惑星から見た恒星の大きさ(太陽比) |
1.00000倍 |
参考までに、太陽のデータを上げてみた。太陽というのは決して際だって目立つ星ではない。後にあげる(1)〜(6)の星は太陽に近い、という基準で選んでいるのだが、天文ファンな人をのぞけば、聞いた事のない星ばかりであろう。
これはつまり、星空を見て見える星(ヴェガだのアルタイルだのアンタレスだの)というのはたいてい、太陽よりも明るい星である、という事を示しているのである。 |
|
(1)バーナード星 |
スペクトル型 |
M5V |
地球からの距離 |
5.91光年 |
絶対実視等級 |
13.23 |
見かけの等級 |
9.54 |
質量(太陽比) |
0.17467 |
直径(太陽比) |
0.24251 |
地球と同じエネルギーを受ける惑星の軌道半径 |
0.07812天文単位 |
同じく、その公転周期 |
0.05224年 |
その惑星から見た恒星の大きさ(太陽比) |
3.10433倍 |
バーナード星は地球から見て9.5等星なので、近いのにかかわらず、肉眼では見えない。望遠鏡を使えば、へびつかい座のあたりに見える。この星が有名なのは、非常に速い速度(天球上を動く速度では一番)で運動している為である。
しかし、木星型の巨大惑星が存在する証拠とみられるものがある。恒星の位置の微妙な揺れを調べた結果、回りを惑星が回っていると解釈できるデータが出たのである。こんな感じである。 このどちらかのパターン、たぶん上の図のパターンの木星型巨大惑星がある、と思われている。となれば当然、地球型惑星がある可能性は高い。
恒星自体は暗いのに、候補の中に入れてあるのはこういう理由である。
バーナード星は暗いので、その分、惑星は恒星の近くを回らなくてはならない。その為、もともと小さい恒星にもかかわらず、惑星から見たバーナード星の見かけの大きさは地球から見た太陽の3.1倍。可視光域のエネルギーは太陽より小さいので、地球人が行くと、太陽より暗く感じる。赤い光がその大きな球(見かけの面積なら9.6倍)の中にあるので、星自体はさらに暗く見えるだろう。
近いだけにSFにもよく登場し、ジャック・ウイリアムスンの『宇宙軍団』では、この星から宇宙人が攻めてくる。 |
|
(2)ラランド21185(GC15183) |
スペクトル型 |
M2V |
地球からの距離 |
8.22光年 |
絶対実視等級 |
10.48 |
見かけの等級 |
7.49 |
質量(太陽比) |
0.34680 |
直径(太陽比) |
0.45647 |
地球と同じエネルギーを受ける惑星の軌道半径 |
0.14629天文単位 |
同じく、その公転周期 |
0.09501年 |
その惑星から見た恒星の大きさ(太陽比) |
3.12031倍 |
地球から見ると、おおぐま座としし座の中間くらいからやや北側に見える。
公転周期8年ほどの、木星の10倍程度の質量の惑星が存在するかもしれない、という観測がある。その点では有望。地球から見るとおおぐま座付近だが、7.49等なので,肉眼では見えない。
地球と同じだけのエネルギーを得ようとすると、随分近くを回らなくてはならない点はバーナード星と同じだが、少しだけましといったところ。
SFでは、ハル・クレメント『超惑星への使命』の舞台になっている。 |
|
(3)εエリダニ(ユリダヌス座ε星) |
スペクトル型 |
K2V |
地球からの距離 |
10.8光年 |
絶対実視等級 |
6.13 |
見かけの等級 |
3.73 |
質量(太陽比) |
0.81409 |
直径(太陽比) |
0.88600 |
地球と同じエネルギーを受ける惑星の軌道半径 |
0.59227天文単位 |
同じく、その公転周期 |
0.50518年 |
その惑星から見た恒星の大きさ(太陽比) |
1.49594倍 |
