CONTACT Japan

Proceedings of CONTACT Japan 1 Vol.2
「CONTACT XI」レポート1  大迫公成

 CONTACTの企画は、アメリカで10数年前にペイトソン教授が提唱して始まったもので毎年大会を開き今年1994年で第11回目。ワシントンDCに本部があり日本側は私が代表になっている。どんな企画かというと参加者を地球人と異星人のふたつのグループにわけて近い将来ファースト・コンタクトが行われるという前提で異星と近未来の地球のふたつの世界を構築する。異星人倒は何もないところから惑星系をつくり惑星を設定し生命の発生から進化樹まで創らなければならないし、地球人側は未来史を作っていく作業を要求されることになる。また可能な近未来技術を用いて恒星間空間を飛べる宇宙船も建造しなければならないから決めるべき事項は山ほどあって退屈なんかしている暇はない。また観衆に徹しようとしても不可能で、それは全員が専門分科会に属することになるからなのだ。言い換えればあなたの専門や得意の分野の知識を存分に使える場所がこの企画でファースト・コンタクト・シミュレーションという。
 今年の企画で一番面白かったのは、異世界構築の「COTI Mundi」 (コティムンデイ)だろう。2年前からスタートしていてある惑星に高等知性体が進化して宇宙航行技術を持つに到る迄を段階的に作っていく。詳しい英文報告書が作られているから英語に自信のあるかたは読んでみられるといいけれど実に詳しく設定が行われている。恒星は「82エリダニ」という地球から20.9光年の星でその第3惑星「ムンディ」がエイリアンの生まれる母惑星になる。もちろんこの惑星は仮定にすぎない。しかし既 に生命の代謝系や進化系統樹などから小動物に植物も各種作られている。今大会では空を飛ぶ生物が作り出された。解剖学的な設定から繁殖の方法までをチームで考えだしスケッチとプラスチック粘土のモデルも作った。将来は地球人と交信または遭遇する知的生命体へと進化するのかまたはもっと別の生物が宇宙航行技術までに到るのかそれは今後のお楽しみだ。その他の主な企画としては以下のようなものがあった。もっとも時差ボケのためになんとしても眠く、ふとみると一緒に参加している中村孝氏も寝ている。「もうあかん」とふたりとも部屋へ引き上げて寝たこともあった。とにかく英語と眠気との闘いだった。
 今回はシンポジウムが充実していて科学者、作家、そしてアーチストが研究を発表して出席者と討議をするのだが今回は3日間で7つもあり質疑応答も活発だった。私はほとんどこのシンポジウムのホールにいたが、これは同じ所でCOTIムンディなどの発表があり、このホールに居ると便利だったせいもある。またワークショップも開かれていてコンピューターを使いアーチストと科学者それに参加 者が脇力して未来の太陽系をシミュレーションで出してみようという企画だ。この部屋へ行く時間は残念ながらとれなかった。
 著名なひとがかなり参加していた。コンフランシスコで会い顔を知っているSFファンも大勢来ていた。海外はイギリスからも来ていた。SF作家のポール・アンダースン氏やルディ・ラッカー氏が企画のパネルや分科会に加わっている。「日本に行ったときは楽しかったよ」とラッカー氏は言っていた。OMNI誌編集長のキース・ファレル氏に紹介してもらったのも収穫だった。かのエレン・ダトロー女史のボスだということで、彼女によろしくと頼む。「彼女のボスになりたいかい? それはまあ大変な仕事だよ。」と冗談を言っていた。彼は秋にCONTACT Japan 1の大会に来るといっていた。その他アーチストでは,ベス・エイヴリー女史、ジョエル・ヘーゲン氏 (ゼノパレオントロジスト:異星古生物学者としてサイファイチャンネルTVにも出たしOMNI誌でも特集があった)が出席。そしてイルカの研究で有名なジョン・リリー博士も参加していた(結構お年でした)。科学者ではNASAエームズ研究所のひとたちがかなり参加していたのは印象的だった。各企画の講演題目と講演者そしてパネリストの内容についてはプログラムを転載してあるので参照されたい。印象に残ったものをピックアップしてみる。
大会前日 3月17日(木)
 サンフランシスコ空港から1 8人乗りのプロペラ樺で眼 下の景色を楽しみながら約1 5分でサンノゼ国際空港到 着。ホテルへ電話しシャトルバスを頼む。チェックインし たあと中村氏とロビーでうろうろしているとCONTAC T委員長のフナロ氏と出会う。小柄な新妻と一緒だ。すぐ にポールアンダーソン夫妻も到着。親友のグレッグも現れ るうちに知った湊が揃って雰囲気が盛り上がってきた。イ ルカ学者のりリー博士も紹介される。ホテルは清酒なロ ビーが落ち着いていい感じのたたずまいで外観からは ちょっとわからない。
