CONTACT Japan

Proceedings of CONTACT Japan 1 Vol.1
アメリカにおけるCONTACT

 今年の10月にわが国で初めてファースト・コンタクト・シミュレーションの大会「CONTACT Japan 1」が開催されることになり私自身非常に嬉しく思っています。このCONTACTがどのような精神と主旨の企画であるかは,おおきく分けてふたつの柱があります。ひとつは異文化間に橋をかけるということと,ふたつ目は想像の文化と呼ばれるものです。参加者各個人の自由自在な創造力と想像力を存分に発揮して異星人と地球人のファースト・コンタクトをシミュレートする企画ですが、重要なその目標は異なる文化をもつ知性体どうしの理解を実現することです。ですから異星人どうしのファースト・ コンタクトでもいいし、日本人とアメリカ人のファースト・コンタクトだって考えればあり得るといえます。科学的な想像力を駆使して有り得る世界を創っていく努力はスリリングな興奮を貴方に与えてくれるでしょう。私はこの大会の成功を確信していますしスタッフの皆さんと協力者の方たちそれに参加される みなさんに心から感謝を送りたいと思います.アメリカの友人達からも多くのはげましが寄せられていることもお伝えしておきます。
 アメリカという所はある意味では変な場所です。つまり非常に伝統と名誉を尊ぶ反面,新しい事物を採用して過去を改革するのに全く躊躇しない。例えばMIT (マサチューセッツ工科大学)で学生の創造力を刺激するために過去に例のないロボットコンテストを実施したり, NASA (アメリカ航空宇宙局)では次代の宇宙飛行士や技術者育成の意欲を子供達にも植え付けるために「スペースキャンプ」を積極的に運営したりしています。また最新の技術の開発にも公私ともに意欲が強く, VR (ヴアーチャルリアリティ)をいちはやく産業や娯楽面でとりいれているのもアメリカです。フロリダの遊園地にいけば仮想現実感を遊園地で楽しむことができるのはよくご存じでしょう。巨大なロボットに乗って闘う「バトルテック」ゲームなど日本は常に輸入する立場に立つ事が多いのは残念です。一方ニューヨーク郊外のニュージャージー州にはワシントン大統領がたちよったという館があって博物館として保存され見学者が絶えなかったりします。各地に植民した先祖の遺産を守っているのも事実です。例えばインデイ500の開かれるインディアナポリスの街で地場ビールを注文すると,ドイツ名前のビンビールが出て来ます。つまりドイツからの移民が多かったのでこういう遺産が残されたわけです。
  CONTACTの企画は、アメリカで10数年前にペイトソン教授が提唱して姶まったもので毎年大会 を開き今年1994年で第11回目となりました。アメリカのFCS (ファースト・コンタクト・シミュレーション)の最大の特長は日本での経験と比べると娯楽的要素を押え科学および教育プロジェクトとして実施していることでしょう。日本のSF大会で実施したときは,舞台の演技をみる観客の様にパフォー マンスとしての面白さを主催者側に要求するひとが多かったり, RPG (ロールプレイゲーム)のような役割を演じることだと思ったりしたひとが結構みられたからです。今回アメリカの第11回大会に参加して、より強く印象的だったのは学会に近い形式で運営され3日間に7つもシンポジウムがあったり, NASAエームズ研究所のスタッフが何人も参加して分科会とパネルの双方で活発に研究発表をしていたことでした。演技を楽しむのなら映画を見ればいいのですから、 CONTACTではあなた自身が専門テーマの分科会に参加して世界構築に加わることになりその過程が一番楽しめるというわけです。
 もっとも初期の大会で撮影されたアメリカのビデオを見ると,やはりコンタクトをどうしても大会の最後に行いたいという暗黙の合意があったようで、最後に異星人と地球人がファースト・コンタクトをやっています。ある惑星に知的生命の兆しが発見されたという設定でこの辺は少し無理があるように感じました。しかし数年前に異星古生物学者でありアーチストのJOEL HAGEN氏が作ったエイリアンのスケルトンがデザインされていてこれが現在のCONTACTアメリカのロゴマークにもなっています。私が見たビデオのエイリアンは、身長が3メーターぐらいあり音波で交信はするのですが、身体の構造から大きな声をしているとか,体臭が強く地球人にとっては拷問なくらいの匂いでへきえきするシーンなどはずいぶん観衆(遭遇チーム以外の参加者)を沸かせていました。ただ日本でもそうだったのですが,回を重ねていると世界構築には細かい設定がかなり必要で事象を具体的に決めて行くには3日をかけても無理だということが判ってきました。それでアメリカのCONTACTではメーンのCOTI (コティ=想像の文化)企画一本やりだったのを拡充して異世界の設定を段階的に細かく何年にもわたって決めていき報告書を何度も発行するというCOTIムンディなる企画を導入して成功しています。今回の日本大会CJ1では最終日にファースト・コンタクトを目指します。
 ここで今年のアメリカの大会の内容を簡単にご紹介することで,アメリカいや日本以外でのFCS企画がどの様に進行しているのかを参考にしてもらえれば幸いです。大会のない間は、かなりの情報がパソコン通信で処理されているのも特筆してよいでしょう。

 
1994年第11回大会 CONTACT XI(コンタクトイレブン)の主題
(シンポジウム)
 科学者、作家、アーチストが専門の研究を発表して参加者と討議をする。 NASAの科学者やSF作家 などの参加があり非常に面白かった。
(ペイトソン・プロジェクト)
 地球または宇宙における未来についてベテラン学者がセミナーまたはパネルを行う。これはシンポジウムの企画にとりこまれた形であった。
(COTl =想像の文化)
 コティはある世界を創る実験である。参加者はある世界、異星人の形態、文化を創り出し将来の人類社会とコンタクトするのをシミュレートする。今年は、宇宙人の来訪があるとしたらどうなるかという設定であった。昨年まではSETI計画のシミュレーションをしてアルファケンタウリからの信号を解読して言語まで話せるようになったいた。
(COTl Mundi)
「コティムンディ」と発音するが、ある惑星を想定して生命の生態系から文化や技術を決めていく本来のCONTACTの概念に近い企画である。今年は既に2年目に入っていて母惑星は「82エリダニ」恒星系の第3惑星である。ムンディというのは惑星の名前だ。この恒星はG5タイプの星で地球からは20.9光年の距離にある。今回はこの企画が一番面白かった。パソコン通信の利用頻度が一番多いもの。
(ワークショップ)
 今年はコンピューターを使いアーチストと科学者それに参加者が未来の太陽系をシミュレーションで作るもの。

 この企画を日本へ紹介したものとして成功を確信しています。みんなで楽しみましょう。アメリカ本部や海外のメンバーとの交流が盛んになることも祈るや切なるものがあります。現実に今年夏にカナダのウイニペグである世界SF大会でもCONTACTの企画がある可能性もあり日本大会開催を契機にして同時に海外との連携も考えていく必要がありそうです。アメリカのCONTACTを支えている人たちにも SF作家のポール・アンダーソン夫妻、ラリィ・ニープン氏、デイビッド・ブリン氏、ベン・ボーバ氏、 ルディ・ラッカー氏などの顔が見られるし、アーチストではベス・エイブリィ氏、ジョエル・ヘーゲン氏、 学者たちはNASAエームズ研究所貞たち、イルカの研究で有名なジョンリリー博士なども強力なバックアップをしています。 OMNI誌の編集長キース・ファレル氏も参加しているほどです。もちろん教育への可能性も大きいので教師の参加も沢山あります。ぜひ将来は日本も各分野のプロや専門家の協力も仰げるようになれば素晴らしいと思います。

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