オズマ計画の目標の一つになった事で有名。つまり、知的生命体のいる星として有望なのである。絶対等級は6.1であり、太陽の4.8に比べると少し暗い。観測によれば、木星の6倍ほどの質量の惑星が存在する可能性が高いという。ということは、当然他に地球型の惑星を期待したいところである。
地球と同じエネルギーを受ける惑星からみると、太陽の約1.5倍の大きさのオレンジがかった色の恒星が見えるだろう。 |
|
(4) εインディ(インディアン座ε星) |
スペクトル型 |
K4V |
地球からの距離 |
11.2光年 |
絶対実視等級 |
7.01 |
見かけの等級 |
4.69 |
質量(太陽比) |
0.70088 |
直径(太陽比) |
0.80103 |
地球と同じエネルギーを受ける惑星の軌道半径 |
0.42877天文単位 |
同じく、その公転周期 |
0.33537年 |
その惑星から見た恒星の大きさ(太陽比) |
1.86820倍 |
太陽に似た星なので、これも有望と言える。ニフティサーブの通信上でのFCSでは、この星が舞台となった。太陽に近いものの、少し暗い。色はオレンジっぼい。
ラリイ・ニープン『プロテクター』の舞台である。 |
|
(5) τケチ(くじら座τ星) |
スペクトル型 |
G8V |
地球からの距離 |
11.8光年 |
絶対実視等級 |
5.71 |
見かけの等級 |
3.50 |
質量(太陽比) |
0.87082 |
直径(太陽比) |
0.92415 |
地球と同じエネルギーを受ける惑星の軌道半径 |
0.69598天文単位 |
同じく、その公転周期 |
0.62219年 |
その惑星から見た恒星の大きさ(太陽比) |
1.32783倍 |
これもオズマ計画の目標になった星。スペクトルはG8と、このリストの中では最も太陽に近い。実際に惑星から見た時も、太陽とそう違わないように見えるに違いない。
残念な事には、二重星かもしれない、という説がある。暗くて小さい伴星が近くを回っているらしいのである。この伴星がどのあたりにあるかはよくわかっていないようだが、あるとすると惑星に及ぼす影響は大きいと考えられる。場合によっては、生命の存在は難しいかもしれない。
くじら座は南半球側にあり、残念ながら日本からは見えない。見えたとしても3.5等星なので、決して明るくは見えないが。ちなみに、この星から太陽を見れば2.58等星。
SFでは、ラリイ・ニーブンの『地球からの贈り物』の舞台。 |
|
(6)グルームブリッジ1618 |
スペクトル型 |
K7V |
地球からの距離 |
14.7光年 |
絶対実視等級 |
8.32 |
見かけの等級 |
6.59 |
質量(太陽比) |
0.54891 |
直径(太陽比) |
0.66813 |
地球と同じエネルギーを受ける惑星の軌道半径 |
0.27528天文単位 |
同じく、その公転周期 |
0.19493年 |
その惑星から見た恒星の大きさ(太陽比) |
2.42709倍 |
オレンジ色の太陽である。エネルギーは少し低いものの、生命の存在する惑星の可能性は有望。おおぐま座付近
に見える。
SFでは、ジョー・ホールドマン『マインドブリッジ』の舞台である。 |
|
さて、現在スタッフはこの6つの星の名前の書いたサイコロを準備中である。果たしてどんな目が出るか、そして、その星系にどんな宇宙人が誕生するのか。
楽しみである。
当日は参加者みんなで『何が出るかな 何が出るかな』と合唱してほしい。
◆参考文献
『理科年表』東京天文台(1987年版)
『光世紀の世界』石原藤夫(早川書房)
『銀河旅行』石原藤夫(講談社ブルーバックス)
を参考にさせていただきました。特に『光世紀の世界』には非常にお世話になっています。ここに感謝の意を表明させていただきます。 |
Proceedings
of CONTACT Japan 1 Vol.2 に戻る |