1日目  3月18日(金)
 昨年と同じくおかわりOKのフレッシュ・オレンジジュースはやはり感激ものだ。ここはカリフォルニアなんだなあと認識してしまう。
 朝からシンポジウムがあり殆どメインのホールにいすわる予感がする。合間にCOTIなどの企画部屋をのぞいてみようと思ったが甘かった。「シンポジウム1」 (ひとであるということは何を意味しているのか?)、「シンポジウム2」 (太陽系外知的生命体探査)さらに「シンポジウム3」(ヴァーチャ・ルリアリティ)と続き同時にワークショップがある。「1」ではフナロ氏の人間と動物そしてエイリアンと機械それぞれを定義するものは何かという話が面白かった。ルディ・ラッカー氏もパネルにならんでいて活発に発言していた。 「VR(ヴァーチャル・リアリティ)」の報告では、南極で火星調査のシミュレーションを行ったNASAエームズ研究所のキャロル・ストーカー博士の報告が興味深かった。VRを使い遠隔操作で調査ロボットを動かして実験をやったそうで、多分日本の某雑誌「テラフォーミング」特集に紹介されたクリスマッケイ博士と同行したのだろうと思う。その後異星古生物学者ジョエル・ヘーゲン氏のCGを使った火星のVR用モデル画像作成の手順発表も実に興味があった。彼は発足当初からエイリアンなどのアートを引き受けている人だ。10月の日本大会にも非常に感心を抱いている。
2日日 3月19日(土)
 朝一番に私の出番である。つまり日本でのCONTACTの活躍と今年10月の日本大会「CONTACT Japan 1」開催の報告をすることになっていたのだ。金沢での日本SF大会「i-CON」のFCSのビデオも流した。中村氏の助けもあって心強かった。次に同じホールで「COTI Mundi」の報告があった。前述のイギ リスのフォッグ氏だ。(この人も日本の雑誌のテラフォーミング特集にインタビュー記事が載っている。他の論文も私の手元にある。)「セラトライドン」という3脚の生物(3本足の水上生物から進化した。この惑星の動物は基本的に3本脚のようだ)に続いて、空を飛ぶ生物が創造されている。3日間にしてはモデルを作ったり解剖学的な構想も練って大したものだ。その後は「シンポジウム4」(コンタクトそれは我々にとって何なのか? またなんの為に我々はそれに参加しているのか?)、「シンポジウム5」(インターテレストリアルとエクストラテレストリアル)そして「シンポジウム6」(Solsys:太陽系シミュレーション)があったがまだ突発的に眠くなる。夜は夕食会(25ドルの切符を買うバンケットと呼ばれるもの)がありポール・アンダースン氏が講演をしてスタンディングアプローズを受けた。まあ部屋へ戻ってからもパソコン通信をするものだから時差ボケがなおらないのも無理はないのだが。
3日日 3月20日(日)
 最終日だ。朝はCOTI Mundiの報告があり今回のまとめである。特に空を飛ぶ生物の生殖と幼体について19日に決めたことを発表した。生物の解剖学的な構造も決めて説得力があるし粘土のモデルとスケッチもあったので表現力は抜群である。授精のメカニズムから出産(?)のシステムや幼体を地上に降ろす方法など討論の未の結論が披露された。この企画が今回最も面白く私たちもチームの部屋へいった甲斐があったというものである。そのあと「シンポジウム7」(前を見つめて)があり、OMNI編集長のキース・ファレル氏などが話をした。
 最終日の夜はポール・アンダースン夫妻、そして事務局のグレッグとエリン、私たち日本人二人の計6人でベトナム料理を食べに行った。サンノゼ市の一部にはベトナム人たちがベトナムタウンを作っているのである。席上、源氏物語や恐竜、猫の話など話題が飛び交ったのもSFワールドならではだった。食事といえば昼メシなどはレストランへ行く必要がなかった。つまり総勢100人くらいのこの規模でもホスピタリティ・ルーム(=コンスイート)がありスナック、お菓子、果物、ビールにソーダ類はタダであり実に助かったのだ。それからホテルと言えば通常一泊200ドルのホテルが80ドルをきりしかも朝食付なんて信じられない。コンベンション・レートといってアメリカのホテルは協力しちゃう。今回のCONTACTは非常にSF的な感覚が昨年に比べると強くそれだけ楽しかった。なにかサイエンスの大会なのにSFのローカルコンベンションに来ているような気がしてならなかった。

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